2021年7月、歴代最強横綱通算21回目の休場表明でまたも引退を引き伸ばす
「来年の名古屋場所で、本当に最後の進退をかけます。これでダメなら引退します」
2021年7月場所5日目、歴代最強と評される第六九代横綱はそう宣言して、
通算21回目の休場表明をした。
「いい加減にしろよ」「東京オリンピックで土俵入りしたら、いやその前に即引退しろ!」
「モンゴルへ帰れ!」「まだ現役続ける気かよ!」「来年の名古屋って! これからまた一年も
休むのかよ」「鶴竜といいこいつといい、往生際が悪すぎる。こいつらには引き際の美学って
もんがないよな」「給料泥棒!」
「相撲協会は強制引退させろ!」
などなど世間からは今まで以上に無数の苦言が呈された。
振り返れば、去年の11月場所の横綱審議委員会で、休場の多さから引退勧告に次ぐ『注意』
が決議され、今年の初場所時点で進退をかける場所だといわれていた。
その場所は出場する気満々だったが不運にも新型コロナウイルスに感染し、
通算18回目の休場。
3月場所で無事復帰した際は、初場所優勝力士を圧倒し連勝スタートを切ったが、
3日目にして早くも右膝の故障で通算19回目の休場を表明した。
この有様には横審から「今場所中に進退を決してほしい」という意見も出たが、聞く耳持たず
「7月場所は進退かけて臨む」
そう宣言し、夏場所は通算20回目の休場をし(全休)、宣言通り7月場所で復帰した。
だが、その場所も5日目で膝がまだ治り切っていないということで、冒頭で述べた通り
通算21回目の休場表明、つまり現役続行表明をしたのである。
そのおかげで、7月場所後に行われた東京オリンピックで、目標にしていた土俵入りも
果たすことが出来た。
もう一人の第七一代横綱は、それをもって潔く、いやこのお方もかなり引き延ばした感じで
ようやく引退を表明した。
横綱在位場所数、幕内最高優勝回数、通算勝利数、15戦全勝優勝回数、年間勝利数などなど
数々の歴代一位の記録を大きく塗り替え、不滅の大記録とも言われるまさに手のつけようのない
強さだった第六九代横綱も、寄る年波には勝てずここ数年は休場が目立つようになっていた。
ただ、衰えたとはいえ出場さえすれば他の現役力士達を圧倒する強さは三六歳になっても
未だ健在である。
それゆえ、
「こいつまで引退すると横綱不在時代が長く続きそうなんだよなぁ」
「今の大関弱すぎ」
「引導を渡せる力士がいない今の状況じゃねぇ~」
と引退を残念がる意見も中にはあるのである。
「世間ではやめろやめろって言われてますけど、わたしはまだこのまま途中休場挟んだ
中途半端な形で終えたくなくて、時間をかけてもしっかり体を治してね、わたしはまだまだ
やれるぞってとこを見せたくてね。オリンピックの土俵入りも果たして、もういいだろって
言われてますが、また新たな目標も生まれましてね。豊昇龍に、王鵬、琴ノ若。彼らと対戦
するまでは引退出来ないなっと。それに、今まで数々の歴代一位の記録を塗り替えて来たわけ
なんですが、まだ二番目の記録のものもありまして。どうせならそれも一位の記録を狙って
いこうかなっと。まずは魁皇関の幕内在位場所数。来年の名古屋場所まで現役でやれば、
それも塗り替えられますし、それから、羽黒山が37歳2カ月で果たした15戦全勝優勝の
最高齢記録。この記録も万全な状態で臨めば、塗り替えられるんじゃないかなっと。
来年の名古屋場所でいい結果を残せれば、太刀山の38歳9か月での最高齢優勝の更新も、
狙っていけますし」
そう目標を熱く語り、現役続行を宣言したのだった。
「魁皇に失礼過ぎる。魁皇はちゃんと最後の場所までほとんど休場せずに出続けたぞ」
「早く次の横綱出て来いよ」
世間からも苦言や希望、横審からの引退勧告もものともせず。