出会い
ー悪魔ー
、それは、生まれたときから一人一人に与えられる存在。
時にそれは、人の欲望に漬け込み、人を悪の道へ、時にそれは、人の害となる存在を取り払い、人を善の道へ導く存在である。これは、悪魔と人が道を歩み続ける物語である、、、
第1章 出会い
「イケー進めースゥパーラットマーン」
休日の朝から、テレビの前で大好きなテレビに熱中している中学3年生がいる。
「そんなことしてないで勉強しなさい!受験生なんでしょ?自覚あるの?」
掃除機をかけながらそう問い掛けるのは、中学3年生の母親[佐久間 理恵]である。
「僕は、高校生になりたいんじゃない!ヒーローになりたいんだ‼︎自覚なんてあるわけない!」
そう口ごたえするのは、理恵の一人息子で先程からはしゃいでいる中学3年生[佐久間 護]、「弱きを助け強きをくじく」という願いを込めてつけた名前が良くも悪くも性格に出てきてしまった。
「おはよ〜 お、ラットマンの時間か!」
寝室から出てきて、眠い目を擦りながら「ラットマン」というアニメに反応するのは、護の父であり理恵の旦那[佐久間 雄二]である、理恵とは大学生の時に出会い同じサークルに所属していたところ理恵の素直さに惹かれて、卒業式の直後体育館のステージ上でプロポーズしたらしい、その後は、、、想像にお任せしよう。
とまぁこんな感じで騒がしい佐久間家の休日の朝は始まる。
「あ、マズイ。学校で使うノート切らしてたんだった、、、ちょいと書店に行ってこなきゃ」
護は、そう言うと千円札を握りしめて家から飛び出した。
「気をつけて行ってきなさいよ!」
理恵の声に応えるように護は手を振った。
休日に日に当たるのは、ヒーローになる為にと毎日「腕立て伏せ20回、腹筋20回」をこなす護でも所詮は引きこもり、キツイであろう。
途中の交差点で頭が痛くなったような気がするが気のせいだろうか。
へとへとになりながらも最寄りの書店「クワガタ書店」に着いた、入り口近くにあるノートを取ってレジに置いた、普段から家族以外とは全くと言っていい程喋らない護は、店員さんとのやり取りに苦労しながらも会計を終わらせて店を出ようとした時、先程の頭痛が100倍、1000倍となって護を襲った。そして、護は痛みに耐えられずその場に倒れた、「俺、ここで死ぬのか?ヒーローになれず、夢を叶える事なく消えるのか?」耐えられない痛みの中、薄れゆく意識の中、今までの夢を果たす事無く死んでしまうかもしれない事を危惧していた。
「ヤダァァァ、死にたくないぃぃぃ、生きたいぃぃぃ」
そう意識の中で叫ぶ護。
「ヤダァァァァ」
「心配する必要はねぇデスョ」
「誰、、、なん、、、だ」
突然、誰かが話しかけてきた気がした。
「死ぬ時は、死神が問いかけてくるんだ、、、」
『死神じゃねーデスョ!ワタクシは、貴方の願いを叶える為に、はるばる魔界から神の命を受けやってきたア、ク、マ、デス‼︎』
絶望する護に向かって誰かが叫んだ。
「アクマ?悪魔が契約を結んで命を取りに来たんだ、、、」
「まぁ、人によってはそう捉えていただくのもアリデスネ」
アクマを名乗る者は、護の絶望のテンションに疲れたのか淡々と話を進める。
「人によっては?ヤッパリ死んでしまうんだ。」
「まぁ、簡単に言えば神の監視員【オペレーター】になれって事デスョ」
護の絶望さえ無視して説明を続ける。
「【オペレーター】になれば、ワタクシが貴方に力を貸して差し上げマスョ」
「アクマが力を貸してくれたらどうなるんだ?」
《力を貸す》という言葉が気になったのか、冷静になって護は聞いてみる。
「やっと冷静になれマシタカ」
アクマは、護のテンションが戻ってきて話しやすくなったのか言い聞かせるように話を続けた。
「貴方にやってもらう事は3つありマス。
1つ目は、貴方にこの世の事を天界の神々に報告してもらいマス。」
「と言うと?」
護は、アクマの言う《やってもらう事》が気になった。
「貴方は、【オペレーター】としてこの世の全てを体験してもらいマス。その全ての中には、とてつもなく危険なことも含まれていマス。それでも冒険してもらいマス。ヨロシイデショウか?」
護は、《とてつもなく危険なこと》からする不穏な気を感じとった。
「ちょいと待ってくれ、危険な事ってのは(マ○リックス)とか(ミッ○ションイ○ポッシブル)的なやつか?」
「そういうのもありマスネ。」
「嘘だろ?そんなの死ぬに決まってるじゃねーか!」
「それでは、【オペレーター】の役は降りマスカ?そうなれば、貴方はこのまま死んでしまうデショウ。」
突然、理不尽な条件を提示された護はまた絶望した。
「ヤッパリ、俺は死ぬ運命だったんだ、、、」
「貴方は、感情の起伏が激しいのデスネ。安心してください、その為の2つ目のやってもらう事デスョ。2つ目のやってもらう事は、役目を果たすまで死ぬな!デス。貴方の役目は、この世の全てを神々に報告すること、その為死なれたら困るのデス。なーに心配はご無用です、その為にワタクシがいるのですから。死にそうになったら最大限力を貸して助けてマスので。」
アクマは、護から質問がくる前に《2つ目のやってもらう事》の説明を終わらせた。そして護が話す間を与えずに次の話を始めた。
「3つ目は、邪なる者を滅してもらいマス。この世の人間にはアクマが1人につき一体付いていマス。アクマは、ごく稀に人の邪念や悪意を喰らい、邪なる者になってしまうのデス。こうなると“あら、大変どんな人間にも手のつけられない怪物になるではありませんか⁉︎“となってしまうので手遅れにならないように邪なる者の中にある【真の怪物】を滅してもらいマス。」
護に実質的な拒否権は無かった。
「このまま死ぬよりはいいだろう。その話、乗った‼︎」
「ではこの契約書に血のサインを」
アクマは、どこからともなく契約書と呼ばれる布を取り出した。
「血⁉︎」
護は《血のサイン》という言葉を聞き逃さなかった。
「そうデスョ。血なら契約対象者は全て持っていますし、体から簡単に取り出せるのでアクマの世界では多用してマス。」
妙に納得できる説明を受けてしまったので、サインせざるを得ない状況になってしまった護は渋々指の皮を食いちぎり血を垂らした。その瞬間、契約書は光を放った。
「契約成立‼︎」
アクマが、嬉しそうな声を発した瞬間、護は頭痛で倒れ込んだところにいた。
周りには書店の店員や店員が呼んだであろう救急隊員、書店にいたその他の客が集まっていた。
「起きましたか?何処か痛いところはありますか?」
救急隊員の質問に、今にでも消えてしまいそうな声で「う、、、はい」と答える護。
何処か怪我をしていないか診るために救急車で病院に運ばれる護の腕には、確かにこう書いてあった《オペレーター:ベルゼブブ》




