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プロローグ

「セギオラだ!」

 叫び声がした。ここは街から少し離れた鉱物資源の採掘場。数人の作業員が採掘作業に従事していた。

 重機に寄りかかって飲み物を飲んでいた作業員は、視界の隅に動く何かを見つけた。そちらに視線を向けて動いている黒い物体を認識して叫び声を上げる。

 それはセギオラだった。この星の最強生物と言われる肉食動物だ。体長は大きな個体で二メートル程度。四足歩行で強靭な肉体と鋭い爪を持つ。性格は凶暴で知能は高い。それだけでも厄介な存在だが、電場と磁場を操る能力を有していた。

 最初に発見した作業員は慌てて重機に飛び乗った。飲み物をこぼした事はまったく気にしなかった。重機に扉はないが、外にいるよりは良いと考えた。

 セギオラが重機に迫る。作業員は重機を回転させて、前方のアームをセギオラへぶつけようとした。

 素早く身を躱し、セギオラは運転席に飛び込む。作業員は反対側から外に飛び出したが、そこにセギオラが襲いかかる。

 作業員の頭を押しつぶし、セギオラはその体に喰らいついた。

 セギオラは獲物の肉しか食べない。よほど食料が不足していない限り、内臓まで食べることはなかった。だからセギオラにとって、人間は食事として満足できるものではなかった。

 セギオラが食事している間に、他の作業員たちは逃げるための車両を探して逃げ惑っていた。

 重機で逃げても追いつかれる。速度が出る車両が必要だ。しかし、ここにあるのは重機や輸送車両しかない。逃げるとすれば輸送車両だが、今は一台しかなかった。

 輸送車両に一番近かった作業員が運転席に乗り込み、他の作業員が乗り込むのを待たずに走り出す。何人かの作業員が追いかけたが、乗り込むことはできなかった。かろうじて一人だけが車体にしがみつく。

 その様子を横目で見ていたセギオラは、車両を追いかけていた作業員たちに、それぞれ一撃で致命傷を与えてから、走り去った輸送車両の電気回路を破壊した。

 輸送車両は動力と制御を失い、しばらく惰性で走行したが徐々に停止した。停止したことで車体にしがみついていた作業員は車内に入った。外にいるよりは安全だろうと考えたのだ。運転していた作業員も、もう動かせないことを悟り、車内に籠城する決意をした。輸送車両なので車体は頑丈にできている。

 セギオラは輸送車両に近づくと、鋭い爪が生えた前肢で何度も扉を殴る。殴られるたびに扉はひしゃげていく。

 とうとう、扉は意味をなさないものとなった。

 セギオラは上体を車内に突っ込んで、一人目を車外へ引っ張り出した。一撃で動かなくして喰らう。二人目も同じように。

 セギオラは採掘場に戻ると、先ほど致命傷を与えた作業員たちに近づく。

 ふと何かに気づいて採掘所の奥の方を見る。

 人間の神経を流れる電気信号を捕捉したのだ。身動きできる人間が他にもいるということだ。場所も把握できている。隠れているつもりなのだと理解した。

 その時、背後の空から二機の航空機が近づいてくることにも気づいた。隠れている作業員が救援信号を発したのだ。

 救援信号は簡易なものだった。そのために具体的な情報が伝わっていない。輸送車両で逃げ出したのが通信担当者だったため、通信で詳細な情報を伝えることができなかった。そのため、出動した航空機はセギオラの存在を知らなかった。

「おい、あれはセギオラじゃないか?」

「聞いてないぞ。すぐに離れろ!」

 航空機の乗員がセギオラを認識した時には遅かった。セギオラはおよそ八キロメートル以内の範囲で電場や磁場を操れる。二機の航空機は接近しすぎていた。

 セギオラの能力でエンジンは停止し、航空機の制御は不可能となった。これでは滑空もできない。

 二機の航空機は程なくして墜落した。セギオラは墜落地点に近づきもせずに、生存者がいないことを把握した。

 セギオラは採掘場の生き残りに向かって歩を進める。五名いるようだ。建物の中にいる。ドアではなく窓に向かうと、体当たりでガラスを破って中へ入った。

 掘削作業のための簡易な建物だ。逃げる場所などない。中にいた作業員はあたふたしながらドアに殺到した。車両はまだ残っているのでそれで逃げるつもりだ。

 建物にはドアが一つしかなかったためそこへ全員が殺到する。一番後ろの作業員が襲われた。その隙に前の四人は外に出ることに成功した。

 しかし、まだ安心はできない。車両までは距離がある。

 四人は懸命に走った。後ろは振り向かない。追ってくるのは間違いないので逃げるだけだ。一瞬の隙が命取りになる。

 一番足の速いものが運転席に乗り込みエンジンをかける。他の者など気にしてはいられない。一人だけ乗った状態で車両は走り出した。重機なので速度は期待できない。

 残りの三人は別の車両に向かう。

 セギオラは建物から出ると状況を把握し、全ての車両の電気系統を破壊した。走り出した一台は敢えて見逃した。

 残されていた三人は、一人と二人に分かれて二台に乗車していたが、エンジンがかからないことに気づく。

 セギオラは走り出した一台を追いかけてゆく。見逃したのは狩りを楽しむためだ。そして、三人を後回しにしたのも同じ理由だった。

 車両を諦めた三人は、採掘場の外へ隠れる場所を探して走り出した。三人ともセギオラに詳しくないので隠れても無駄だということを知らない。

 程なくして、セギオラは走っている車両に追いつき、正面にまわり込んでフロントガラスに飛びかかる。

 前肢でガラスを打ち砕くのと、運転手が外へ逃げ出すのはほぼ同時だった。外に出ることは成功したが、走っている車両から飛び出した運転手は地面に叩きつけられた。

 運転手は急いで立ちあがろうとしたがセギオラが襲いかかる。運転手に喰らいつきながら、セギオラは次の獲物の気配を探った。三人はそれぞれ別の方向に逃げているようだった。

 セギオラは一番遠い者を次の獲物に決めると走り出した。簡単に追いつき、屠る。

 あと二人。

 次も遠い方を選ぶ。

 そして最後の一人。

 すべてが終わるとセギオラは墜落した航空機の方に向かった。獲物を求めたわけではない。新しい知識を得るために。しかし、それは徒労に終わった。そこはすべてが燃え尽きていた。遊びすぎたのだ。

 それでも、セギオラは満足げに咆哮をあげると、遠くに見える街を眺めた。あそこに行けば食事には困らない。しかし、セギオラを排除する仕掛けがあるため、近づくことができないことを理解している。

 セギオラはゆっくりとその場から立ち去っていった。

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