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第10話 神殿騎士団②

 もはや疑う余地はない。

 どう考えても軍法会議だ。

 静九郎には面白くない。


(何が聴聞だ……)


 これほど殺気に満ちた軍事法廷でよくも言ったものだ。

 にらみつけるその視線を意に介することなく、アドラーは穏やかに言った。


「こちら、栄えある東部騎士団総長にして枢機卿であらせられるリヒテンヴァルト公爵閣下、それと当騎士団の特別軍事顧問を務めていただいているライオンハートさん。Sランク冒険者で〈ライオンハーツ〉のギルドマスターでっ……て、クルルさんには説明はいらないかな」


 ハハハと快活に笑い、相変わらず悪い空気を一向に気にせず、アドラーのよく回る舌が回転を続ける。


「ではでは紹介も済んだところで、昨日ウルズシャールであったこと……何故〈ワイルドキャッツ〉はあそこにいたのか、何が起こったのか、などなど全て、包み隠さず話していただけますか?」

「はい。私からご説明します」


 そう進み出たクルルもさるものだ。

 事ここに至ったからには小細工など必要ない。

 ウルズシャール洞窟で通常任務についていたこと、中でスタンピードが起こったこと、他のパーティーを救出したこと、そして出口でドラゴンと遭遇したが静九郎が討伐したこと――。

 すべて事実であり、隠すことなどない。

 静九郎が言ったように、堂々としていればいいのだ。


「――――以上です。ドラゴンの討伐については協会規則で定められた安全規制には一部反した面がありましたが、負傷者を抱えていた我々には他に選択肢がありませんでした。どうか、寛大なご理解をいただければと思います」

「クルルさん、ありがとう。方々、何か質問はありますか?」


 説明が終わっても相変わらず空気は重い。

 数瞬の沈黙を破り、最初に口を開いたのは巨体の神殿騎士団総長だった。


「度し難いな。平民の言葉を聞くのは久しぶりだが、かように平然と偽りを並び立てるものだったとは。度し難い浅ましさだ」

「えと、失礼ですが、嘘なんて一つもついていません。ありのままの事実を」


 クルルの反駁をさえぎった巨漢は、軍事顧問に顔を向ける。


「ライオンハート。くだんのレッドテイルドラゴンなる魔物は、我が精鋭騎士団と〈ライオンハーツ〉の共同作戦によってたしかに討伐寸前だった。そうだったな?」

「はい」

(は……?)

「息も絶え絶えのドラゴンは最後の力を振り絞ってあの洞窟に逃げた。それを、しゃしゃり出てきた卑劣な冒険者によって横取りされた。相違ないな?」

「はい」


 『はい』しか言わない歴戦の猛者。

 べつに権威におもねっているわけではない。それ以外に特にコメントがないのだ。


「これが唯一にして無二の真実だ。つまりその平民……あー、冒険者クルルの発言は全て偽りであり、作戦妨害の悪質性と偽証の罪は極めて重大である」


 いきなり犯罪者にしたて上げられたクルルは、それでも、反駁を試みようとした。


「ちょっと待ってください! 先程も申し上げたとおり、ドラゴンは多少の傷を負っていたとはいえ、討伐寸前と呼べるような状態では……!」

「平民の頭では己の矛盾が理解できないか。よい、教えてやろう」


 暴君は心底愉快そうに言った。


「かのドラゴンが死にかけでなかったならば、何故に、そこの野蛮人風情が一人で討伐などできたのか」

「いや、ですから彼は……」

「ありえん。ありえないのだ。そんなことは。ここにいるライオンハートならまだしも、一介の冒険者などにはな」


 ここで静九郎が挙手をして起立する。


「総長殿の頭では理解できないようなのでもう一度説明してやろう。ドラゴンを斃したのは野蛮人一人ではない。我々二人でやった。誤解なきよう」

「ちょっ、やめなさいっ」


 それだけ言って着席する静九郎。

 失礼すぎる。

 制止したクルルの心は穏やかではない。


「言葉を話すとは驚いたぞ、野蛮人。泣いて詫びるなら、ジャングルに帰してやるぞ」


 侮蔑に満ちたリヒテンヴァルトの言葉に、静九郎は再び挙手をして立ち上がった。


「ドラゴンを蹴り殺すのはジャングルでは日常茶飯事だ。それがそんなに珍しいなら、泣いて嘆くべきはこの国の軍事力だな」

「やめっ……!」


 その時だった。

 静九郎の首筋からパッと血が舞った。


「!?」


 致命傷ではない。

 静九郎が間一髪で斬撃を避けるのと、ヴィクター・ライオンハートがいつの間にか抜いていた細剣を鞘に納めた音がキンッと響いたのは、ほぼ同時だった。

 刹那の早業、否、神業である。

 一瞬遅れて――、


「あっ……!? ああああアァァァ!!!」


 激昂したクルルの体を魔力の奔流が駆け巡る。

 刻み込まれた戦士の脊髄反射が、仲間を傷つけた敵に反撃に出ようとしたのだ。

 だが、それを抑えたのも静九郎だった。


「よせ。ただの警告だ」


 相棒を万力の力で抱え込みながら上段を睨みつける。


(斬られたのは皮一枚。傷はもう塞がっている。だが……)


 自分の回避も計算にいれた上でのジャブなのだろうが、許されるものではない。

 一歩、いや数ミリ間違えれば首が落ちていた。

 しかし、彼が抗議の声を上げる前に、アルダー・シュテルンベルクから鋭い発言が浴びせられた。


「この辺で一度、論点を整理しよう。ジョー」


 いつもの軽佻浮薄な態度はどこへやら、初めて聞く低く冷たい声には上級騎士の威厳があった。


「誰がドラゴンをやったかはこの際どうでもいい。僕たちが知りたいのは、君が何者で、この国で何をしようとしているのか。それだけだ。正直に答えてくれれば悪いようにはしない」


 嫌な予感が完璧に的中したことがわかった。


(最初から狙いは俺か……)


 連中がどう取り繕うと、これは軍事裁判だった。

 ショックから立ち直ったクルルが吠える。


「いい加減にしろ! こんなやり方は聴聞でも裁判でもない!! 冒険者協会を通じて抗議してやる!」


 さんざん人に大人しくしろと言っておきながら、仲間が傷つけられた途端に瞬間沸騰する。

 それがクルルという女だった。

 静九郎は憤激するその肩をつかむ。


「クルル。大丈夫だ」

「いやだ!! もう我慢できない!」

「ありがとう。大丈夫だ」


 その想いだけで十分だった。

 クルルをなだめて席に戻し、覚悟を決めた静九郎は、堂々たる態度で語り始めた。


「諸兄らにおかれては、数年前までヤシマが内戦をやっていたのはご存知だろう」

「知るか。ジャングルで起きた蛮族どもの争いなど」


 導入から裁判長に転ばされる。

 慌てた弁護人席からフォローが入る。


「ヤシマの十年戦争。国を二つに割った、総力戦だったそうだね」

「そうだ。俺は敗けた方にいた一兵卒だ」


 三者三様に、一瞬の間があった。


「ほーほう? なるほどな。負け犬が尻尾を巻いて逃げてきたというわけか」

「異議あり! 適切な表現ではありません!」


 暴れるクルルを押しとどめたジョーが首を振る。


「なんとでも言え。実際、それ以上でもそれ以下でもない」

「ハッ! 生き意地汚い敗残兵風情がずいぶんと威張るではないか。ヤシマには名誉のために自害するハラキリなる野蛮な文化があると聞くが、嘘のようだな」

「なんてこと言うんですか!?」


 クルルが飛び上がる。

 話が進まない。

 うんざりしたアルダー・シュテルンベルクが諫言する。


「総長。証言の一つ一つにご意見を頂戴していると夜のご予定に支障をきたします」

「だったら早く申せ、野蛮人」

「だから……!」

「クルルさんも。気持ちは汲みますが、それ以上は問題にします」


 クルルは閉口する。

 静九郎も、再び背筋を正す気力はなかった。

 くだらない時間を早く終わらせたかった。


「概ね、あんたが言ったとおりだ。戦に負け、居場所がなくなった俺は、大陸に逃げてきた。この国に来たのは大陸でもっとも豊かな国だと聞いたからで、戦うことしか能がない野蛮人が食いつなぐには冒険者になるしかなかった。以上。終わり」

「くだらん」


 さっさと席に戻った静九郎を一言で評する裁判長。


「実にくだらん。どうだ? ライオンハート。お前から見たこの男は」


 諮問を受け、それまで『はい』しか言わなかったミスタ・イエスマンは、ゆっくりと立ち上がった。


「はっきり申し上げます。この男は危険です。制御不能な猛獣……そう……致命的な秩序の破壊者と呼ぶべき存在です」

「はあ!?」


 大声を上げたクルルを鋭く睨みつけながら、英雄は言った。


「Sランク冒険者の威信をかけて断言します。この者は皇国の安寧を揺るがしかねない極めて危険な劇毒です。ただ存在することすら看過できない異物であり、即刻処刑ないし国外に追放すべきかと存じます」

「ふざけないで! あんた、いったい何言って……!」

「クルルさん!」

「ふざけているのはお前だ、小娘。外国人のギルド加入にあたっては、身元の確認、犯罪歴の照会が義務付けられているが、済ませているのか?」

「もっ、もちろん!」


 ウソだ。

 外国人冒険者は珍しくもないが、そんな面倒な手続きをやっているギルドは大手以外ない。どれだけの手間がかかると思っているのか。


「嘘をつくな。この男はヤシマの兵士だったと言ったが、今も尚そうでないと言いきれるのか? 破壊工作、暗殺、扇動。こいつがヤシマの潜入者でないと、なぜお前にわかる?」

「なにそれ。バカバカしいにもほどがある」

「ほう。加入して三日足らずのメンバーに対して、よくも断言できたものだな? 交友関係、移動、通信、金銭の授受……お前はこの男のすべてを知っているとでも?」

「それは……」


 クルルの言葉が詰まる。

 もちろん、彼女の脳裏に先ほど目撃した娼婦との密会がちらついたからだ。

 暗殺? 扇動? 破壊工作?

 ジョーに限ってそんなことはありえない。

 でもあれは何だったのだろうか。

 あの女がただの娼婦でなかったとしたら?

 固まったクルルを見かねたアドラーが助け舟を出す。


「ライオンハートさん……、現時点で追放や処刑というのは、極論にすぎるのではありませんか? 敗残兵であっても、人道上の配慮は必要です。少なくともヤシマと我が国には国防上の懸念点などありはしない」

「今は、そうですな、シュテルンベルク閣下。だが先のことはわからない。いずれにせよリスクを最小限に抑え、都市の秩序を維持管理するのが騎士団の……いえ、引いては我々冒険者の仕事です。少なくとも野放しにすることなど、絶対にあってはなりません」


 リヒテンヴァルトが我が意を得たりとばかりに膝を打った。


「そのとおりだ。我らが英雄ライオンハートよ。では、この異物を、君ならどうするのだ?」


 英雄は、重々しくうなずく。


「かような猛獣を処刑も追放もしないのであれば、牙を折り、従順になるまでしっかりと調教する必要があります。それができる唯一の機関、つまり当ギルドにて、この私ヴィクター・ライオンハートが、責任を持って身柄を預かるべきだと思います」

「よくぞ申した!」

「はあ!?」


 ここにきて、とんでもない提案。

 奇声を上げて飛び上がったクルルの横で、静九郎は冷静に手を挙げて発言した。


「あんたのとこには先日、門前払いを食らったばかりだが?」

「聞いている。担当者の判断は間違いだった。撤回して正式に加入を承認しよう」


 見え透いた露骨な勧誘だ。

 クルルは元上司に指差して抗議する。


「あんた! こいつが欲しいだけでしょうが!」

「フン、くだらん言いがかりだ」


 静九郎は挙手をする。

 発言する前には必ず挙手だ。

 あくまで冷静な男は、法廷での流儀をわきまえている。


「お断りしよう。俺はすでに〈ワイルドキャッツ〉の構成員だ。外国人の冒険者ギルド加入は許可されているし、犯罪歴もなければ軍籍もとっくにない。俺はギルドマスターの指示監督に完全に従っており、制御不能だの、猛獣だのと言われる所以は一切ない」


 クルルは瞑目してツッコミを耐えていた。

 昨日一日でいったい何度指示を無視され、命令を破られたのか。

 自分に従ってくれていれば、少なくともこんなことになっていなかったのではないか。

 そう思わずにはいられなかった。


「ダメだ。どう取り繕うと、貴様は到底管理できるものではない。ましてや小娘のお遊びギルドごときではな」


 ここまで自分のことをどう言われようと、首を斬り落とされそうになろうと我慢してきた静九郎が、初めてはっきりと怒気を含んだ口調で応じた。


「口の利き方に気をつけろ」


 ライオンハートがはじめて笑顔になる。


「なぜそこまでその小娘に拘る。新設のくだらん零細ギルド……その日の食事にも窮して雑草を食んでいると聞くが」


 はっとした静九郎がクルルを見る。

 クルルは慌てて首を振る。


「雑草じゃない!」

「た、たとえ雑草を食んででも世のため……」


 動揺した静九郎の声が上ずった。


「雑草じゃないってば!」

「私益ではなく世のため、人のために尽くしたい。そういう彼女の志に賛同したからだ。それ以外に理由があるか? それとも、小金がすべてのこの国では、そういう動機は珍しいのか?」


 失望もあらわに、ライオンハートは首を振る。


「バカバカしい。お前たちが大仰に掲げる『目標』は、冒険者として当然の『前提』だ。世のため? 人のため? そのような次元の低い話をしている時点で、お前たちの活動はお遊びだと言っているのだ。そこの小娘には散々そう言って聞かせたんだが、ついぞ理解はしなかったな」


 静九郎は肩をすかす。


「冒険者の大義について、あんたと議論する気はない。急いだらどうだ。夜の予定があるんだろ」

「いいだろう。どうしても小娘に拘るのであれば、ギルドごとうちの傘下に入ればいい。世のため人のために存分に働かせてやる。幸いにして勝手知ったる仲だ。チームとしての存続と、報酬も保証する。そうだな……お前には三千万。複数年なら五千万出そう」


 五千万ダーラ、つまり七十五億イエーン……。

 ライオンハートによる評価額のあまりの大きさに、リヒテンヴァルトとアドラーが驚いた。

 元メンバーのクルル――当時その一パーセントも貰っていなかった――も開いた口がふさがらない。

 どうだ? 断る理由があるまい?

 そんな驕りが透けて見えたので静九郎は言ってやった。


「断る。はした金に興味はない。こちらに利もないし、あんたらに指図を受ける謂われはもっとない」

「キサマッ!」


 業を煮やしたリヒテンヴァルトがキレた。


「まあまあまあ」


 アドラーが穏やかに笑みを浮かべて手を挙げる。


「議論は尽くされたようです。どうでしょう。ここはひとつ穏便に、協力関係を築くというのは」


 人を食ったような優男は、カツカツと小気味い足音を立てながら被告人席まで降りてきた。


「どうやら彼は言葉を解さない獣ではない。それどころか世のため人のためを思う節義の人であり、所属ギルドへの忠誠心も厚い、誇り高き戦士です。その気高い心意気のみならず、魔を恐れない勇猛な精神は我々神殿騎士団とも、そして筆頭ギルドたる〈ライオンハーツ〉とも、基本的に一致しているはず。ちがいますか?」

「ちがいません! そのとおりです! もう、ホントに、そのとーりです!」


 静九郎への問いに、食い気味に答えたのはクルルだ。


「ありがとう、クルルさん」


 次にアドラーはライオンハートに笑顔を向ける。


「彼女が彼にいくら支払っているのか知りませんが、彼の実力が既存の枠組みで評価できる水準をはるかに超えているのは明白。めったに起きないS級魔獣災害に対応するために、私設ギルドである〈ライオンハーツ〉が常時彼を雇用するというのも、コストがかさんで非効率きわまりないと思いませんか」

「フン」


 大型契約に失敗した伝説の経営者は、完全に事態への興味を失っている。つまらなそうに鼻を鳴らした。


「そこでです!」


 大げさに腕を広げた演説者は、声のトーンを一段階上げた。


「神殿騎士団は東都における彼の自由な冒険者活動を保証する代わりに、災害級の魔物が現れたときには必ず騎士団に協力してもらう。そういう契約を結びましょう」


 総長リヒテンヴァルトも、もはや興を削がれている。


「ン……まあ……それでもいいか」


 口が回りすぎる部下が何を言っているのか、考えるのも面倒な様子だ。


「そうしましょう、ね?」


 クルルも必死だ。

 ようやく見えた妥協点を前に、必死に相棒の背中をさする。

 しかし――


「お断りする」


 頑固一徹。

 頭が固すぎる外国人は、だが只一人、いけ好かない優男のドス黒い腹の内を見抜いていた。


「元より緊急時の対応に協力を惜しむつもりはない。だが、そんな首輪をつけられるのは気に入らない。何度でも言うが、俺は正規の冒険者ライセンスを持ち、クルルの監督に従っている。一切の行動に制限をつけられる謂われなどなく、そちら優位の不当な取引に従う義理もない。断じて受け容れられない」


 リヒテンヴァルトがキレた。


「調子に乗るな! イースタン風情が! ライオンハート! こいつを斬れ!」


 交渉に興味はないが、挑発的な物言いで権威を蔑ろにされるのだけは許せない大貴族である。

 しかし、その副官はちがった。

 『どうどう』というように上司をジェスチャーで抑えると、甘えるような困り顔で被告人を見た。


「君の言うとおりだよ。だが先程ミスタ・ライオンハートが言ったとおり、この国の治安維持に責任を持つ神殿騎士団には、制御できない危険分子に適切に対応する義務があるのも事実だ」

「やってみるといい。やれるものならな」

「そう噛みつかないでくれたまえ。そんなことにならないよう、我々が安心するために建前上『契約』という首輪をつけた形にさせてくれと、まぁそういう話じゃないか。言ってて恥ずかしいがね」


 静九郎は疲れた頭でやっと理解した。

 この男が敵方にいる以上、何を言っても無駄だ。


「では好きにしろ。だがそこのロートルが言ったとおり俺は猛獣、気高き〈山猫(ワイルドキャット)〉だ。飼いならせるなどとは思うな。無礼があれば首輪はいつでも引きちぎるぞ」

「ゴミ溜め出身の野良猫の分際で何を申すか!」


 激昂するリヒテンヴァルトの怒声に肩をすくめながら、馴れ馴れしく静九郎に向かって手を突き出す。


「それで結構。もちろん協力してくれれば正当な報酬を支払う。それでいいかい?」

「ああ」


 しぶしぶ応じた静九郎の手を握る前に、アドラーはスッと振り向いた。


「総長も、よろしいですね?」

「勝手にしろ!」


 投げやりな言質とともに、契約は成立した。

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