Diver Origin その3
─────ジジジ…ッ!!!
───
どこでもない浜辺と星空のくらげ
私はきっと…きっとまだ夢を見ています
私は…旅をしました、それはとても長い旅でした
それがどんな旅だったのか…今ではもうわかりません
ですがとても良い旅でした
…最後にひとつだけ、伝えたい唄があります
それは誰の為の唄だったのか私にはわかりません
ただ…その唄は、とても懐かしい味して…
これはきっと…誰かにとっての子守唄
だから…最後にその唄を歌います
この唄があなたにとって子守唄である事を信じてます
───…。
ガッ──!
「っつぅ〜…」
「おい、掃除サボってなにしてーだ」
「サボってなんかない、休憩中。
それにあと1時間は暇なんでしょ。」
コイツは俺の妹、沖田朱里。
俺達の兄妹仲はかなり良かった。
「…ほれ、じじいに渡された。
宮婆んとこに…これ届けといてくれって
俺はじじいと一緒に仁さんとこ行かねえと。」
「んー、あーくらげ飴とぉ…揺籠の飴?
宮婆よくこれ持ってたもんね。
ねえ…そう言えば最近…変わった匂い?
しない?お線香?」
揺籠の飴…。
宮婆はこれを飴だと言うが
俺には石にしか見えねえ
それを舐めると揺籠の夢をみる
夢と現実の区別がつけられなって
…んで夢の中でずっと子供でいられるんだとよ。
餓鬼だった俺は大人になりたくなくて
その石を舐めて見たこともあったけど
ただの石だったしそんな俺の姿を見たじいちゃんは
怒るどころか腹抱えて笑ってた。
石なんて舐めてたらそりゃそうなるよな
「…?お線香がなんだ?」
「別に、じゃあ行ってくるね。
……ゆーりーかーごの夢をみたー…。」
朱里は宮婆の家へ向かっていく
…今ならわかる、この香りか。
田舎町…家の近くの駄菓子屋と…
駄菓子屋近くのT字路にポツンと佇んでいる
数段だけの階段に鳥居と…
大きな古ぼけた祠しかないそんな小さな神社…。
─────昇…!
「お…透じゃねえか、そっちはもういいのか?」
「うん、でもその前に駄菓子屋に用事があってね。
最近…気になる事があって。
あの店ってさ、よく考えたら違和感を感じない?」
コイツは透…。俺の親友だ。
真面目な見た目して
小さい頃、親の都合で東京からやって来た
コイツを都会の人間って理由で
喧嘩ふっかけて返り討ちにあった事がある。
今でこそ俺のが強えーだろうけど
後にも先にも俺が誰かに
負けたのはその時だけだったな。
気になる事…か……。
「なぁ…あそこに神社なんてあったかぁ?」
あれ、こんな話したっけな?台詞間違えたか?
台詞…。台詞。
「昇?…何言ってるんだ?
最近の朱里みたいな事言い出して。
…この前も朱里が変だから
僕ら首を傾げるばかりだったじゃないか。
…あそこ?…茂みしかないけど?…でも珍しいね。
昇も朱里もそういうのに
あまり興味なさそうだったのに…そう言えば朱里は?」
おい…透、何言ってんだ?
神社、あるだろ…お前が見てる方向…
朱里が祠の前に立ってんだろ?
…朱里も何してんだ。宮婆ん家は道を右に真っ直ぐだぞ。
おい、なに揺れてんだ。へんだぞ。やめろ。
「あー、あいつならさっき揺籠の飴持たせて宮婆んとこにぃ………死んじまった」
あー、そうだ。結局、あいつ死んだんだっけ。
辺りが眩しいな…こんなんだっけか。
あー、なんか…おかしいんだよなぁ…。
「ああ、宮婆あれいつも大切そうに…
昇…?……今なんて?…昇?…昇?昇?昇?」
…。
蝉…うるせえなぁ…。
───ジジジ……ッ!!ジジジ……ッ!!
その蝉の半身は既に潰されている
お線香の香りがする───。




