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Diver knife─《ダイバー・ナイフ》─ その2


────夢航原点祭 2日目 夕刻 


ペリプルス閑散区、その路地裏…。


一人の黒く目立たない色だが帽子から舌が垂れている。スーツ姿の男性と一枚の布切れトカゲ、チンチョがそこにいた。


「"ダァナリィ"、"小屋芝居"…アイツらは来なかったか。"銃士"は完全にボケ倒して只の畜生に成り下がってる。悲しいが…客寄せにしかならない」


チンチョは背中を見せその言葉には関心がない様に反応もせずにごそごそ作業をする


「俺は予定通り、幾つか遺骨を集めてきた。問題はねェ… まァ〜色々騒ぎを出したかもしれねェが…明日の作戦に支障はねェはず…」


遺骨達を手に取り幾つかの箱に取り分けている

頭を4本指で掻きながら柄でもない地味な作業をしているのだ


「そうか、問題ない。アイツらにとって俺らみたいな凡人の日常なんて眼中にないだろうよ」



男は右腕がなく帽子の隙間から覗く右顔面も焼けていた。

右上半身が焼かれていたのだ


男は左手でリボルバーを取り出し通常ならシリンダーの部分に当たる三列の回転構造の数字を弄る


シリンダーの数字を"0.0.5"とリボルバーの銃身の矢印の様な構造部分に合わせる


これはこの遺骨の能力(ミーム)に必要な過程なのかもしれない。



────ガチャン!



「だからこそ、世の中は…こうなっちまったんだからな」


不意にチンチョの手が止まる

肩ががくんとするほどの大きなため息をする



「言っておくがこれが最後だ…アイツの我儘に夢を見るのモ。この宴が終わりゃ俺もペンチョも…退場するゼ」


「俺らの思想に未来が見えてきたこの状況だって他所の世界が(もたら)した偶然の産物…奇跡なんだ」


「俺達の結末に…死ぬ事ァあっても失敗はねェぞ」



「ああ…これは俺達に課せられた彼女からの遺言(ウィンター・スレッド)…だからな」




────ペリプルス商業区 展望塔付近



「Ⅻ使徒に会いたい?Diver社が管理してるあのⅫ使徒だよね…彼らに会うの?望みは薄いと思うけどなぁ…」


「んー、でもどうして?Diver Originに来ていきなり彼らに会いたいなんて。もしかしてファン?」


「ふぅ。それはね?…これ。」


くらげは何かを覚悟したかの様に雑誌を取り出しページを捲り指さした。散策中配られた最新の情報誌だ。くらげは少し賢くなり喋り出す



「まずはこいつ。No.3、"桐崎咲(きりさきさき)"。両手で指を指してる。これあたしのパクリね。これ訴える、著作権で。あとNo.1Diver…星海月(シュテルナ)。見た目があたしを意識してる。これも訴える。Ⅻ使徒は他にもみんな私を意識してる。ほらこれとか───。」


「そ、そうなんだぁ…ま、まあ深くは聞かないでおくね」


「あとあたしが見てた雑誌の表紙もこいつらばっかり写ってた…やり方がずるいよ。……じゃなくて!本来ならさ…。…あたしが写る予定だったかもだから…。」


「…えと、しかもコイツら隠してばっかり。ずっと雑誌見てたのに…!都合が悪いからあたしから逃げてるんだ…。…いや、えと…分かんないけどコイツらは都合の良い事だけ雑誌に載せて逃げてる卑怯者だ」



「先ずは駅探してきょじ…夢航都市、"Ⅻ都市"に向かうの。責任者に直接あって…」


「…あ!でもⅫ使徒の方ってねぇ。忙しくて色んな所を転々としてるから簡単には会えないと思う!Divers(ダイバーズ)っていう軍隊さんになることから始まるだろうし…」


セラは割り込む様にくらげの言葉を遮る

それを聞きくらげは黙り込みまた眉を少し顰め視線が落ちる。



「…じゃあ、Divers(ダイバーズ)になる」



この時点でセラは悟った。この子の行動は行き当たりばったりで算段などないのだと。

しかもちょっと"ヤバい"。

だが同時に彼女の言葉に違和感も覚えるのも事実。取ってつけたかの様な行動理由だ。



(なーんか、はぐらかしてるな…。いや、自分に言い聞かせてる?)


「んー…今日は遅いしさ…また明日考えよ?」


(あんまり詮索するのも良くないよね)


セラは最早、お姉ちゃん気取りである

だがくらげは何だか申し訳なくなってしまい自然と視線が更に下に落ちていく



「えと…無理してあたしに付き合わなくてもいいよ?」


「何言ってるの!くらげはね……。なんかほっとけないんだよ!」


鼻息を荒げくらげを見るその少女は、

この半日間くらげと共に過ごす事で何かに目覚めていたのかもしれない。


「それにくらげはGummy(グミー)持ってないでしょ!私が宿を探しておくからそれまでに…ほら、私の少しあげるからこれで遊んで来なさい!」



そう言われ送り出されたくらげは何をする訳でもなく人通りの少ないエリアのベンチに座っていた。


宿に泊まる事にはするのだが、問題は一人でどうこの祭を楽しむのかだ。無料と錯覚していたものは一時的なもので今では憎たらしいGummy(グミー)というふざけた通貨で台無しだ。わくわくを返して欲しい普通に。



今までガラクタ漁りしかした事がなくお金を払う習慣など無かったくらげ。そんな人間は通貨のやりとりに極度の苦手意識が出来てしまう。

まるで子供の頃、ネット通販で住所を書き込み受け取り手に自分の名義であれやこれやする時の感覚

くらげはベンチに座りながらGummy(グミー)を支払うという想定をする中で謎の恐怖感を抱いた。



金銭のやり取りってどういう手順?店って入店時に払うの?服屋の店員ってなんで話しかけてくるの?もし支払額を間違えたら?旧時代、忌み嫌われていた税金って?なんで冬はガス代が高いの?そもそもGummyってなんだ?


気づけば疑問の数だけ袋の中のGummy(グミ)を食べていた。



涎を垂らしながらGummy(グミー)を食べるくらげ。そんな時、ふと目の焦点が正常になる。

何かが商店街の真ん中を歩いて行く。

よく見るとそれは人形…可愛らしい黒いドレスを着た人形だ。


目の前の店のガラス張りの壁…そこに人形が沢山並んでいた。

黒いドレスの人形がその店の扉を開けて中に入っていった。



気がつくとくらげは何となく店の前に立っていた。

ガラスから覗ける店内は明かりがついていないがスポットライトの様なものが至る所についているのか各々が一定の周期でライトが光り消えたら別のライトが光るを繰り返す。ちょっと綺麗である。

それをくらげは目で追う。右、左、奥、2階…。



「人形、好きなの?」


突然横から黒髪の糸目女性が話しかけてきた。

柔らかい表情でこちらに語りかけてくる。



「別に、人形なんて女子供が好きなものだってパパが言ってたし」


「もー、君も女の子で子供でしょー?」



「はっはっはっ……冗談だよ。あたしお父さんいないもん」


「あ、あははー、そ、そっかー…はは…は。」


これがくらげ流コミュニケーションシャットアウト!こんな事をされては誰でも会話を続ける気を無くし立ち去るだろう!だがこの心優しき女性は違うようだ!


沈黙の中、ただ二人で店内の人形を見ていた。

ふと女性がまた口を開く



「くらげちゃんは…ただ確かめる為にこの世界に来た」


くらげは思わずその女性の方を見る


「でも探し物はⅫ使徒なんかじゃない。」


今、こいつは確かにくらげの名前を口にしたのだ


「…そうだよね?」


その女性は目が合うとくらげに向かって微笑む

店の扉の方へ歩き出しくらげの方を向くと手招きする


「お人形見てく?たくさんあるよ〜?」


そう言うと店の中に入っていった。

くらげも、少しすると店内へ入って行った

入る前に小石を道路に向かって蹴っといた

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