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ありふれた善行 ─《デイリー・ミッション》─と黒い悪意─《ブラック・ジョーク》─その5


──── 2060年、Diver(ダイバー) Origin(オリジン)が最も荒れた時代


かつて、"地球"と呼ばれた世界。

この世界は唯一、虚渦(くらげ)の"統合"の影響を受けず…初めて虚渦(くらげ)を認識した世界の名前だ。


唯一、帰属する世界を持つ"Diver(ダイバー)"と呼ばれる"地球出身"の者達。



私は違う。私は"Drifter(ドリフター)"と呼ばれる者…。


帰属する世界を持たない、または失った者の総称。

"虚渦(くらげ)"に世界を呑まれた後、統合された"ミーム的遺伝子"から生み出される存在。


こんな事はこの世界ではよくあることだ



"虚渦(くらげ)"を最初に認識したとされる"Diver(ダイバー)社"を

筆頭に彼らDiver(ダイバー)も奮闘した様だけど…

虚渦(くらげ)の発生の原因も正体も現状の解決策も

なにもかも見つからなかった。


既にDiver(ダイバー)の人口は虚渦(くらげ)の認識前の6割以上を失っていたし、残りの人口もそのほとんども"幽霊"…。

意識レベルが"ポリプ"以下となっていた。


"ポリプ"の人間は端的に言うと

Diver(ダイバー)Drifter(ドリフター)問わず

個人の意思のみでは…"現実性"が薄いのだ


この状態は虚渦(くらげ)により近い存在となり

統合されかけている証拠だ。


"ポリプ"以下の意思は人として扱われず…

良くて"エネルギー"扱いされるくらいだ。


それでも、意思を失い眠りについた彼らも夢になる前に意思の強い人間の意思に照らされると…

再び…覚醒することがある。


だから"Ⅻ使徒(12しと)"はその意思を貫き、人を導く。


だからあらゆる思想団体は己が掲げる思想を示し

彼らを思想を染め原動力を与える


その"意思と思想"が眠った人の意思を覚醒させる



これも全て"虚渦(くらげ)を終わらせる思想"を見つける為だ


では結局、"虚渦(くらげ)"とはそもそもなんなのか?

それは…誰にもわかっていない。


きっとそこは重要なことではないのかもしれない

ただ"虚渦(くらげ)"は終わらせないといけない


"虚渦(くらげ)"を終わらせること…


誰もがそれを終わらせるため…必死だった。



────2060年当時。


Diver(ダイバー)の中で"2040年(黎明期)"に流行っていた思想、世界を"虚渦(くらげ)"に統合されたDrifter(ドリフター)を嫌厭する思想の流れが同時も残っていた。それはDrifter(ドリフター)は外的要素…不安要素でしかないからだ。


私も迫害されていたDrifter(ドリフター)の一人だった。

自分の名前も家族も記憶もない。

空っぽだからずっと壁を引っ掻いてた。

え?それに何の意味があるのか?


…ポリプに何でポリプなのって聞いてみるといいかもね


強いていうなら誰かがやってたから…その影響?


そんな私を二人の救世主(ヒーロー)が拾った。

ネルお姉ちゃんと乾お兄ちゃんだ。




───ガチャっ!


「お姉ちゃん!どこか行っちゃうのっ?」


というわけで私は小さな夢航世界(むこうせかい)の丘の上の家に住んでて…あ、そんな事はどうでもいいですね。


数日前からお姉ちゃん達の様子がおかしかった。

私は夜な夜な…寝る前に外の様子を頻繁に確認してた。


エッチなことしてるんじゃないか心配だった…

…そんな事は無かったけど嫌な予感は当たった


"来訪音(らいほうおん)"…。

かつて史上最強と(うた)われ

世界に終音(ピリオド)を打とうとした最恐のⅫ使徒(12しと)


2060年、もう一度言うけどDiver(ダイバー) Origin(オリジン)全体の思想が入り乱れかつてないほど荒れてた時代。


そんな中、お姉ちゃんが渦中の"Ⅻ都市(12とし)"に向かう直前だった。それが何を意味するかなんて幼い私でも理解できた。



「おい、ネル…」


私が起きているのを知って顔が強張る乾お兄ちゃん


「あららぁ…、起こしちゃった?」


「…と。ネルスミ、こっそり行こうとしちゃってごめんね?あまり心配かけたくなったんだ」


お姉ちゃんは、しゃがんで目線を合わせてくれる。


「私達ずっと一緒だったもんねー、でもちょーーーーっとだけお留守にしたいの」


「やだよ!押入れの中にくねくねいるから!」


「夜がこわい!私が一人になっちゃうからっ」


「もう、何言ってるの。乾くんがいるってー。ぷぷ」


お姉ちゃんは右手で口を抑えながら乾お兄ちゃんを見る。乾お兄ちゃんは素っ気なく他所を見る。この時、私はお姉ちゃんにべったりで乾お兄ちゃんを少し怖がってた。


「私はね?大切な人達にいつでも帰る場所を残しておきたいの」


「私達がいる場所が"糸冬荘(いとふゆそう)"だから」


「じゃ、二人ともよろしくー!」


っと、雑な説明でぴょんぴょん跳ねながらこちらに手を振って旅立っていくお姉ちゃん。


「い"っでら"っしゃーいッ!!」


私も泣きながらジャンプして白旗を振った!

降参の合図だ!

あっさり受け入れたって?あ、確かに。

この時も…人の影響を受けやすかったんだね。

私。


「おいネル!……こいつを泣かせるなよ?」


乾お兄ちゃんは困った様に微笑みそう言った

多分カッコつけたかったのかも知れない。

私は自分の顔を乾お兄ちゃんに見せつけた。

ついでに旗で突いた!


「大丈夫、すぐに帰ってくるよ。」


「それに私が帰る場所は、ネルスミ達が残してくれるでしょ?」



────10年後…。

お察しの通り、お姉ちゃんは帰ってこなかった。

乾お兄ちゃんは口にはしないけど死んでしまった事はそういうのに敏感だった私はすぐに察してしまった。

臆病な私はまた一人になるんじゃないかとどうにかなりそうだったけどお姉ちゃんを思い出すと不思議と泣くのを我慢してた。まあ、それでも半年くらいは塞ぎ込んだけどね。


だけど暫くすると段々、お姉ちゃんがどんな人だったのか…、気になり始めた。数年分しか思い出がないけどあの人の後ろ姿が今でも頭に残るのだ


乾お兄ちゃんにお姉ちゃんの事を聞いても濁してばっかり。だから自分で調べた。こっそりね。お姉ちゃんはよく書斎に篭ってたのでその真似事をしてみた。お姉ちゃんの書斎で調べていると一つの日記のようなもの?を見つけた。


"糸冬荘クリスマス奪還作戦"…。

"糸冬"…。お姉ちゃんの姓と同じ。

お姉ちゃんが大家さん?という奴をしてた糸冬荘ってアパートの話?らしい。そこには乾お兄ちゃんの名前もあった。


"普段、バラバラな彼らは同じ志を持っているから

最後はいつもその場所にいる

どんな苦難が訪れようと

彼らは必ずありふれた日常を取り戻す"

という感じの話だった


日記の最後は何かが貼ってあったのか少し剥がした跡と大きな文字で


『見事!アタシらはアパート立ち退きを"〜〜〜"した!』


と書かれており"その一文だけ"別の人が書いたのか殴り書きの様な感じでよく読み取れなかった


でもその日記に登場する人物達は私の胸を熱くした!きっと彼らは日常を取り戻せたのだろう!



私は寂しい時や不安な時必ずこの日記を隠れて読んでた。そしてそれを読む度に思った。


日記の中の彼らも、乾お兄ちゃんも…

きっと私と同じでお姉ちゃんの"善行"によって

救われた人達なんだ。


少しわかった気がした。

お姉ちゃんは彼らとの"ありふれた日常"を愛していた。彼らに困難が訪れた時、お姉ちゃんは迎えに行かずにはいれないんだ。


彼らも彼女の生き方、その後ろ姿…

お姉ちゃんの事が大好きなんだ。


私もそうだ…。


私みたいなちっぽけな存在を見捨てた所で

誰も損はしないし誰も責めはしない


だから誰も私を見向きしなかった。


そんな私に手を差し伸べてくれたお姉ちゃんの行動だってこの時代にとっては取るに足りないただのありふれた善行の一つで、今の私はその結果に過ぎないのかも知れない。


それでも私は彼女の善行に救われた


だから私はその善行に対して目を背けたくない…


私が"彼女の善行"を捨てない理由なんて…それだけで充分ッ!



────【ありふれた善行(デイリー・ミッション)】ッ!!



───ブゥンッ!


(…避けられた?)


本来、ダァナリィの攻撃は確実に当たっていた。

これは透過によって避けられたわけでも

超高速で避けられたわけでもない。

単純に触れるギリギリ…

極限でネルスミがダァナリィの攻撃をこうすれば避けれると知っていたかの様にするりと絶妙な動きでかわし切った。


だがダァナリィも追撃の手を止めない!

足の痛みを忘れて猛攻を繰り出す!


(当たらねえええっ!?…いや何か変だ…!)


ダァナリィの動きの一つ一つを目で追わずに

ネルスミは避け続ける。



「ネルスミの動きが変わった…ダァナリィの動きを完全に見切っている。いやそれどころかこの暗闇の中…完全に"地形を把握している"…見えていない木々や枝を利用して、ダァナリィの予測出来ない回避を実行してる…」


アザミの目から見ても先程まで弱気な少女がここまで善戦しているのに驚いた。



今のネルスミには、本来見えないものまで感じ取れている。


ありふれた善行(デイリー・ミッション)】…。


特定の目的の達成や解決に向けた"答え"になる。


今の彼女は距離に明確な指定ないが周囲の情報を含めた上で"目的"を達成、解決する為に答えを弾き出し続ける。これは彼女に実行可能…つまり"ありふれた答え"しか弾き出さない。


「全部見えているの?いや…感覚で理解している…?」


「この!このッ!」


────ゴンッ!!?


(…はァ?)


長い…長い一瞬。

ダァナリィの思考が止まる。

凡人の拳がダァナリィの顔の悪意を貫通し

笑顔の彼女に重たい一撃を喰らわせていた。


ダァナリィの動きが止まる。

ピクピクと頬が痙攣する。


(くそっ…心の…笑顔を崩すな…)


こんな事は初めての事だった。

どんなOrigin(オリジン)でもMeme相手でもこんな事はなかった


「…て、てめえッ…」


静かに激昂するダァナリィだが、心ではしっかりジョークを飛ばせている!奥底の根本はまだ冷静だ!


だがどんなに触れようともがいても

ネルスミの身体に触れる事が出来ない。

その内に一発、二発と拳をもらい続ける。



───ドゴォ!!?


不意に体勢を崩したダァナリィ

そこに目にも止まらない回し蹴りが顔に命中!

クリティカルの表示が現れてもおかしくない!


普段のネルスミの身体能力では到底不可能な速度と威力だ


(そうだ、忘れさせてくれ。くだらない世界(ジョーク)も何もかも)



ダァナリィはぶっ飛び転がりながらもすぐさま体勢を立て直し飛び出す!死にかけながらももう止まらない!寧ろ、その感覚に溺れたいと言わんばかりに腫れ上がった身体中を無理矢理動かす!


表情から笑顔はとっくに消えているが、まだ悪意(ジョーク)は吹いている。




…【黒い悪意(ブラック・ジョーク)】の欠点。身体に触れるものがない状態、つまり身体全体が地面などに接しておらず空中にあるその"一瞬"は悪意による"ブっ飛ばし"は発動しない。


これはダァナリィの"原点的な弱点"に由来するものではなく。

能力上…地面に触れた際、意図しない粉砕を避ける為の思想(ブレーキ)…いわばこの能力(ミーム)の穴だ


ネルスミはダァナリィの歩行の際、地面に両足が離れるその瞬間に、拳がダァナリィに触れるようにタイミングを調整して殴っていた。そうなると理解しているから。



(分かる…貴方の弱点が。どんどん浮かんでくる!

そして【暗転(ブラック・アウト)】の中、貴方にも見えていないものがある!…それはこの先の角度のある崖!)



───ネルスミはそのまま地面を蹴り暗闇の中に身を投じる。ネルスミを追う勢いでダァナリィも共に落ちていく




────【黒い悪意(ブラック・ジョーク)】のもう一つの欠点。



それは悪意をもってしても身体を支える地面はブっ飛ばせない。それは感覚も含める。地面の感覚だけは常に感じているのだ。

黒い悪意(ブラック・ジョーク)】の発動条件は"笑顔"の他に地面に触れていることを追加するべきだ。



地面に触れている間"触れた地面以外"の物をブッ飛ばせるのだ。その為、崖を転がり落ちる痛みを彼女はモロに受けることになる


いや…少し違う。普段、地面が見えていたならそこに意識を集中させる事で"悪意(ジョーク)"を飛ばせたかもしれない


ネルスミの攻撃だって初撃は視界外からの一振りであり空中且つ認識外…という本来あり得ない条件を満たしてしまった為であり再現性のないものだ


以降も初撃により左目をやられ瞬きの瞬間や…塞がった視界外の左側からの打撃が殆どだ


暗転(ブラック・アウト)】による地面の認識不可、木々を利用された回避への対応による激しい運動…予測不可能な動きによる回避と反撃…。再現不可能だが…今この場では、ネルスミにはそれが可能だった


これらの欠点はダァナリィ本人も意識した事がなく知らない欠点である。



一方、ネルスミは"ダァナリィを倒す"そのための手段として【暗転(ブラック・アウト)】の中、ダメージを最小限に抑える動きを感覚として感じそれを実行する。お互いが20mくらい下方へと転がった。だがその際のダメージの差は明らかだった。


「く…そ…。」

全身を酷く打ちつけ通常、意識を失う程の大怪我。

それでもダァナリィは立ち上がった。

だが思考が乱れ悪意(ジョーク)を身に纏いきれない。

視界がぐらつき【暗転(ブラック・アウト)】の効果も消えていた。

そんな中、ダァナリィに何かが迫ってくる。

ネルスミだ。


ネルスミは拳を握りしめる

───【ありふれた善行(デイリー・ミッション)】…。

本来、彼女の思想とは異なる使い方だがそのMemeはダァナリィにとってより致命打になる一撃を

"善行(ミッション)の遂行(コンプリート)"の為ぶち当てる!


殴られたダァナリィは後ろに蹌踉(よろ)

静止の中、悪意は右手にしか及ばなかった。


再び全身に悪意を纏うその前にネルスミはダァナリィを

戦闘不能にするべく確実に急所へと拳を叩き込み続ける


しかしネルスミは元々インドア派な為、体力不足だった!

一瞬追撃が遅れる。ダァナリィはそれを見逃さない。

息切れの中、新たに取るするべき行動を行う体力が

ネルスミにはなかった。


ダァナリィは後ろに倒れる勢いで彼女の右肩を殴りつけた!


右腕がブッ飛びその衝撃で転がるネルスミ。

満身創痍のダァナリィ。

激痛に耐え倒れ込んでいるネルスミ。


ダァナリィの頭上に大きな影が現れる。

ネルスミの右腕がブッ飛ぶのを見た昇が咄嗟に

高所から飛び出していたのだ


しかしダァナリィはそれも読んでいた。


元から負けず嫌いな彼女は

この一瞬をずっと狙っていたからだ!

笑顔を忘れてもそれは忘れなかった!


昇の拳を顔に受けながらもカウンターで

昇の右腹部をブッ飛ばした!


この土壇場でダブルキルだ!


その様を見たダァナリィは待ち侘びた勝利に

頬を緩めるがブッ飛ぶ昇のその影から

クーニア、アザミもすり抜けて飛び込んできていた。


昇から貰った一撃で視界が揺れていたし

既にダァナリィは達成感からか反応が鈍っていた。


ダァナリィは易々と拳をもらい続ける


「ていうか渋とすぎでしょっ」


「HPめっちゃ多いとか!?」


「そんな事ない、こいつが化け物。ここで殺そ、確実にッ!…ってちょっと!?」


アザミはクーニアの身体全体を使った勢いのある動きに思わず掴んでいた縄を離してしまう。


それでも息のあったコンビネーションで

ダァナリィを追い詰める…!


というわけでもなくほぼクーニアが拳を叩き込む

反撃する隙も与えず。


「クーニア早い!一瞬で終わらせたいから合わせてよ!」


アザミは落ちてる石を握り締めダァナリィに触れようもするがその度、クーニアの猛攻とダァナリィの悪意(ジョーク)が触れそうになる。

焦ってクーニアに触れようとするがクーニアは悪意(ジョーク)を避けるしアザミの手も避ける!理由は特にない!触れられたくない気分だったからだ!


仕方なくダァナリィの始末より確実なクーニア捕縛体勢に移るアザミ。クーニアに繋がれている縄を何とか掴み取る!


同時にダァナリィの右手がクーニアの身体に触れる。だがダァナリィの悪意(ジョーク)はクーニアをすり抜ける。


クーニアが胴体ごとダァナリィをすり抜けるとアザミはクーニアに抱きつきヘッドロックをかける!


「く、苦ちー!」


「はぁ…はぁ…」


最早、ダァナリィも達成感と疲労感によって肩で息を切らす事しか出来なかった。右手の悪意も徐々に安定しなくなっていた。



────ブオォンッ!!? ジジ…ッ!!!


そこに突如ッ──!出現した黒鎧…!


(おっど……?)


ダァナリィはその黒鎧を視界に入れるが

彼女は動く事も無く完全に燃え尽きていた。

その一瞬を…ただ目で追うだけ。


───【顔の無い秩序(ノースキン・ノイズ)】。


その無貌の黒鎧は、今日だけで数え切れないほど殴られきったダァナリィの顔面に向かって超高速で拳をぶっ放した!


ダァナリィは殴られた勢いでブッ飛んでいき直接下山コースだ!クーニアとアザミの視界からも消えていった。


少しして土砂崩れの様な音がした様な気がした。


黒鎧はシュウゥゥ…ジジッ!!と穴から黒い煙の様なノイズを放出し消える。


「君たち、…大丈夫か?」


そこには1人の男が現れる。クーニアはその男を無視してなネルスミの所へ向かう。


アザミは汗を拭いながら尋ねる


「どちら様?」


「…俺かい?…ラマオ。たまたま依頼でね。ここの果物を集めてたんだけど、何がヤバそうだったからな。どっちを殴るか迷ったんだけど…」


オッドネスはクーニアとネルスミに目を向ける


「ネルスミー、倒したよー。大丈夫そ?」


「大丈夫…です…右腕…持って来て…もらえますか?」


「とりあえず、勝ちそうな方の味方をしたまでだ」



「…うおぅっ!?死にかけた!!死んでねえよな!?なぁ俺!死んでねえよな!?」


倒れたまま動かなくなっていた昇は急に起き上がり腹部の感触を両手で確かめる!


「ああ、俺のおかげだ。礼はいらない。…助太刀料、頂くが構わないか?」


「うわ!?お腹に穴開けられたんじゃないの!?服まで綺麗じゃーん!」


クーニアはそれに驚き両手を上げ持っていたネルスミの右腕を放り投げてしまう。


「あぁ〜…!、私の右腕がぁ…!」


「なに、100万Gummy(グミ)で手を打とう」


ぼとぼとその右腕を拾い自らくっつけるネルスミ。

それを追いかけて後ろから抱きつくクーニア


「弱いのにすごいね〜?ネルスミは」


「あはは…ありがとうございます。」


Gummy(グミ)、わからないか?"全ての代替"だ。…わかった、10万でいいぞ?」



お姉ちゃん…。


正直、まだ私の善行にどれだけの価値があるのか

今はまだ分かりません。


私の善行なんか何の役にも立たないかも知れない。


それでも…。

ありふれたものでしか無くても

いつかそれが誰かの温もりになれるなら


"ありふれた善行(ぜんこう)"…。


私を表す言葉なんて、それだけで充分なの



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