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チュートリアル①

光に包まれた意識が戻ると、そこは青空が広がる草原だった。柔らかな風が吹き抜け、花の香りが漂う。


「ここが……チュートリアルフィールド?」


地面に座り込んだ太一は周囲を見渡しながら呟いた。目の前には見渡す限りの自然――まるでゲームのオープンワールドのようだ。


「おいおい、本当に異世界じゃねえか……」


不安と興奮が入り混じる中、背後から柔らかな声が聞こえた。


「あなたが、新しい世界に来た人ですね?」


振り向くと、そこには一人の少女が立っていた。長い金色の髪、純白の羽を広げた天使のような姿。そして、大きな瞳が太一をじっと見つめている。


「……君が、神様の言ってた“天使”?」


「はい。わたしはエルフィナといいます。あなたの補佐として、ここで生活や戦闘についてお教えする役目を仰せつかりました!」


エルフィナはふわりと宙に浮かびながらにっこり微笑む。見た目は無邪気そうだが、天使特有の神々しいオーラが漂っている。


「よろしく頼むよ、エルフィナ。俺、佐藤太一だ。」


「では、施設の案内をしますのでついてきてください」

天使エルフィナの明るい声とともに、太一は草原の道を歩き始めた。遠くには小さな村のような場所が見える。


「チュートリアルフィールドって、意外としっかりしてるんだな……あんな建物まであるし。」


「はい、ここは神様が用意してくださった特別なエリアです。生活拠点も戦闘練習場も揃っていますよ!」



最初に案内されたのは、立派な木造の宿舎だった。外観は中世ヨーロッパ風で、宿屋とギルドが合わさったような造りだ。


「ここがあなたの生活拠点になります。ベッドやキッチン、簡単な風呂もありますから安心してください!」


宿舎の扉を開けると、清潔感のある室内が広がっていた。木製のベッドに食器棚、そして石造りの調理場が整っている。


「おお……想像してたより快適じゃねぇか。」


「ここで食事や睡眠を取り、日々の疲れを癒してくださいね。異世界で生きるためには体力管理も重要ですから!」


「なるほど……ま、休む場所がちゃんとあるなら一安心だな。」


「あとは料理するにしても食材はどうするんだ?」


「そこは安心してください使用した食材は翌日には補給される仕組みになっています」


「それは、神様に感謝だな。食材探してたら勉強も練習もやる暇なくなるからな」



次に案内されたのは広大な訓練場だった。的が並んだ射撃練習場のほか、遠距離・近距離それぞれの実戦用フィールドも設けられている。


「ここでは、あなたのスキル《魔導銃の召喚》を実戦に近い形で練習できます。狙撃の精度、銃の扱い方、そして弾の管理をしっかり学んでください!」


「おおっ、いい感じじゃねぇか!」


エルフィナは満足げに頷きながら続けた。


「ここでは『射撃練習』を中心に練習します。『魔力弾の制御』や『リロードタイミング』も鍛えるための実践的な施設もありますので紹介しますね。コチラになります」


案内されたのは、訓練用のモンスターが徘徊するエリアだった。そこにはゴブリンやスライムなど、低レベルの魔物がうろうろしている。


「ここでは安全にモンスター討伐の練習ができます!と言うのも死亡判定のダメージをくらうとスタート位置に戻される仕様になっております。ダンジョンから出れば怪我なども治っております。銃の種類も多いので念の為に難易度を10段階まで用意させていただきましたが5段階もクリアできれば十分に生活していける範囲かと思います」


エルフィナの言葉に太一はニヤリと笑う。


「なるほどな。まるでRPGのダンジョンみたいだ。」


「ただし!油断は禁物ですよ。相手も攻撃してきますから、銃だけに頼らず回避行動もしっかり意識してくださいね!」


「おう! 任せとけ!」



エルフィナが最後に案内したのは、青く澄んだ水が湧き出る神秘的な泉だった。


「ここは『魔力感知の泉』です。この水に触れることで、自分の魔力を感じ取る訓練ができます。」


「魔力ねぇ……正直、俺にはまだ実感がわかないんだけど。」


エルフィナは笑顔で太一の手を泉に誘う。


「試しに手を入れてみてください。」


太一が恐る恐る泉に手を浸すと、指先から温かな感覚が広がった。それはまるで、血の流れと一緒に何かが巡っているような――。


「これが、俺の魔力……?」


「そうです!今後は魔力の流れを意識して《魔導銃》に弾を込める感覚を掴んでくださいね。じゃないと攻撃手段がありませんからね」


「確かに、銃があっても弾がないと、どうしようもないしな。よっしゃ、頑張るぜ!」


一通りの施設を案内された太一は、エルフィナと共に宿舎の前に戻ってきた。


「どうでしたか? これで異世界生活に向けた準備は万全になると思います。午前は知識面の勉強午後からは魔導銃に関する訓練という流れでやっていきたいと思います」


太一はニヤリと笑った。


「完璧だ。ここでしっかり鍛えて、異世界に行ったら俺が最強の魔導銃使いになってやる!」


「その意気です! 私も全力でサポートしますから、一緒に頑張りましょう!」


夕日がチュートリアルフィールドをオレンジ色に染める中、太一はルーシェを握りしめ、新たな生活に向けた決意を固めた。


「待ってろよ、異世界――全部撃ち抜いてやる!」



翌日から俺の異世界へ向けての勉強と訓練が始まった。


太一は宿舎の一室で机に向かっていた。目の前には分厚い本が山のように積まれている。


「……なんだこれ、漢字どころか読めねぇ記号ばっかじゃねぇか……」


本の中に書かれているのは、太一が全く見たことのない異世界文字。文法や単語の構成もさっぱり分からず、頭を抱える。


「太一さん、頑張ってください!これも異世界生活には欠かせない勉強ですよ!」


天使エルフィナが机の横で手を組み、微笑んでいる。しかし、その笑顔が太一には少しだけプレッシャーに感じた。


「いやいや、無理だろこれ……こんなわけのわからん文字、一日二日で覚えられるかよ!」


「大丈夫です!ここはチュートリアルフィールドですから、習得速度が少しだけ早くなるよう神様が配慮しています!」


「その“少し”ってどれくらいだよ……」


ため息をつきながらも、太一は意を決して本を手に取った。



「それでは、まず基本の9㎜ハンドガンの射撃訓練を行います。立ち撃ち、しゃがみ撃ち、そして移動しながらの射撃――この三つの姿勢をマスターしてください!」


エルフィナが示す訓練指標の的が光る。太一は構えながら低く呟く。


「FPSなら慣れたもんだが、これがリアルとなると……」


――バンッ!バンッ!


姿勢を変えながら、動く的に魔力弾を正確に撃ち込む。エルフィナが驚きの声を上げた。


「すごいです! もう動きながら的を撃てるなんて、さすがですね!」


太一は満足げに銃を回転させ、ホルスターに収めた。


「ゲームでやりこんだ経験が活きたな……!」



1ヶ月が過ぎたころ

エルフィナが魔法で光る文字を浮かべる。次々と浮かび上がる文字を見ながら、彼女は分かりやすく解説を始めた。


「まず、この記号は“ア”の音です。そして、こちらは“カ”……異世界の文字は発音ごとに構成されています。日本語のひらがなに近いですね!」


「……ひらがなっぽい、か。なんとか理解できそうだな。」


エルフィナのサポートを受けながら、太一は一つ一つの文字を反復練習し、手元のノートに書き写していく。


「ア、イ、ウ、エ、オ……カ、キ、ク、ケ、コ……」


数時間後、太一のノートにはびっしりと異世界文字が並んでいた。手は震え、ペンのインクは擦り切れそうだったが、少しずつ確実に覚えていく。


「よし、ここまで覚えたぞ……!なんだか小学生に戻った気分だな。」


「素晴らしいです! では、次に簡単な単語と日常会話を練習しましょう!」



「太一さん、次は《弾のリロード訓練》です! リロードは隙が生まれやすいので、すばやく正確に行ってくださいね!」


「おっしゃ任せろ――」


太一がリロード動作を見せると、エルフィナが突然拍手する。


「すごい! まるで映画の主人公みたいですね!」


「お前……そのコメント、褒めてるのか?」


エルフィナはくすくすと笑いながら言った。


「はい! でも、リロード中はもっと周囲の警戒も忘れずにお願いしますね♪」



半年後

エルフィナは浮かべた文字の下に、発音と日本語訳を表示する。


「例えば、こちら――『こんにちは』は**“リスタ・ナーム”**です。」


「リスタ・ナーム……ふむ、なんとなく語感はいいな。」


「じゃあ、こう言ったらどう返しますか? 『お元気ですか?』――これは**“エン・フィル・サン?”**です。」


「……えっと……『元気だよ』ってなんて言うんだ?」


「それは**“オル・サン”**です!」


「オル・サン、ね……くそ、覚えるの大変だな。」


ブツブツと呟きながら、太一は何度も繰り返し発音する。何度もエルフィナに指摘されながらも、彼の声には確かな成長が見られた。


「これで村人に道を聞くくらいはできそうかな……?」


「はい! でも油断は禁物ですよ。人によっては訛りがあるので最初は少し苦労するかもしれません。」



「太一さん、お待ちかねのダンジョン攻略をやってみましょう!」


「マジかよ、やったぜ!」


レベル1の洞窟に入るとゴブリンとスライムが現れる。


「大丈夫です! 全部倒せばスタート地点に戻る仕様ですから!」


太一は銃を構え、額に汗を浮かべた。


「やるしかねえか――いくぞ!」


バンッ!バンッ!


ゴブリンを確実に撃ち抜き、スライムも核を打ち抜き仕留める。モンスターが光の粒となって消え、エルフィナが空中で拍手した。


「お見事です、太一さん!これなら異世界でも通用しますよ!」


太一は息を整えながら、充実感に満ちた顔で呟いた。


「これが……俺の最初の一歩だな。」


1年後

言語学習がひと段落したところで、エルフィナは次の勉強として「異世界の知識」を教え始めた。


「太一さん、異世界の地理や歴史も知っておいた方がいいですよ!無知で旅をすると、命を落とす危険がありますからね!」


「お、おう……そこまで言われると怖いな。」


エルフィナが地図を広げると、そこには「テリス大陸」と名付けられた異世界の広大な土地が描かれていた。


「ここがあなたが転移する予定の場所――**『ウィスタ村』**です。この村は魔物の被害が少ない安全な場所ですが、近くには危険な森やダンジョンもあります。」


「なるほど。まずはここからスタートして、異世界に慣れていくわけか。」


「そして、こちらの国は**『アルゼリア王国』**。中世風の王国ですが、魔法やギルド制度が整っていて、冒険者として生きるにはうってつけの場所です!」


太一はメモを取りながら、地図に目を通す。


「冒険者……俺もそのうちギルドに登録して、強い銃で戦う日が来るのかな。」


「はい! そのためには知識と技術、どちらも大事ですからね!」




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