プロローグ
名前は佐藤太一、28歳。 一人で、趣味はゲームとゆっくりを少し楽しむ程度。 今日もいつものように残業を終え、深夜の街を歩いていた。
ビルの谷間を吹き抜け冷たい風が、疲れた体に染み渡った。
「はあ、今日も疲れたな…」
ため息をつきながら駅へ向かう途中、視界の端になんだか光がちらついた。
「——えっ!?」
目を閉じる間もなく、意識が遠のいていくのを感じた。
* * *
目を覚ますとそこは真っ白な空間だった。上下左右の間隔も無く、ただ無限に広がる白。
「ここは……どこだ?」
心臓が早鐘のように打ち始める。 不安と恐怖が一斉に押し寄せ、冷や汗が背中を伝う。 そのとき、柔らかな光とともに一人の老人が現れた。 長い白髪と髭、そして慈愛に満ちた瞳。 「神様」という言葉がぴったりの姿だった。
「佐藤太一さん、ようこそ。あなたは不幸にも事故に巻き込まれて、命を落とした」
静かな声が白い空間に響く。
「え、じゃあ俺、死んだのか?」
実感はわかないがこの老人ーーーいや神様が嘘を言っているようにも感じない。
「だが、安心するがよい。お前さんには新たな人生を歩む機会を差し上げよう」
神様は穏やかに微笑んだ。
「新たな人生……異世界転生ってやつか?」
この手のラノベは読んできた太一は気持ちの高ぶりが止まらなかった。
「その通りじゃ。基本的に地球でのあなたがそのまま転移したようなもので正確には違うかもしれんが。世界観は中世ヨーロッパ風のよくあるやつで、魔法なんかもあるぞ。そして、特別に一つだけお前さん専用のスキルを授ける。何か希望はあるか?」
突然の事に戸惑いながらも、興奮が押し寄せる。最強のスキル…何を選ぶべきか。
ふと疑問が浮かんだ。
「確認したいことがありましたが、いいでしょうか?」
太一は神の言葉に引っかかりを覚えてあえて聞くことにした
「なんでも申してみよ?」
「転移の場合は基本になる異世界言語・アイテムボックス・鑑定の異世界セットは勿論ありますよね?そのうえでスキルを一ついただけるんですよね?」
「その答えは否じゃ」
「えっ…ないんですか?」
……は?ナイノ?頭が真っ白になった。
一瞬、頭が真っ白になる。そんなハードモードでも大丈夫なのか。
「それはハード過ぎます神様!基本セットはくれないと困ります。最近では、くれない神様の方が珍しいんですよ?いいんですか、他の神様にケチだなとか思われますよきっと?」
「無理なものは無理じゃ、諦めよ。むしろスキルを1つ自由に選ばせてやったとか褒められるくらいの神格じゃ」
太一は一気にやる気をなくし不満を漏らしだした。
「今どき言語理解もアイテムボックスも鑑定も無いって何それやってられないんですけど。代わりにスキル5個くらい貰えないと厳しくないですかね?それくらいわかって異世界転生してもらわないと送られる方の身にもなってくださいよ」
「イヤならいいんじゃ。悪かったな他のものに頼むからしっかり輪廻転生の輪に戻してやろう」
神様は手のひらを太一に向けて光り出したので太一は焦って神の行為を反射的に止めた。
「ちょっ…ちょっと待って!!やらないとは言ってないでしょ?」
「けど、嫌なんじゃろ?やりたい奴は大勢いるから気にしなくても良いぞ?」
太一を気遣う神様に取得スキルを増やすのは無理そうだと感じた太一は違う切り口ですがることにした。
「ならスキルとは別に、チュートリアルを行うことは出来ませんか?」
太一は土下座して頼み込んでみた。
ふむ。と髭をなでながら神様は考えてくれた結果
「それくらいなら、大丈夫じゃろう。異世界と同じ環境のフィールドを再現して、そこで生活して慣れてから転生するという事じゃな?ついでに眷属の天使を1人付けるで、そいつから知識面は学びなさい」
「ははー!ありがたき幸せ」
太一は土下座の体制のまま礼を言いもう一つ確認することを聞いてみた。
「ちなみに神様?使命とかありますか?」
「特にないぞ?今回は交換留学生としてお互いに一人づつ異世界人を入れる予定だからな」
「今回はって言う事は今までにも何回かやったことはあるんですか?」
「否じゃ。わしの世界では今回が初めてになる。じゃがある程度は発展しておるんで不便はないはずじゃ。それではスキルの製作に入っていいか?」
スキルが一つだけ与えられると言われたが、何を選ぶべきか。
「どんなスキルでも良いんですか?例えば無敵のスキルとか?」
「その場合は、お主が敵と認識していればいけないこと。認識していれば負けることはないが勝つ方法はなんとか見つける必要が出てくる」
という事は曖昧なものは不確定要素がどうしても入ってきてしまうのか。
防御特化にして下手して生き地獄にあう可能性もある。攻撃力特化にしたい。俺はゲームでは防具より武器にお金を使う派だったのだ。その中で近接は華があるが技術と体力両方いるし令和の日本男児にできると思えない。太一は過去にプレイしたゲームを思い出した。遠距離から敵を制圧できる銃器は、自分に合っているかもしれない。ただ物理攻撃だけだと魔法が使えなくて困ることになる可能性もある。
「神様?俺は向こうの世界で魔法を覚えることは出来ますか?」
神様は少し困ったふうに答えてきた
「できるかできないかで言えばできる。だが地球では魔法がなかった分、経験が遅れておる一般人でも使える生活魔法どころか魔力を感じるところから始めないといかん。そう考えると習熟には時間が、かなりかかると思っていた方が良い」
「ありがとうございます」
「どうじゃ。何でも好きなもを言ってみよ?取り合えずできるできんかはそれから考えてみてはどうじゃ?」
太一は意を決して答えました。
「では、『魔導銃の召喚』のスキルをお願いします。いくつかの種類の銃器を召喚できて、弾丸はMPを消費して現具化されるようにしてください。弾も通常弾と魔力がこもった魔力弾というのは可能でしょうか?」
神様は微笑みながら答えた。
「なるほど、面白い選択じゃ。確かに異世界では銃器は珍しい存在じゃろう簡単なライフルマスケットくらいはあるから不審にも思われんじゃろう。スキルじゃから召喚にSPを消費するようになる。弾にMPを消費するようにすれば玉の心配もないの。製作は可能じゃな。そのスキルでよいか?」
「はい!ありがとうございます!」
「じゃあこれから、どのような銃と弾にするかじゃが決まっておるか?」
「はい!9㎜ハンドガン・13㎜拳銃・マシンガン・ショットガン・スナイパーライフル・対戦車ライフルあとロマン砲で30㎜対モンスター用ライフルをお願いします」
むむ!と神様はうなると申し訳なさそうに答えた
「そうなるとリソースを使い切ってしまって異世界言語・アイテムボックスと鑑定がやれんがいいか?」
ちょっと欲張り過ぎたのかもしれない。
反省
…
……
反省終わり
だがこのままで行く!!
「それで十分です!ありがとうございます神様。銃の扱いや異世界言語を自力で覚えてから転移したいのですがそういったチュートリアル空間は可能でしょうか」
「いきなり送っても辛かろうし分かった天使を1人付けるから励みなさい」
太一は安堵と興奮で胸が高鳴るのを感じた。これで異世界でも戦えるはずだ。
「では、チュートリアルのフィールドへと送ろう。ここで天使の教えを受けながら、スキルの使い方や異世界での生活に慣れると良い」
「わかりました!」
神様が手をかざすと、足元から柔らかな光が立ち上り、太一の身体を包み込む。
「それでは、健闘を祈ります。新たな世界での冒険を楽しみにしてください」
眩しい光が視界を満たし、太一の意識は再び遠のいていった。