1話 生存確認の蛇足
蛇足です。良い読書を!
男子高校生は1人でバスに乗った。運転手は初めて見る方だった。少しつり目でお香のような匂いがした。
「おまたせー。楽しめたかね?」
運転手は男子高校生にフレンドリーに話しかける。男子高校生はそれにギョッとしたもののそれ以上の反応は示さずに静かに返答した。
「はい」
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男子高校生は次の日、少し早く起きると休校のお知らせメールを目にした。彼はそれを気にすることなく素早く制服へと着替えていく。朝食を食べ、家を出て、バスに乗る。閑散としたバスに揺られ、駅舎へと着いた。そこには驚いた顔をしたメモ帳を持った男が立っており男子高校生の方を見ていた。
「すみません。……新聞の記者なんですけどー、……高校の生徒さんですよね?学校は休校のはずでは?」
ところどころ男子高校生は聞き取れなかったがおそらく地元新聞の記者で、昨日の事件を取材しているらしい。男子高校生は適当に返事をするしかなかった。
「ええと…事件と無関係なのはわかったんですけど、まあ、同じ高校でこんな事が起こった事についてどう思い…ん?」
記者は途中で質問を止めた。
男子高校生は振り返ると抱きつかれる。そこには彼女が嬉しそうに笑っていた。
その2人の制服姿の男女は記者の質問にはそれ以上答えず…どこかへと去っていく。取り残された記者は…取材の過程で手に入れた写真を見直した。そして、納得したのかメモ帳に何事かを書いて去っていった。
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数日後、ハクシは鳴り止まぬのフキョオンの通知とテレビを交互に見つめていた。地方新聞に掲載されたいじめから自殺未遂をした少女と彼女を献身的に支える彼氏という美談が大手メディアの目に止まったのだろう。最近のワイドショーはその話題で持ち切りだった。フキョオンもその話題で持ち切りで2人の関係についてあることないことが次々と書き込まれては上へ消えていく。
「……これは私の出番かな?リーキー君」
彼女はそう呟くと立ち上がった。
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蛇足の蛇足
公園のトイレの近くにある軽バンの中で若い男がナビでテレビを見ていた。いじめ問題で揺れている高校とそれにまつわる美談を報道している。トイレの方から中年の男が乗り込み、テレビを見ている若い男に怒鳴る。
「いつまでテレビ見てんだ!現場は遠いんだからはよ出せ!」
「えー、でも見てください。めっちゃ青春ですよ?これ」
「関係ないだろ!お前に!てか、テレビのこんな話なんか大抵脚色されてんだ!信用するなよ!」
「はぁーい」
若い男は車のブレーキを踏みながらサイドブレーキを足で解除して、シフトレバーをDに合わせる。そのまま公園から出ようとすると、目の前を水色の軽自動車が結構なスピードで通り過ぎて言った。若い男はこんなところになんの用があるんだろうと思いながら軽自動車が登っていた山道の方へ車を向けた。
二話は日曜日くらいに投稿できたらなと思います。