第九話 ルーシー・ルミナスの想い
チュン――チュンチュン
「ふわあぁ~よく寝た」
朝日が覗き込み、意識が覚醒したレミルズは、背伸びをする。
昨日、エイラの王都、「エイディシア」に着き、カイエン叔父さんが用意してくれた家にルーシーと二人で住むことになった、カイエンは『若いもんは若いもん同士、ずっこんばっこんしてろい!、そんでもって早く孫の顔が見たいの!』らしい、いい人なのか悪い人なのか分かんないな―――
――いや悪い人だろ!明らかに!。
そういうことでカイエンは、僕たちと違う家に住んでいる、家を二つ購入するとか、どんだけ金あるんだろうと、聞いてみたが、『お主が冒険者になったら、この世界で一番稼ぐだろうからな、その時に返してくれればそれでよかろう」と言っていた、やはり無理をしていたみたいだ、今日からギルドで冒険者を登録しに行く日だ、楽しみすぎて寝られなかったほどだ、お金が手に入ったら、カイエンに返さなきゃな。
「ふみゃあ~おにいしゃまぁ~♡」
そして俺の隣に眠っているのは最愛の妹『ルーシー・ルミナス』だ、美しく艶のある水色の髪、まるでサファイアのような色と輝きを持つ瞳、そして華奢だが、やや大きめの胸、神様の子供と言っても信じてしまうような女性が、一糸まとわぬ、生まれたままの姿で寝ていた。そう『裸』だ。
しかもベッドのシーツには赤いシミが付いていた…………はっきり言おう、本当にごめんなさいと。
それも昨日の夜の事だった――
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「だから、布をだな!着ろ!一応俺も男だぞ!襲わないとは限らないぞ!」
「どうぞ襲ってください!」ドン!
いやドン!じゃねえよ、まじで俺の竜王が起きちまうじゃねえか、耐えろ俺の理性!
「というか今日はやけにスキンシップが激しいな……何かあったか?」
エイラの森の戦闘から、やけにルーシーのスキンシップが激しい
そう言うとルーシーの顔は暗くなる……
「お兄様、少し話を聞いてくれますか?」
ルーシーがいつになく真剣な顔をしている、どうしたのであろうか。こんな顔は何年ぶりだろうか。
「おう、何でも話してみろ」
「…………私、死を覚悟しました……」
「あの時か?」
「はい、正直、今は夢を見ているんじゃないかと思っています…………」
「夢か……」
「はい、私はもう、とっくに亡くなっていて、これは死後の夢なんじゃないかって思っています……」
「はは、死後の夢に俺が出てくるのか……」
「はい、一番幸せな夢を願ったので……」
「それで俺が出てくるのか、嬉しいもんだな…………」
「一番大好きですからね!」
「ハハ!、8年前では聞けない言葉だな!」
「~~~!!それは!忘れてください!」
8年前両親が亡くなる前までは、ここまでべたべたしていなかった、なんなら仲がちょっと悪いぐらいだった、でも両親が亡くなった後は、俺はカイエンと同じ親代わりになってあげた、同じ年齢なのにね。
今思えば、両親が生きていれば、ルーシーとはここまで仲良くなれなかったかもしれない、なんだか歯痒いな、両親が亡くなったからこそ、今のルーシーがいる、天国にいる、お父さん、お母さん、貴方たちのおかげで、ルーシーと愛し合うようになりました、もし父さんがこの場に居たら『はっはっは!いいぞお!このまま既成事実でも作っちまえ!』とか言ってそうだな(うん、言ってると思うよ!)ん?どこからか母さんの声がした。
「でも父さんと母さんが亡くなったからこそ、今のルーシーがあると思うと、感謝しなきゃな、父さんと母さんの分もたくさん生きなきゃダメだな!」
「ふふ……ちょっと不謹慎ですけど、そうですね、天国で見守っててほしいですね!」
『『見てるわよ~(見てるぜ~)!!』』
ん?やっぱりなんか聞こえた?気のせいか
「?なんか聞こえました?」
「気のせいだろ?」
ルーシーが「そうですかね」と言うが、実際のところ見ているんじゃないかって思っている自分がいる。
「お兄様……かっこよかったですよ……駆けつけてくれた姿、まるで白馬の王子様みたいでした!」
「はは、全国の白馬の王子様に怒られそうだな」
「そんなことありませんよ、お兄様は、結構女性から人気あったんですよ?」
「そうなのか?その割にはサリエさん以外話しかけられなかったけどなぁ……」
「仕方ないですよ、あんな禍々しい魔力を纏っている人なんてあんまり近づきたくないですよ、バックさんはアホなので、ただただ気づいてないだけかもしれませんが、サリエちゃんは、前々から話してみたいって言っていたんですよ!」
バックお前アホとか言われてるぞ、まあ否定はしないが、あんな奴狂魔に襲われて喰われちまえばいい。そしてサリエさん、貴女いい人すぎでしょう、彼女が困っていたら、全力で力になろう、うん。
「何ニヤけてるんですか?」
絶対零度のような視線を感じた、あれ?俺ニヤけてた?
「はは、何を言っているんだルーシー、俺が女の子と話せてめちゃくちゃ嬉しいとか思ってんのか?」
「はい」
すげえ即答された。
「まあこの指輪のおかげで魔力抑えられてるから、これでもう人と話せるだろ」
「そうですね、魔力が10000分の1にされているのになぜそんな平気なのか、私には分かりませんが……」
「そうか?いつもと変わらないぞ?」
「これじゃいつまでたってもお兄様には勝てませんね、現に極魔に負けてしまったので、まだまだ実力不足だと感じました。」
ルーシーは悔しそうな顔をするが、一つ間違いを犯している。
「ルーシーお前は何か勘違いをしている、お前が戦っていた、魔物、あれは極魔じゃない『王魔』だ」
「え?!」
ルーシーが驚きの声を上げる、そりゃそうだろう、極魔だと思っていた相手が実は、『王魔』だったんだから。
「ああ、間違いなく王魔だった、『トゥレント』っていう木の魔物の変異種だな」
「変異種ですか?」
「ああ、『エルダートゥレント』にしては強すぎるし『エンシェントトゥレント」なら弱すぎる、『エルダートゥレント』は極魔の中位種ぐらいに判別されているはずだ、それぐらいならルーシーでも倒せる、
そして『エンシェントトゥレント』は王魔の上位種に判別される、それだったら今頃ルーシーはこの世にいなかった、流石に古代からいる、魔物はかなりの実力者じゃないと倒せない、まあ俺がいるから、ルーシーは死ぬことはないんだがな、そして変異種、変異種に間しては、体にある『魔力』が変異し、普段持つことのない能力を持つことがある、あのトゥレントは恐らく再生能力がとてつもなく高いんだろうな、ルーシーの『帝炎』を喰らって、燃え尽きないなんてな、極魔の上位種なら普通に燃え尽きていただろうな。ただ極魔と王魔の壁はとてつもなく分厚いんだ、極魔の上位種が十体集まってやっと王魔の下位種並みの脅威になるんだ、だから誇っていいんだぞ、王魔相手にあそこまで戦えるなんて、十王なんちゃらも王魔相手に勝てるか分からないんだろ?十分なれるんじゃないか?、『全属性の魔術を『帝級』まで扱える奴なんて、『お前』ぐらいだろ』、な?そんな悲しい顔すんな、笑った顔が好きだぞお兄ちゃんは!」
「うぅ、うぐ……ありがとうございますぅ……」
と泣きながら、後ろから俺に抱き着いてくる、しかもまだ裸だ、柔らかいナニかが俺の背中に当たる、俺の理性!!!耐えろ!!!
「お兄様……ちょっとこっちを向いてくれませんか?……」
「え、お前裸じゃん! 無理だって!」
「お願いします……」
震える声でルーシーが言う、まったく甘えん坊め。
「はいはいそれじゃ向きますよ、ほら向きま――ンぐッ!?」
振り向いた瞬間、俺の唇は何かによって塞がれた、言うまでもない、ルーシーの唇だった、目の前にはルーシーの顔がある、真っ赤にしているが、風呂に入っているからか、それとも恥ずかしいからか、はたまた両方か、それにしても……柔らかいな……ちょっと待て!? 冷静になってみろ!? 今俺は何されてる?キスだ!あのキスだ!、しかもファーストキスだ! ひゃっほーい!――じゃねえよ!?
「んっ!」
「んむっ!?」
あろうことかルーシーの舌が、俺の口内を蹂躙してくる、やばい気持ち良すぎて、飛びそう……いい加減、離れないと――――
こいつ?!離す気がねえ!?てか力強すぎて、離れることができねえ!嘘だろ?!どっから出てくるんだこの力、俺より力強い奴なんて、これが愛の力か?!じゃねえよ?!そろそろ息が…………
「んん!くちゅ……ぷはっ!」
「ぷはっ!あぁ死ぬとこだった!じゃねえよいきなりどうした?!」
「お兄様、やっぱり、私は……お兄様しかいません!」
「お、おう?、ん?何が?」
「け、結婚相手としてです!」
「ああなるほど、結婚かあ~――ん?」
今結婚相手って言ったか?
「はああ??!!」
結婚ってあれですよね、夫と妻とかそういう結婚って話ですよね、血痕とか物騒な話じゃないですよね?
「な、なあルーシー……それ本気なのか? 正直俺なんかよりいい男なんていくらでもいるぞ?、今後出会うかもしれない、俺は君の人生を無駄にしてほしくない……自分の人生は自分で選べるんだぞ?、もし8年前のようなことが起こったら、俺は気が狂ってしまうかもしれない、それに俺は……」
「――――『転生者』ですか?」
「え?」
「お兄様が転生者なんて、とっくの前から知っていますよ?」
「え?マジ?」
「マジですよ?」
「なんで、――って、そっか目と髪の色か……」
「そうですね、お母さんは私と同じ、水色の髪色、そしてクソジジ……お父さんは茶色の髪色ですし、たまに意味の分からないこと喋りますし、それを何年もずっと見てきたんですから分かりますよ……」
なんだ、気づいていたのか、そりゃそうか、両親と髪色と目の色似てない黒髪黒目だし、顔は父さんに似てきたけど、あとルーシー、実の父親をクソジジイって言いかけなかったか?まあ否定はしないけど『泣きそうなんだが?!』。
「知ってるなら話が早い、俺は転生者だ、気持ち悪いだろ?前世の記憶なんて持ってきて……そんな男と結ばれたら、なんか……ダメな気がするんだ、だから!「バシッ!」?!?!」
最後まで言い切ろうとした時、頬に激痛が走る、『物理無効』のスキルを持っているのに、なぜか……痛かった……ルーシーが平手打ちをしてきた。
「そんなこと言わないでください!」
「ルーシー……」
「お兄様が、転生者だろうが、女たらしだろうが、スケコマシだろうが関係ありません!」
「おい!、後ろ2つおかしいだろ?!」
「嘘です!、ここに来るときたくさんの女性から見られていたじゃないですか?!、この女たらし!」
「ちっげえよ?!、ていうかいきなりなんで俺みられるようになったんだよ?!」
「そりゃ魔力抑えられて、イケメンが突然町に現れるからですよ!」
「へ??い、イケメン?なんの冗談だ?」
「自覚なしですか……ハア……」
「なんだよ、その自覚なしって……ハア……」
そしてお互いがため息を溢し、見つめ合った、レミルズは『ええいもうどうにでもなれ!』といった感じで、ルーシーと唇を合わせた。
「ん?!」
ルーシーは突然のことで、思考が回らなかった。
(お兄様……ああ!こんなに嬉しいことはありません!)
何秒、何十秒、何分、そんなことはわからない、でも確かにわかる、俺はルーシーを愛していると、家族として、異性として、共に歩んでいきたい、ルーシーとならどこにでも行けるかもしれない、お互いダメなところはあるけど、それはお互いに、補えばいい、そう思うと、俺は、本当にこの世界に転生してきて、父さんと母さんの子供として、ルーシーの兄として、生まれてきてよかったなって本当に感じてくる。
そして長いひと時をいったん終わらせ、ルーシーの顔を見る。
「なあ、ルーシー……」
「ふぁ、ふぁい!」
「俺でいいのか?」
「はい!」
「こんな俺でも?」
「そんなお兄様がいいんです!」
「そうか……ありがとう、お前となら、この先ずっと、大丈夫な気がしてきたよ……ルーシー・ルミナス……貴女を永遠に愛します!」
「ふふっ……私もです、レミルズ・ルミナス……私も永遠に愛し続けます……!」
二人はそのまま唇を合わせ合った
「それじゃあ、続きは、ベッドの上でお願いしますね?愛しのお兄様?」
「え?!……あぁ……うん……分かった」
その日2つの影が1つになっていた。
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というわけですよ、皆さん、いやあ、かわいい恋人ができたものですよ、ありがとう!母さんこんなかわいい子を産んでくれて!『どういたしましてえ~ふふ』。
さて入学試験は明日だから、今日はまず、『冒険者ギルド』に行って……
「ふあぁあ……」
ルーシーが 目を覚ましたようだ、そして、ふと目が合った、ルーシーは若干顔を赤らめた。
「お、おはようございます、お兄様……」
「あ、お、おう……おはよう……」
お互いもじもじしている理由は単純、二人とも裸なのだ、昨夜のことは思い出すだけで恥ずかしいだろう、お互い初めてで初々しく、だが慣れてきた途端に、求め合い、激しくなった、結局夜明けまで致してしまい、二人とも眠り、現在、12時ぐらいだろうか、その時間に起きた。
「おにいさまあ~あさのきす~」
寝起きでボケているのだろうか、まあいいか、かわいいし。
「はいはい、はむ、んむ」
「んむ、ひゃむ~」
いったいどれほど、長い間キスをしていただろうが、名残惜しいが、今日は予定があるのだ、すまないな妹よ。
「あっ(もうちょっと)」
「また夜にな?、ちょっと冒険者ギルドで冒険者登録してくるから」
「でしたら、私も行きます!」
「大丈夫か?その……腰とか」
「~~っ!だ、大丈夫です、昨日は激しかったですけど……キャッ!」
昨夜のことを思い出し恥ずかしさのあまり、ルーシーは顔を赤らめ手で顔を覆う、何がキャ!だよ思い出すのも恥ずかしい。
「じゃあ、まあ、朝食?昼食か、食べたら行こうか」
「はい!旦那様!」
「ぶっ!?、まだ早いです!」
「ふふ、『まだ』ですね!楽しみにしています!」
まったく、付き合い始めたら歯止めがかからないな、まあそこが可愛いんだけどね。
よし!行くか!――――
質問嫁は何人増やす予定ですか?
答3桁は余裕(多分嘘)
てか序盤で結ばれるって早いですね、まあええやん、何年も想い続けてたんだから