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チュートリアル③

「いよいよ、レベル10のダンジョンか……。」


太一は宿舎の窓辺で、静かに外を眺めていた。

ここはチュートリアルフィールド。本来であればレベル5程度を攻略すれば異世界に向かうことができた。だが、太一はさらに上を目指していた。「無駄に贅沢な銃器スキル」を手に入れたからには、徹底的に使いこなし、どんな相手が来ても対応できるようになりたい。そのため、3年かけてレベル9までクリアしてやっとレベル10――最終難度のチュートリアルダンジョンに挑むことにしたのだ。


「太一さん、準備はいいですか?」

エルフィナがテーブル越しに問いかける。その声はいつも以上に緊張を含んでいた。

レベル10は、このチュートリアルフィールドで用意された最高難度。魔物たちは知能も装備もはるかに高度で、単純な射撃スキルだけでは太刀打ちできない。地形、魔法、罠、あらゆる要素を総合的に判断し、最適解を導かなければクリアできない関門だ。


「もちろんだ。もう3年近くここで鍛えてきたからな。」

実質の滞在期間は感覚的なものだが、充分な訓練時間は確保されている。太一は異世界語も流暢になり、魔力感知や弾丸生成、射撃スタイルの切り替え、銃器の扱い、緊急時の近接戦闘までマスターしていた。


「では、いきましょう。レベル10のダンジョン、『黄昏の魔宮』へ。」

エルフィナは手を振り上げ、光の粒子を散らす。宿舎から少し離れた場所、今までの洞窟とは違い、古代の遺跡のような石造りのエントランスが出現する。

巨大な石柱が並び、壁には奇妙な紋様が刻まれ、薄紫の炎が灯る松明が道を照らしている。空気が重苦しく、耳鳴りがするほどの魔力が渦巻く。


「なんだここ……薄気味悪いな。」

太一は眉をひそめる。これまでのダンジョンは洞窟や自然の中だったが、今回は完全なる人工遺跡風。その雰囲気は、まるでラストボスが潜む魔王城のようだ。


「警戒してくださいね。ここには強力な魔法生物、闇精霊を操る邪法士、さらにはゴーレムやドラゴンの亜種まで出現する可能性があります。」

エルフィナの顔は真剣そのものだ。「助言はできますが、戦うのは太一さんです。くれぐれも慎重に!」


「わかってるさ。」

太一はハンドガンを召喚。魔力弾を込め、足音を忍ばせて進む。

最初の部屋は広いホールで、石像が並んでいる。石像は人型をしており、その手には剣や槍、弓矢が握られている。


――ガリガリ……ゴリッ……。


突然、石像たちが軋みをあげて動き出した。それは“リビング・スタチュー”と呼ばれる魔法で動く彫像の兵士たちだ。表面は硬い岩石で覆われ、通常の銃撃ではなかなかダメージを与えられない。さらに、後方には弓を持った石像が矢をつがえている。


「装甲相手なら……よし、貫通力重視の対戦車ライフルで一撃貫通を狙う!」

太一はすぐさまライフルを召喚。魔力弾を高密度に凝縮し、狙いを定める。前衛の剣士像が突っ込んでくる瞬間、ドォンッ!と一発。粉砕された石片が飛び散り、後ろにいた弓兵像まで貫通する。連鎖的に後方の石像が崩れ、道が開く。


「す、すごいです太一さん!今や石製のモンスター程度なら一撃で仕留める技量がありますね!」

エルフィナが感嘆の声を上げる。


「まあな。このダンジョンで一番厄介なのは、こういう雑魚じゃないだろ?」

太一は前髪をかき上げて先へ進む。もう緊張より闘志が勝っている。どれだけ強敵が待ち受けていようと、ここまで来たからには引き返すわけにはいかない。


第二エリアは、魔法陣が描かれた巨大な円形ホール。中心には闇色のローブを纏った“ダークメイジ”が3体、浮遊している。彼らは太一を見つけると同時に呪文を唱え始めた。黒い雷撃が走り、無数のシャドウランスが降り注ぐ!


「まずは防御態勢……!」

太一は石柱の影へ滑り込み、ショットガンを召喚する。そして、あえてショットガンを魔力バリアでコーティングする工夫をしてみる。ショットガンは近接での信頼性が高く、弾丸を爆散させることで飛来する闇属性弾を打ち落とすことも可能だ。


「闇魔法は直線的な攻撃が多い……隙間を狙えば避けられる!」

太一は上下左右にステップを織り交ぜながら、ハンドガンで牽制射撃。ダークメイジたちはシールドを展開しながら反撃してくる。


ここで役立つのは狙撃用ライフルと魔力弾の属性付与だ。太一は一息ついて魔力集中。今までの訓練で得た魔力コントロール技術を用いて、弾丸に“光属性”をほんの少し混ぜることに成功した。

対闇属性の魔物には光属性が有効。光魔力弾を込めた13㎜拳銃を召喚し、一発ずつ正確に撃ち込む。狭いシールドの隙間を縫うような正確無比の射撃で、ダークメイジたちは次々と消え去っていった。


「はぁ……まだ先があるんだよな?」

太一は息を切らしながら冗談めかして言う。


「この先が最後のエリアです。そこには、このチュートリアルで最も強力なモンスター……“ドラゴニック・ガーディアン”が待ち構えています。」

エルフィナは固い表情で告げる。


ドラゴニック・ガーディアン――半龍半騎士のような存在で、厚い鱗と鋼鉄の鎧を纏い、ブレス攻撃や剣撃、さらには初歩的な魔法まで操る万能型のボスモンスター。これを倒せばレベル10は突破だ。


「やってやる!」

最後の部屋の扉をくぐると、広大な円形闘技場のような空間。ドーム状の天井からは仄かな光が射し、中央に巨大な人影が佇んでいる。

身長は3メートルを超え、背には翼、手には巨大な大剣を携えている。金属の鎧と龍鱗が一体化し、まるで生きる要塞だ。


「グゥゥゥ……!」

低い咆哮とともに、ドラゴニック・ガーディアンが突進!速度は見た目に反して驚くほど速い。


「くっ! 近接はまずい!」

太一は即座に横へ回避ロール。

相手が振り下ろした大剣が床を砕き、石片が飛び散る。反撃しようにも、正面装甲は硬すぎる。


「エルフィナ、弱点は?」

太一は叫びながら背後に回り込もうとするが、ガーディアンは素早く振り返り、尻尾で薙ぎ払ってくる。かろうじてショットガンで尻尾を迎撃するが、衝撃で吹き飛ばされそうだ。


「頭部や胸部は装甲が厚すぎます。狙うなら関節部か翼膜部分がよいかと!」

エルフィナの声が響く。


「翼か……!」

太一はスナイパーライフルを召喚し、すかさず浮上したガーディアンの翼を狙う。

バンッ!一発命中。

だが、弾かれはしなかったものの、貫通までは至らない。

「くそ、通常弾じゃダメか!」


思案は一瞬で終わらせる。ここまで鍛えた魔力コントロールで、属性を複合した特製の弾丸を用意する。光と雷の複合魔力弾だ。雷は神経にダメージを与え、動きを鈍らせられるかもしれない。


「くらえ……!!」

ドォン!!

30㎜対モンスターライフルを発砲。

雷光を帯びた光弾がガーディアンの左翼を貫き、鱗と鎧の合わせ目を粉砕。ガーディアンは怒りの咆哮を上げて翼を畳み、地上戦を挑んできた。


「よし、飛べなきゃ機動力は落ちる!」

相手が剣を振り下ろす瞬間、太一はショットガンを魔力散弾で撃ち込み、目くらまし的に使う。視界を奪われたガーディアンが後退した隙に、横へ回り込んで側面の関節部をピンポイントで狙撃。

バンッ、バンッ!

ハンドガンの速射で関節の隙間を打ち抜き、動きを鈍らせる。


最後はロマン砲で止めを刺す。

集中力を高め、魔力を限界まで練り込んだ一発を装填。

ドォンッ!!!!

凄まじい音とともに、ドラゴニック・ガーディアンが悲鳴を上げる。光が砕け散るように、巨大な身体が崩れ落ち、塵へと還る。


「倒した……!」

太一は膝に手をつき、荒い息を吐く。全身汗だくで、手は震えていた。しかし、その顔には笑みが浮かんでいる。


「おめでとうございます、太一さん……レベル10、突破です!」

エルフィナが目に涙を浮かべ、拍手を送る。その表情には感激の色がありありと見て取れる。


「やった……ここまで来たぞ……!」

太一はその場に座り込みながら、長い訓練の日々を思い返す。始めは何もわからなかった異世界生活、魔導銃の扱い、魔力の感知、言語学習、戦闘訓練……すべてがこの瞬間に結実した。


部屋の中央に光り輝く宝物庫が出現した。そこには高品質な魔石、特殊な属性弾を作るための素材、そして異世界での冒険者として格段に有利になるであろう装備品のレシピなどが並んでいる。

それはチュートリアルの最高難度を突破した者への、神様からの特別な贈り物だった。


「これで、もう思い残すことはないな。」

太一は宝物を受け取り、立ち上がる。エルフィナが隣に飛来し、満面の笑みを浮かべる。


「すごいです太一さん! あなたなら、異世界でも必ずや最強の魔導銃使いとして名を轟かせるでしょう!」

エルフィナは誇らしそうに語りかける。


「期待に応えるさ。この腕なら、どんなドラゴンが来ても撃ち抜いてやる。」

太一は軽く笑い、帰還を促す光の柱へと足を進める。

これでチュートリアルは完全クリア。

次に目指すのは、本物の異世界での冒険者生活。

もう、準備は整った――どんな困難があろうと、太一は魔導銃を手に、堂々と立ち向かっていくことだろう。

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