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Diver knife─《ダイバー・ナイフ》─ その5


2階の奥の部屋、くらげは左足を抑えながら机に肘をつき体重を乗せるようにもたれていた

少し大人な気分に浸っていた。誰だって経験した事のない事を経験した瞬間はナイーブなものだ。


やば、足撃たれた…。

血が出てる…!すごい痛い!これ死んじゃうかも知れない!


「クソ…人殺せる能力じゃん…性格悪いな…」



「それはお互い様でしょー…?」


くらげは目線だけ声の方へ向く

小屋芝居だ、今度は先ほどの様な騙し討ちは効かないだろう

小屋芝居は顎を抑えながら真剣な表情でくらげに一歩ずつ迫ってくる

その表情や口元を抑える黒い生地の手袋が高窓から差し込む月明かりに照らされている


「可愛げのない事しちゃってさ…。…って…うわ!?」


くらげ、無言の猛攻!その手にはハサミが握られている!

足の負傷を感じさせない凄まじい殺意!小屋芝居を普通に殺そうとしてる!



「ちょっとちょっとおおぉ!!?…くっそッ!!【夜泣き姫】ッ!!!」


小屋芝居が頭をヒュッと傾けるとそこから【夜泣き姫】の左腕が飛び出してくる

その左腕はくらげの首を掴もうとする


くらげはその人形の左腕を躱しながらハサミで人形の指をへし折るつもりで叩く様に叩く!


「……!」


刃物は人形の指にたしかに触れた筈だがその感触は無くすり抜けてしまった。


(実体がない…?いや、こちらからは干渉しにくいタイプか)


だが、くらげは空振りしたその勢いのままその先の"コード"を切る!



そしてその際、くらげは左手で持っていたトレイを投げつけていた。それがうまい具合に小屋芝居の視界を遮る!コードを切った事を見られていない。そしてくらげの動きも一瞬捉えられない。



くらげが切ったコードの先には袋がぶら下がっておりそれが落ちると下の机…その木の板に!

テコやらピタゴラ式やらで板に乗っていた地球儀が小屋芝居に向かって飛んでいく!


くらげは初めから、小屋芝居が【夜泣き姫】を出す事を前提で攻撃をしていた

先ほどまでの攻撃はブラフ。小屋芝居の意識を完全にくらげに向けさせる為だ。


小屋芝居を正面からではなくやはり不意打ちで仕留める為に、この位置に誘導していたのだ


「えっ…!?」


袋が落ちる音を耳にした小屋芝居。つい、くらげから視線を逸らし音の方向…左を向く!一瞬、くらげから背を向ける形になった!


そう、同時に2点からの攻撃…くらげ式挟撃作戦だ!



(いつのまにこんな罠…っ!?って反応だね…っ)



(元から訳わかんないくらい汚部屋だったし!てかなんで土嚢なんかあるの!?)


…タッ!キュッ!


くらげは痛む左脚を酷使しながらも小屋芝居の殺傷圏内に入った

勝利を確信したくらげには喜びの表情も迷う感情もない。ただ冷たく命を奪うだけだ!


(……)


────ドスっ!


入った!あと一瞬、思い止まれば来たのかも知れない良心の呵責を置き去りにして

くらげは見事、戦いに勝利したのだ……っ!



ドンっ!パコっ!…ごととっ…!


同時に地球儀が小屋芝居の頭部に命中したようだ。

…しかしなにか様子が変だ…。くらげはすぐに顔を上げる。小屋芝居の頭が……ない!



「な、なにぃぃぃ!?」


視線を少し落とす、切り傷を見ると…何か変だ!

これは…小屋芝居の身体が…人形になっている!

足元を見ると小屋芝居の頭が転がってこちらを見ていた!


「…【人形浄瑠璃(にんぎょうじょうるり)】の対象は、所有者も含まれる」



───ぎゅるうぅん!!シュッ!!


小屋芝居の両腕が180℃回転しその両腕がくらげを捉える!

殺傷圏内に入ってしまったのはくらげの方だった!


(考えていなかった…まさか本体も人形になれるなんて…口元を隠していたのは顎の痛みを抑えていたからじゃない!自身をベースにした精巧な人形…その口元の人形的構造を隠す為だったんだ!)


くらげ、反応が遅れた。だがそれはもう命取りって奴だ。

出来た事と言えば精一杯、地面を蹴り後ろに飛ぶ事だけ。

しかしそれももう遅い。

今の小屋芝居は本来、人間には不可能な関節域にまで可動可能なのだ

月明かりに照らされた右手には【人形浄瑠璃(にんぎょうじょうるり)】が握られている!



やばい当たるっ!!

死ぬっ!いや…人形にされちゃうっ!

刃先があたしの身体に触れ───…っ!


くらげ、コケる様に後ろに倒れゆくだけ

最早、打つ手なし。


倒れゆくくらげの身体は月明かりの外側、薄暗い影に侵入していく

人形浄瑠璃(にんぎょうじょうるり)】の刃先はくらげの胸元まで伸びていた。



────その時、床に転がる小屋芝居の頭部は見た…。その異常性に目を見開いた


くらげが突如、???の中に消えた。いや、違う…。"???ごと"消えた

薄暗いはずの…その"空間"が突如、星が瞬く(くらげ舞う)暗闇に変わっていた


錯覚だろうか…。直前、くらげの右手には黒いナイフが見えた気がした



それは深海の宇宙の様に、刃も持ち手も夜空の星(海を漂うくらげ)の様に輝いていたのだ───。



死んだ人は時間差はあれど死体を残さず消える。夢になるから。

しかし、それはなにも"虚渦"による"死の代替"が理由で消えるとされているが…


※死者が出たとしてもこの世界の常識によって

死の代替…消失したとみなされポリプ以下の現実性の幽霊達はその人を想う事はなくなる

それは集団思想によってこの世界の常識でもあるためだ

"洞察"の意思がなければ 夢は"隠匿"されるのだ

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