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踏切り『シャーマン』より  作者: カレーライスと福神漬
1/3

切っ掛け

カン!カン!カン!カン!


梅雨つゆ ()さかり。

雨降あめふりの、午後二時半過ぎ。


赤い光を交互こうごに点滅させて、

歯痛しつううったえるように、

都電とでん警報器けいほうきが鳴り響いた。

虎模様(とらもよう)(イエロー&ブラック)の竹製遮断機(しゃだんき)が降りる。


ちょっと・・勤勉きんべんに降り過ぎだろう・・と

文句を言いたくなるような地雨じあめもと

幼稚園バスの帰りを待つ母親たちがカサをさして、

黄金色(こがねいろ)した郵便ポスト(荒川区名物)のそばで、

井戸端いどばた会議を開いていた。


話に熱中のあまり、一人の母親の注意がれ、

にぎっていた幼子おさなごの手をユルめた。

へそを切り離されたように、

黄色い雨ガッパを着た幼子おさなごは、

間隙かんげきい、トコトコ歩き出す。

踏切り(バー)をくぐり抜け、都電の線路上へ侵入しんにゅうしていった。


ハッ!とする母親。

心臓にズン!氷柱つららが降りる。


時間が極端きょくたんにデフォルメされた。

ゆがみ、伸長した音声が、耳朶じだう。

内面の声は裏返った。

理性りせいくだけ散り、純粋母性本能がき出しになる。

あわてて放り投げたオレンジ色の傘が宙を舞う。

必死ひっし形相ぎょうそうで追いかける母親。

尋常じんじょうではない呼吸。

意識的には再現できない絶体絶命時に現出するブレス。

火事場(ヂカラ)が運動機能にポンプ輸送(ゆそうされる。


追いついたせつな ━ドン!━衝撃が走った。


痛覚つうかくはない。

意識はやみに吸いこまれていった。

おさ線路脇せんろわきで火がついたように泣きわめいている。

さいわいにして、かすりキズひとつわなかった。

母親の両腕にしっかりとつかまれていたからだ。


ただし・・

・・母親の両肩から先は失われていた。

 

線路上のあちこちに、

轢断れきだんされた

赤いラインを引いた

人体じんたいパーツがころがっていた。




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