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好きなんですか?


 こんにちは、真鍋優心です。スクールカウンセラーの仕事は今日で2週間目、かなり板についてきた気がします。

 今日は料理部の木島真一郎くんが来てくれました。ですが残念なことに相談はもう解決してしまいました。お見せしたかったのにとても残念です。


「いやー先生がいてくれて助かったぜ。ありがとなー」

「そうですか、僕も木島さんが仕事をくれてとても嬉しいです」

「仕事して嬉しいんだ……じゃあみんなに今の真鍋先生のこと広めとくわ」

「ありがとうございます、頑張ります」


 そういえばこの仕事は出来高制ではないらしいですが僕が元々もらっていた給料っていくらだったんでしょうか。

 給与明細に興味はないので確認していませんでした。家に帰ったらこのことは忘れているでしょうから、永遠に分からないままかもしれません。


「それにしても真鍋先生とこうやって二人きりで話せる日が来るなんて夢にも思わなかったなー」

「なんでですか?」

「だっていっっっつも女子を5人ぐらいはべらせてたからさ」

「そうなんですか。不思議ですね」


 なぜ女の子ばかり連れていたのでしょうか、不思議です。とても気になります、ですが思い出せません。


「そういやセリナも……あっ」

「芹菜さんって水岡芹菜さんのことでしょうか」

「あっ……あぁ、そうっすよ。てか顔広いままなんすね……」

「木島くんの幼なじみですね」

「えっ!? なんで知って……」

「矢野さんが教えてくれました」


 矢野さんはとても物知りです。2年1組の交友関係をくまなく教えてくれました。出席番号21番の早坂くんは彼女が出来たことがないことなどとにかくたくさんの情報を僕に教えてくれました。


 どうやって調べたのか聞いてみましたが頑なに答えてくれませんでした。企業秘密ということらしいです、最近は高校生でも起業出来るので仕方ありません。


「木島くんは水岡さんの事が好きなんですか?」

「好きっ!? い、いやそういうわけではないけどよ……」

「なるほど、仲が悪いんですね」

「いや極端すぎるって!」


 どうやら中途半端な仲ということらしいです。幼なじみと仲が良いはイコールではないにしても中途半端は珍しい気がします。


「中途半端な仲ならなんで先ほど水岡さんのことを気にしたんですか?」

「中途半……!? いや、そんなの誰だって心配するだろあんなウワサ聞いたら……」

「噂ですか」

「あっ……!」


 しまったという顔をしました。これは問いたださないといけません。

 カウンセラーは悩みを聞くことが仕事。真偽の分からない噂はしっかり真実を解き明かさなければいけません。


「それは僕に関する噂でしょうか。それとも水岡さんですか?」

「あっ……その……」

「根も葉もない噂は僕に直接関係することでなくても見過ごすわけには行きません。教えてください、隠さないでください」

「……あぁ、じゃあ言ってやるよ。アンタが女子生徒喰ってるってもっぱらの噂だったんだぜ? 事故してからはなくなったけどな」


 木島くんは何やら苛立っています。不思議です、言ってる内容も不思議ですが怒っているほうがとても不思議です。


「記憶喪失だから何も言えねーよな。でもよ、アンタのせいで泣いた女が……」

「カニバリズムは死体損壊の罪に問われるだけでなくプリオン病にかかるリスクがあります。そのうえ倫理的にも推奨される行為ではありません」

「は?」

「そして殺人罪も重なると無期懲役、証拠隠滅ではなくカニバリズムそのもの目的にした殺人なら死刑の可能性もあります。とても危ない事なので僕が食人をするとは思えません」


 前の僕がどんな人間だったかはわかりませんが本当にしているとしたら僕は今頃刑務所の中にいるはずです。

 入っていないということはおそらくしていないということです。疑わしきは罰せずなのでそういうことです。


「ば、バカじゃねーの。喰ってるってのは要するに……」

「要するに何ですか? 僕の言ってることは間違っていましたか?」

「あーもう……! クソ!」


 木島くんは机を蹴り飛ばすと機嫌悪そうに出て行ってしまいました。傷はついてしまいましたが黙っていてはバレないぐらいですし、聞かれたら答えるぐらいで良いでしょう。


 それにしてもカニバリズムの噂が立つなんて前の僕はどんな先生だったのでしょうか。少し気になりますが仕事には関係ありません。


 今日ももう少し頑張りましょう。窓から差すおひさまに当たりながら次の生徒さんを待ちました。

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