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1 何時かの終わりと怪力鎧と追放女

(なんで私が……)

 死に際に恨み言を呟いた。

 あの日から、全てが零れ落ちて行った。その結果が、不審者討伐の失敗。

 背後から斬りつけられての死亡。

(あの頃が懐かしいな……)

 何時かの記憶が頭の中で蘇る。その光景も徐々に細くなっていく。

(あれは私と、誰だっけ……?)

 この疑問が私の最後だった。



(あー、私、なにやってるんだろ)

 昼食を片手に空を見上げ、考えていた。

「マドール、疲れたの?」

 私を呼ぶ全身鎧の子はレムッタ。疑問のきっかけはこの子でもある。

「なんで私の入れ替わりとパーティ組んでるんだろって思ってさ」

「もー、またそれ?」

 そう、まただ。何度も考える。だって、ギルド内ランクの最高であるゴールドになった直後に私は戦力不足を理由に追い出されたんだから。その代わりとなったのが隣りに居るレムッタ。

 パーティは攻撃力的に足りない囮役よりも、攻撃力のある硬い壁役を求めたんだ。

「あんたがせっかく入ったランクゴールドのパーティを即脱退して、その次のランクシルバーの落ちぶれた個人と組みたいなんて言うからよ。どう考えてもおかしいじゃない」

「だって、顔合わせ初日にあんなの見せられたら逃げようと思うじゃない」

 私も、初日にそんな不快な事をするパーティなんてごめんだ。元リーダーのタルミスにはざまあという感想とお気の毒という思いがあった。

「そうね。私も、レムッタのおかげでちゃんとお金が稼げているから、感謝はしてるよ」

「お互い、収まる所に収まっただけだよ。じゃ、そろそろ行こうよ」

「そうね。ジャイアントラボを倒しに行きましょうか」

 私達が追っているのは、スライムと似ていて、特徴の違う別個体が取り込みという食事行為を繰り返し、巨大化したもの。

 ラボは、自身の体内に取り込んだ物体を融合させるという特徴がある。始まりは人が人工的に生み出した生き物で、未知の物を生み出す可能性があるこの特徴から、人が管理している。

 どこかの研究所から逃げ出し、手に負えないからと討伐依頼を出されたの私達が引き受けた。

「薬草の群生地まで後少しね」

「うん。腕が鳴るね」

 レムッタは、私と依頼をしている時、とても楽しそうだった。冒険という行動自体が好きなんだろう。

 休憩を終え、しばらく進むと、目的地が見えてきた。

「この距離からでも分かるわね。やっぱり、スライム系は分かりやすいわ。それで、どうするつもり?」

 視認は出来た。後は気付かれる前に事を済ませたい。ラボは分裂によって数が増える事は無い。恐らく、人の三倍くらいの巨体で、囲うように襲われてはどうにもならないから。

「これを投げるんだよ」

 そう言って彼女が両手に持ったのは、自分達の足元にある土だった。

 秘策有りという反応のレムッタだけれど、小さいスライム系なら、長物で核を壊すのがセオリー。巨体なら魔法が一番だけれど、私達は魔法のスキルは無い。

 小石でも岩でも無く、本当にただの土で戦おうとしているレムッタ。

「え、意味分かんないんだけど」

「見たら分かるよ」

 彼女は、そう言うと両手に土を持って近付いて行った。

 説明が苦手なのか、彼女は時折説明を省く事がある。

 問い詰めても答えないから、そういうものだという事で、私は付いていった。

「じゃあ、始めるよ」

 レムッタはそう言うと、両手の土をラボに向かって投げた。投げる過程で既に零れ落ちるほどに脆い土でどうするというのか。

 絶対に途中で散って届かないだろうと思っていた。

 けれど、私の予想は外れた。

 砂ほどの、あるいはもっと小さな粒になっても、ラボに届いたから。

「エグッ」

 ラボの体をより細かくなった土が貫いていく。

「ほら、核を見て」

 体の形を柔軟に変えられるスライム系だけれど、絶対に形が変わらない核と呼ばれる部分がある。人で言う所の心臓だ。そこを壊されれば、どんな特徴を持った相手でも死んでしまう。

 そんな重要な部分が、土で体を削られているおかげで剥き出しになっていた。

 本来なら致命傷を避けるため、核の位置は移動させたりするのだけれど、レムッタの攻撃でそれも出来ない。

「そういう事ね。分かったわ」

 核が剥き出し状態なら、どれほどの巨体であろうと関係無かった。

 俊敏さが売りの私は、風のように早く駆け、体が戻る前に核を両断した。

「ね、いけたでしょ?」

 討伐の証にと核を拾う私に、問題無かったでしょとレムッタ。

「流石は剛力の鎧ね。それで呪いが無いだなんて、特殊スキルじゃないの?」

 レムッタがこんな力技が出来たのには理由がある。

 彼女が装備している全身鎧は、剛力の鎧と呼ばれ、装備者にとんでもない力がもたらされるというもの。本来なら呪われた装備なのだけれど、彼女曰く呪いは解呪されているらしい。

 その理由は分からないけれど、聞いても彼女は答えてくれない。だからは私は、彼女がそういった特殊スキルを持っているんじゃないかと勘繰っている。

「もう、そんなの持って無いよ」

 彼女はそう言ってはぐらかす。

「まあ、何時手の平を返すか分からないものね。それで良いわ」

 信頼していた仲間に追放された経緯から、私は卑屈に返した。

「私はそんな事しないよ。マドールだってしないでしょ。それよりもさ、私の怪力とその速さ。組み合わされば良い感じになると思わない?」

 彼女にパーティに誘われ、組んで幾つかの依頼を一緒にやって来たけれど、今回のような連携を取る機会が無かった。だから、コンビプレイはこれが初めてと言えた。

「ざっくりしすぎよ。でもまあ、足りない部分を補うという点では良いかもね。大抵はあんたの鎧の力で片付けられそうだけどね。背負ってる大剣ももしかしたら要らないんじゃない?」

「流石に、獣とかは切った方が早いよ」

「血抜きは必要だものね」

 私が楽出来てしまう状況が気になるし、レムッタはちょっと作戦の説明が足りない事を除けば、パーティとしてやれそうな気がした。

「絶対に良いコンビになるよ。だからさ、続けて行こうよ。ね?」

 二人で戦った事が初めてだからか、彼女はこれがパーティ継続の分かれ道だと思っているようだ。

「やる事は全部あんたがやってるんだけど。負担が多いのもあんただと思うんだけど、それでも良いなら、引き続き組もうと思うけど」

「やったぁ。よろしくね、マドール」

 こちらが負い目を感じるくらいに、レムッタは喜んでいた。

 冒険者の過去は探らないのが常識だけれど、こんな反応を見せられたら、よほどパーティに恵まれていなかったんだろう。なら、可能な限り関係を良好になるように努めて行こう。

「やっと一つ達成出来たよ」

「やっと一つ? 誰かとパーティを組むのが目標だったの?」

「そうだよ。って、マドールはそういうの無いの?」

「稼げるようになる事しか考えて無かったわね」

 私がそう言うと、何だか不満そうな表情をするレムッタ。

「夢の無い事を言ったのが不満?」

「そうじゃないよ。でも、残念だなって」

「残念て言われてもねぇ」

「子どもの頃とか、夢とか無かったの?」

「夢? 何かあったかな……」

 考えてみると、何かが引っかかっている気がする。

「何々、何か思い出した?」

 期待した表情で彼女が聞いてくるけど、期待には添えない。

「いや、特に何も」

「なんだ、残念」

「残念って……。もしかして、私達って何処かであった事ある?」

 子どもの頃の事まで引っ張り出して聞いて来るなんて、そんな気がした。

「さあね。匂わせとくよ」

気にさせるだけさせて、レムッタはそれきりこの事について何も言わなくなった。

 それでも、仕事では問題無く共闘出来ていたから、パーティは続行した。

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