第七話 森の精霊エイルー
昨日、森の大半を燃やしてしまった俺たちは、いや俺たちはじゃなくて、俺なんだけど。
怪我のこともあり、出発はまた明日にした。
俺なんかよりルーシーの方が怪我が酷かった、治療魔術を施して、飯を食わせて、とりあえず今日は寝かしつけた。ずっと『お兄ちゃん!お兄ちゃん!』って甘えながら眠ってたよ、可愛すぎて、襲いたくなったのは事実、だが襲わなかった、聖獣ならぬ性獣は耐えきったぞ、よくやったねレミルズ!。
だが翌日妹が起きたら、『おはようお兄ちゃん!』じゃなくて、『おはようございます!お兄様』だった。
俺は膝をついて、絶望してしまった。
『お兄ちゃんタイムは終了してしまった』と。
現在馬車に乗って、エイラの森を抜けたところ、もうすぐエイラに着く
だが俺の心はブルーなんだけど、いや、昨日撃った魔術のブルーじゃなくて、心がブルーね。
「ほひいふぁま(お兄様)、ほうひまひた(どうしました)?」
パンを口いっぱいに頬張り、もしゃもしゃとしているハムスタールーシーに話しかけられた、可愛すぎるじゃねえか、ちくしょう。
にしても、治療魔術はかけたとはいえ、もう完全回復してるんだもんな……生命力にあふれているよ。
流石の俺でも、ここまで元気にはならない。
「いや、もう『お兄ちゃん』って呼んでくれないのかなって思ってさ、昨日、久しぶりに呼ばれて、めちゃくちゃ嬉しかったからさ。これからもお兄ちゃんって呼んでくれていいんだぞ?」
「お兄様……」
「ルーシー……」
二人は見つめ合い……バチン!、何故かビンタされた…………痛い
「いってえなあ!?なにすんだ!」
「恥ずかしいこと言わないでください!、あの時はその場の空気がアレなだけだっただけで、お兄…………ちゃん……なんて、恥ずかしくて言えませんよ、もう!」
俺は絶望してしまった。……もうお兄ちゃんって呼んでくれないのか。俺はもうあの可愛い妹の口からお兄ちゃんと呼んでもらえないのだろうか、ていうかいつから俺を『お兄様』って呼び始めたんだ。誰だお兄様なんて言葉教えたやつ。まったく腹が立つ
「誰だ!お前にお兄様なんて言葉教えたやつは!」
俺は泣きながら彼女に縋りついた
ルーシーは「んっ」と指さした……俺を
俺は最初なんだろうと思ったが、すぐに思い出した……『お兄様って呼ばれたいなあ!』……三年前に言ったわ俺。何言ってんだよ俺。俺のせいじゃねえか。
「言ったな、三年前」
「はい、言われました、三年前」
「ちょっと頭叩いたら記憶って飛ぶ?」
ルーシーはすごい嫌悪顔で後ろに後ずさった、そして怯えているのか、怒っているのかわからない声で……
「殺す気ですか!」と、怒られた、うんやっぱり怒ってたわ、殺す気なんて、微塵も思ってないんだけど。
「いや、記憶消せば、お兄ちゃんって呼んでもらえるかなって……えへへ」
「えへへ!……じゃねえよ、何しようとしてんじゃボケえ!」
え?ルーシーこんな口悪かったっけ?しかもこんな男っぽい声だっけ?あれ?実は男でした、弟でしたっていう盛大なドッキリ?、いやルーシーは女の子だ、何回と何百回と一緒にお風呂も入ったことはある、『伝家の宝刀』が付いてないから絶対女だ。
まあこんなこと言うのはルーシーじゃない、カイエンだ。
この男ずっとにやにやしながら見ていやがった、やはりルミナス家は変態の集まりなのか。
いや、この叔父さんと、父親が異常なだけだと信じたい。
「妹とのイチャイチャタイムを邪魔しないでもらえますかね?」
「はっはっは森の大半を燃やしておいてよく言うわい!」
イチャイチャタイムを阻害され、怒りをあらわにする俺を見ながらカイエンに釘を刺された
「でも大丈夫でしょうか、エイラの森は、エイラ国の所有物ですし、僕たちは罪に問われるんじゃないでしょうか?」
そう、昨日、森を燃やしてしまったので、多分だがいやおそらく、いや確実に極刑だ。俺だけ。
「大丈夫じゃろ、エイラの森は精霊が管理していて、その精霊が燃やした森を元に戻すようじゃ」
「精霊?ですか……」
精霊……この世界にごくまれに見かけるという、森や、海、大地の管理を任されている精霊がほとんど
、だがその中でもさらに位の高い精霊、聖霊というものもいる、聖霊はこの世界に片手で数えられるほどにしか存在しない誰も見つけられないという伝説がある、誰も見つけられないのに、よく片手で数えるほどしかいないって分かるな……もっといるかもしれないんじゃないか?……いや、もしかしてもうこの世には聖霊なんて存在するのだろうか、誰にも知られずに、もう、いなくなっているんじゃないか、と思ってしまう、まだこの世に存在しているのなら、ぜひとも会ってみたいものだ、女の子なのか、男の子なのか、それとも両性なのか、謎は深まるばかりだ。
女の子がいいなあと思っている、レミルズを無視し、カイエンが話を進める。
「その精霊が夢の中で出てきたのじゃが『次やったら滅ぼす』と言っていたぞ!よかったな許してもらえたぞ!」
それは許してもらったのだろうか、怒ってますよね精霊さん、今度お菓子でも持っていこう、うん土下座もすれば許してもらえるんじゃないか。
「今度謝りに行こうと思います」
「謙虚じゃなあ」
「あ、私も一緒に謝りに行きます」
カイエンは行く気ないらしい、まあやったのは俺だし仕方ないといえば仕方ない、そしてルーシーは優しいな、俺と一緒に謝りに行ってくれる何て……お父さん……どうしてあなたの『種』からこんな似つかわしくない可愛い子が生まれるんでしょうか。お母さん成分が99%じゃねえか、逆に俺は99%お父さん成分じゃねえか。
「謝る必要なんてないよ」
「「「え?」」」
心の中で変な会話をしていたら、誰かが、何者かの声が聞こえて、思わず三人とも声が出た。
そして目線の先には、身長は120ぐらいだろうか、エメラルドグリーン色の髪、引きずり込まれそうになるほどに美しい瞳、そして、羽、、ん?羽?
「ぬおおおあああ」
俺は思わず後ずさった、驚いてしまったが、よく見ると、本で見たことある羽だ、そう”精霊”だ
「精霊……様?」
俺が恐る恐る聞いてみると……
「うん!私はエイラの森の管理人、兼精霊のエイルーだよ!」
「おお夢の中におったやつそっくりじゃ!」
「エイルー……様?」
「もう!エイルーでいいよ!友達でしょ!」
早速精霊と友達になった、やったね友達が増えたよ。ていうか精霊ってこんな簡単に出会えるものだろうか、精霊は人間不信がほとんどだと聞いた、それはなぜかというと、遠い昔に人間が精霊の森を焼き尽くした、それによって大量の精霊が消滅し、森そのものが消えたという、その燃やした張本人は、聖霊によって殺されたが、精霊は激減したのだという、その残された精霊は、この世界のどこかに散らばったらしい。
「エイルーさんは人間が怖くないんですか?」
「ああ、確かに人間は怖いけど、怖いのは森を燃やした本人が嫌いなだけで、他の人間は嫌いより好きだよ!人間は面白いからね!」
ルーシーの問いに、エイルーは笑って答えた、なんとなくだけど、初めて会ったけど、このエイルーという精霊は、とても優しい、そんな気がする、普通なら自分の故郷を燃やされたら、怒り狂い、復讐を誓うだろう、そしてその種族を怨むだろう、だけど、この精霊は違う、人を怨まず、嫌いにならない、それどころか、人間が好きだと言っている、とても心が広い、大事な友達や家族などもも燃やされているのかもしれないのに、それでもなお人間との交友関係を深めていく、この精霊を俺は見習いたいね。
もし俺の故郷や大事な人が、他種族によって消失したら、俺はその他種族の者を、その者と同じ種族の人達と仲良くしていくなんて考えは、出るだろうか、いや、恐らく俺はできない、一生怨むだろう、その種族を根絶やしにするかもしれない、だからこそ見習いたいね、とても広い、荒野のような心になりたいものだね、まだ15歳の俺が言うのもなんだけど。
「でも、本当に申し訳ありません、森の大半を燃やしてしまって……」
「ああ、大丈夫よ、私がいれば森はすぐに回復するから!ちょっと時間がかかるけどね!」
「やっぱりエイルーさんって、森を操る精霊なのですか?」
「そ、私の魔術は森を操ることのできる森操縦この力があれば、森を操れるし、森の修復をすることができるの」
「森ならばどこでもいいんですか?」
ルーシーがそう質問すると、エイルーは苦笑まじりに話した。
「いいえ、使える森は一つにしか絞れないの、私はここエイラの森と契約しているから、この魔術は、ここでしか使えないの」
一つの森にしか絞れない、いや、絞るしかないのか、森全体を操るなんて、相当の魔力がないと、ほぼ不可能、だが一つの森に絞るという”制約”で、消費魔力を限界まで下げ、その時に扱える魔術ってことかな。もし他の森まで操ろうものなら、十秒もしないうちに、魔力枯渇で倒れかねない。魔力は生命みたいなものだ、魔力を使い切れば、気絶する、もし魔力を限界の限界まで使えば、長い間、眠りにつくか、あるいは、最悪の場合『死』だ。魔術師は、魔力がないとほぼ”無能”になる。
魔術師は自分の魔力をどれだけ残せるかがカギだ、それに加えて、剣士や武術家なら、魔力をそこまで使わないから、戦いやすい、剣と魔術、両方を使いながら戦う、魔剣士などもいる、武術家は魔力のほとんどを魔術ではなく、身体能力を強化するために使う、この世界にはたくさんの戦闘スタイルがある、学校でたくさん学びたいものだね、うん。
「にしても……」
エイルーがにやりと笑い俺の方を見る、何だ……何かされるのか……やっぱり燃やしたの怒ってる?
もしかして、名前がどっかのモンスターを狩るネコにそっくりだと思って吹き出してしまったことか?
「よく倒してくれたよあんな化け物!すごいねレミルズは!」
「え?」
誉め言葉をもらえると思っていなかったので、思わず変な声が出てしまった。
「あの、どういうことですか?怒ってないんですか?」
「え?怒ってるわけないじゃーん! むしろ感謝してるよ」
俺はむしろ鉄拳を喰らっても、文句を言えないぐらいのことをしたのですが、どんだけ心広いんだこの精霊は。
「あの魔物はね、木の魔物が突然変異した姿なんだ」
「突然変異ですか……」
「そう、魔物には、突然変異する物もいるの、特殊な魔物か、死の境地に立たされた時に、突然変異し、強化される、あの魔物は特殊個体ね、恐らくだけど、ここ周辺の魔力や魔物を喰いすぎたのでしょうね、
百年にあるかないかぐらいの、頻度なんだけど、その時は私が倒してるんだけど、あの魔物は桁違いに強くて、倒せなかった、この森で一番戦えるのは私だから、私が倒せないってことは、この森が滅ぶってことと同じなの、だからあなた達が倒してくれたことには本当に感謝してるよ、ありがと!」
「倒したのはルーシーとレミルズじゃ、ワシは何もしとらん」
「わたしも、負けてしまって、お兄様が来ていなければ、死んでいましたので、結局は何もしていません……」
「何言っているんだ、叔父さんはともかく、ルーシーはよく耐えてくれたさ」
「そうだよルーシーちゃんがいなければもっと被害が出てたよ、レミルズのせいで被害はもっと出たけどね」
俺とカイエンが同時にグサッときた。
「にしてもあなた達兄妹、すごい魔力持ってるわね」
「そうですか?」
「ええ、ルーシーちゃんはその歳とは思えないほどの魔力量だよ、大きくなったら十王魔導士になれるよ絶対に、いやもうなれるぐらい強いと思う!」
「本当ですか?」
「私が言うんだから本当よ!胸を張りなさい!」
十王魔導士?なんだそりゃ、と思いながらルーシーを見ると、とても嬉しそうにしている、そんなにすごいモノなのか、友達いないからそういうの知らないや。
「そしてあんた!」ビシッ
「え?なんですか……」
でかい声で指を指された、人に指を指しちゃいけませんって教育受けてないのか、このピクシーは。
「あんたの魔力量どうなってんの!、私何万年も生きてきたけど、あんたみたいな化け物見たことないわよ!]
「誰が化け物ですか!失礼な精霊だな!おらっ」
俺は失礼なことを言われたので、エイルーの両頬を引っ張った。とても柔らかい、プリンみたいだ。
「いたい!いたい!ごめんなひゃい!あやまる!あやまるからあ!」
謝ってくれたので、とりあえず、離した、エイルーはあいたたたと言いながら、話の続きをした。
「化け物っていうのは悪口じゃないからね、誉め言葉みたいなものよ」
「誉め言葉で化け物ってあるんですか」
「まあ化け物は言いすぎたわ、この世のものとは思えないほどの魔力量ってことね、言葉では表しにくいわ……」
「そんなに多いんですか?俺の魔力量……」
「多いなんてものじゃないわ、私、これでも精霊で長生きしてきて、たくさんの魔術師に会ってきたの」
「エイルーって何年生きてるの?」
「ざっと十万年以上ね、それから先は覚えてないわ」
「え、ババアじゃ……」ボカっ
レミルズはエイルーからボディブローを受けた、小柄な体系とは思えないほどの威力にレミルズは圧倒された。
「ずびばぜん、もういいまぜん……」
「これでも心と体は16ってことを覚えておけ、小僧」
「いやあんたも歳そんな変わんな…いやなんでもないです」
またボディブローを受けるところだったぜ、あぶねえ……
「ま、話を戻すけど、さっきも言ったように、私は長年生きているから、たくさんの魔術師に会ってきたの、何万、何千万、何億とね、」
そんなに魔術師と会ってきたのか、流石ババ……いやお姉さまだ。
「たくさん魔術師を見てきた私だけど、あなたのような魔力量を持つ奴は一人もいなかったわ、恐らくだけど、歴代最多の魔力量ね」
「そうですかね……まあたくさん魔術を使っても、最近は半分も使わなくなりましたからね」
「そう、魔術師は魔力量が多いほど、魔術の種類が増えていくの、魔力が多ければ、たくさん鍛錬できるからね」
「でも、魔力量だけじゃ、強さは……」
「そう、魔力量が多いだけじゃ強さは決まらない、結局魔力量が多くても、技術力がなければ、意味がない、電気があるのに、電化製品を使わないのと一緒ね」
「じゃあ……」
「でもあなたは違う、魔力量だけじゃなく、技術力も桁違い、なんせこの森を燃やしたんだから」
「それってどういう……」
「この森はね、強化してあるの、どんな炎でも燃えないように炎耐性を付与しているから、燃えないの、”普通”はね」
「あ、確かに私の炎帝でも燃えていませんでした」
ルーシーの炎帝でも燃えない森とかどんな耐性つけてんだ、どっちが化け物だ。
「そう、私も見ていたけど、確かにルーシーちゃんの魔術はすごかった、それでも燃えないように頑丈に作ってあるの、この森」
「だけど……レミルズの魔術で燃えたんだ、私は正直驚いたよ、あんな魔術を使うのは、この世で一人だけかと思ってた……」
「一人だけ?」
「うん、世界最強で最恐の魔術師よ」
「最強で最恐?」
「ええ、この世の魔術をすべて扱えて、それをすべて完璧に扱え、剣術、武術も世界トップクラスの最強、そしてすべての民が恐怖する、魔力量と威圧感、魔物すら近づかない、近づけない、最恐、すべての魔術師が尊敬し、恐怖している魔術師よ」
「そんな人がいるんですか?名前は?」
俺は興味本位で聞いてみた。
「さあね、誰も名前は知らないらしいわ、姿もあまり見たことないとか、まるで童話のようなことで皆からは童話の魔女と呼ばれているの」
「童話の魔女……」
「そそ、私長年生きてるけど、会ったことないのよねえ、女か男かもわかんないし、もし会えたなら名前を教えてもらいたいわね」
「名前……」 キンッ
『ーーー私の名前? ……ーーーーよ! 童話の魔女なんて呼ばれているの!酷くなーい?! 実在するのにね! ねえどう思う?レミルズ君!おーい……ーーーー」
……名前?……知っているはずなのに……会ったことあるはずなのに……覚えてない?……
「おーいレミルズ~?大丈夫かあ?」
「あ……すみません、ボーっとしてました」
「ボーっとするのは爺さんになってからにしなよ~
「エイルーさんはその歳でも現役ですね」
「誰がババアだって?」
「いえなんでもありません、埋めないでください」
ほんとに埋められそうで怖い、でも今回はボディーブローを受けなかった、心を許してくれたのか。
「ま、そろそろお別れね」
「あ、そうですね、そろそろ着きますね」
長い間話をしていたから、気づかなかったが、もうそろそろエイラの国に着く頃だ。
「エイルーさんはこれからどうするんですか?」
「私はすぐに森に帰るよ、燃えた森を修復しないといけないし」
「そうですか……また会いに行っても?」
「もちろん!今度は友達としてもてなしてあげる!」
「ありがとうございます、友達というのは初めてで、嬉しいものですね」
「多分だけど、レミルズってみんなから怖がられているんだと思う」
「僕がですか?」
「うん、レミルズの魔力って多すぎて、抑えきれてないの、今だって禍々しいオーラ出てるよ?」
「え、嘘、ルーシー、叔父さん、そんなオーラ出てる?」
「「出てるな(出てますね)」」
「ほらね、君は見えなくても、他の皆からは見えているんだ、そして怖がっているんだ。
なるほど、それでみんなでいじめにきたのか、怖くなんかないぞ!って感じでいじめてくるのか。
長年の謎が解けたよ、ありがとうエイルー。
「じゃあどうすれば抑えられますかね、これでも抑えているつもりなんですが…」
「これを付けるといい!」ホイッ
「っとと……」
エイルーから渡されたのは指輪だった、真ん中に石のようなものが埋め込まれている
「これは?」
「魔法道具、魔力隠蔽だよ!、これを付けると、自分の魔力を抑え、隠すことができるんだ」
「ほう、抑えて隠す」
「そ、君は学校に通うんでしょ?もし授業とか摸擬戦とかで魔術の手加減できなかったら、生徒達殺しちゃうかもしれないでしょ?だから隠せる、かつ抑えることができるよ」
「いや、殺すわけないじゃないですか……」
「まあ君なら大丈夫だと思うけど、一応…………ね?」
「いや、そんな疑いの目で見ないでくださいよ、これでもルーシーに魔術を教えたのは僕ですよ、抑えてなかったらルーシーもうとっくにあの世ですよ」
「いや、何回か死にかけましたけど……」
「え、嘘」
ルーシーはマジですって顔してる、やばい、大事な妹を俺は殺そうとしたのかい?昔の俺をぶん殴りたいね。
「まあルーシーちゃんはその厳しい鍛錬のおかげでそこまで強くなったんだから、結果オーライってところね」
「はい、お兄様にはとても感謝しています!、お礼に今夜……ブヘッ」
ルーシーが変なことを言うので頭を小突いた
「そんな言葉どこで覚えたんだ、お兄ちゃんとパパはそんなこと教えてないぞ」
「そんな!お兄ちゃんが教えたんでしょ!『俺へのお礼は夜這いで』って!」
「ちょっとやめて!俺そんなこと言った覚え…………あるな!」
「「うわあ(ううん)」」
エイルーとカイエンがドン引きしている、いや、違うんだ、本当にちっちゃな頃、意味も分からず言っただけだから、そんなゴミを見るような目で見るのやめてくださいお願いします。
「ま、まあ兄妹なんだから、まあそんな性癖があるのは仕方ないわ、まあ末永くお幸せに……」
まあ、が多すぎですよ精霊様。
「とりあえずその指輪付けてみて!」
「はい……」
俺は指輪を指にはめた。
「おお……」
確かに魔力が抑えられている……気がする?
「どうですか?オーラ消えました?」
そう聞くと、ルーシーとエイルーは苦笑いしながら。
「「ちょっとだけ」」と
「もっとつけないといけないみたいね」
そういうと懐から、同じ指輪が、9つ出てきた。
「これっていくらするんですか?」
「いいわよ、こんなのデメリットしかない魔法道具だもの」
「でも……」
「じゃあ今度、夜のお相手してくれると嬉しいわ、ここ何万年ぐらい溜まってて……」
「あいにくですが、俺ロリコンじゃないんですよね、残念です、ていうか妹の殺気がすごいので止めておきましょう」
エイルーがそんなこと言うから、ルーシーブチギレじゃねえか、いや何にキレてんだよ。ていうか口調変わってんじゃねえか。
「そ、そうね流石に殺されかねないわ、ささ、早く二つ目をはめて」
そう言われ、二つ、三つ、四つ、五つ、十個と、両手が指輪で埋まった。
「ど、どうだ?」
「ええ、やっと禍々しいオーラがなくなったわ」
「いつも以上にお兄様がかっこよく見えます!」
そうか、禍々しいオーラがなくなったから、俺のレミルズオーラが出ているのか、なんかエロそうだなって思ってしまった俺が怖いぜ、まったく。
「まさか十個も使うとは、まったくお前にはびっくりさせられてばっかりね」
「そうですかね、まあ何はともあれ、ありがとうな、エイルー」
「やっと敬語やめてくれたね!それでこそ友達ってやつだよ、じゃ、そろそろ着きそうだから私は帰るね!」
そういうと、エイルーは羽を広げ、飛び立とうとする。
「おう、今日はありがとうな、また遊ぼうぜ!」
「ええもちろん!でも森は燃やさないでね!」
「ああ分かってるよ!」
やっぱ怒ってんじゃん!、ごめんね!、今度お菓子持っていくから許して……
「あの!……エイルーさん!、お兄様を人間に戻してくれて……ありがとうございます!」
おい誰が元魔王だ、れっきとした人間だぞ、いや確かにエイルーのおかげで魔力抑えられたけど。
ありがたいけど、せめて人間扱いしてくんない?ルーシーたまに毒舌になるよね、うん、そこんとこも好きだけどさ……
「ルーシー!今度遊びにおいで!男の落とし方教えてあげるわ!」
「男(お兄様)……はい!ぜひ!」
え?まじで? ルーシー=男=俺激怒=世界殲滅 あーゆーおーけい?
「そんじゃあねえ!」
飛び立った彼女に手を振り、俺たちはエイラ国に着いた。
ーーーーーーエイルー視点ーーーー
「まったく私の森を燃やせる人があなたのほかにいたとはね」
エイルーは独り言をしていた。誰に?そんなのはわからない。
「あの子の魔力量と技術力はあなたと同等かそれ以上ね」
「しかもあの『青き終末の炎』あなた以外にも撃てるなんてね、しかもあの魔術……かなり威力を抑えて撃っていたように見えた……もし普通に撃っていたら、エイラの森全部焼き尽くされたかもしれないわね」
「あれだけの化け物、見たことがない、あなた以外には……確信したわ……やっぱりあのレミルズって子……あなたが言っていた、愛しの愛弟子なのよね、ていうか名前聞いたことあるし」
「あなたはとんでもないやつの師匠になったわね……あなたは生まれてからずっと弟子なんて取らなかったのにね……あなたが唯一とった弟子……あなたが惚れた男なんでしょ?ショタコンかなって最初はおもったけど。……人には興味も何も持たなかったあなたが、いつも寂しそうな顔していたあなたが、レミルズの話をすると、そこには喜びに満ち溢れた表情をしていたわね……」
そう思いながらエイルーは空を見上げた…………
「あなたみたいに気難しそうな人かと思ったけど、とてもいい子じゃない……妹にも愛されている、とても、あなたそっくりの喜びの顔……でもあなたの話をしだしたら、なんとなくだけど、寂しそうな顔してた……記憶にないみたいだけどね……あなたがあんな”選択”選んじゃったからよ……」
「ねえ……今どこを旅しているの?たまには可愛い愛弟子にでも会いに行ったら? 将来結婚するとか、約束した!って言ってたくせに、早くしないと一番目取られちゃうよ?、きっと大きくなったレミルズを見てまた惚れ直すんじゃないかしら……わたしもちょっとだけいいなあって思ったけど、そんなこと言ったらあなたに焼かれちゃうから言えないのだけど……まあきっと会えるわ、レミルズなら絶対、あなたにまた会いに行くって、なんだか預言者みたいだけどね……わかるんだ、会えるって……そうでしょ?」
「ーーーーラピス…………」
ちなみにこの魔法道具は魔力を1000分の1にする悪趣味な魔法道具ですね、それを10個つけているのでレミルズの魔力量は10000分の1になっております、