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私が守るもの  作者: 四ノ宮楓
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確信



 俺たちがダミアン隊長の命令により地上に降りてから、半年が経った。隊長の諜報員から引き継ぎをし、この半年間俺はアッシュと共に特別な天上人であるという疑いのある神崎(かんざき)凛々子(りりこ)を調査し、片時も目を離さずに見張っていた。


 俺たちの任務に成果はあった。まず、彼女が完全にマグア持ちだということが判明したのだ。諜報員たちは俺たちほど強力なマグアを持っていないため確信が持てなかったようだが、彼女を見張り始めた俺たちはすぐに感じた。彼女は多くはないが確実にマグアを持っている、と。


 マグアはオーラのように身にまとっているもので、俺やアッシュのようにマグアが強いやつほどより小さなマグアまで感じることができる。


 

 「でも、地上にマグア持ちがいたならフツーは気づくよねー。凛々子のマグアは言うほど小さくないし。」


 アッシュがそう言ったのをきっかけに凛々子のマグアの成分についても調べた。すると、日本を覆っているマグアと似た成分であることが判明した。


 つまり、彼女は17年間異常状態の日本に溶け込んでいたのだ。イソギンチャクにクマノミが身を隠すように、自分より大きなマグアに同調してそっと隠れていた。まるでデュエルマルナから見つからないように。


 やはり日本に異常現象を引き起こしているのは彼女だろうか。



 その疑いが確信に変わる発見があった。彼女の身辺調査をすると、彼女が今の両親の実子ではないことが明らかになったのだ。17年前に養子として凛々子を引き取った書類が見つかった。


 人間同士から天上人が生まれることはまず無い。しかしこれで親が天上人である可能性も考えられる。




 これだけの証拠があれば彼女を堂々とデュエルマルナに連れていくことができる。17年間地上で暮らしていた彼女には悪いが、天上人はデュエルマルナで暮らすべきだ。でないといつ不都合が起きるかわからない。いや、もう起きているのだ。


 そうして俺がダミアン隊長に連絡をとったのはもう5ヶ月も前のことだ。


 「隊長、神崎凛々子がマグア持ちであり、かつ両親が不明であることが明らかになりました。天上人と考えて間違いないでしょう。

 また彼女の性格、学力、身体能力なども現時点でほぼ情報はとれています。デュエルマルナに連れていく準備を致します。よろしいですか?」


 彼女の詳細についての書類が届いたと思われる頃、電話をかけた。


 「お前らが提出してきた書類は見た。神崎凛々子は天上人だろう。それに、他ならぬお前らが言うんだ、疑いはしねぇ。

 …だがセオドリック、連れてきてはダメだ。最近上が慌ただしい。」


 「研究者たちがようやく地上にマグア持ちがいることに気づいたんでしょうか?」


 「俺もそうだと思ったんだが…。どうやら王族絡みらしい。」

 

 「お、王族ですか!?それは、地上に天上人がいるのは王族の仕業だということですか??」


 今回のことに王族が絡んでくるととても厄介だ。もしかして俺たちは()()()()()()彼女を見つけてしまったのかもしれない。


 確かに王族なら日本をマグアで覆うことも、そこに天上人を隠すこともできるだろう。王族はその生まれ持ったマグア量で力を誇示しているから。


 地球を守る存在である我々は本来()()以外で地上に介入してはならない。王族ならなおさらだ。だがよく考えると、今の彼らにそんな尊い志など残っているだろうか。


 例えば、どこかの王族の子供がマグアを少量しか持たずに生まれたとする。今の権力しか脳にない方たちなら沽券に関わる大問題だ。その上彼らは自分たちの()()が増えたのは人間のせいだと憎んでいる。そんな今の状況に1石投じたい、そう思ったとしたら……やりかねん。


 「…お前が今考えているようなことを俺も危惧してるんだ。それについてはこちらで早急に確認する。だからしばらく神崎凛々子についてはそちらで様子見を続けていろ。」


 「了解。」


 「それと、アッシュに代われ。王族絡みだからな、あいつに聞けるだけ情報聞いとかにゃあかん。」


 「まあ、そうですけど…。あんまり情報を搾り取らないでやってくださいよ。あいつにも、責任や守るものはあるんですから。」


 「わーてるって!相棒思いだなぁ、お前も。ほら、代われって!」


 本当にわかっているのかは疑問だが、ダミアン隊長なら上手くアッシュを傷付けず情報をとるだろう。そういったところであの人は優秀な上司だ。俺はアッシュを呼んで電話を代わった。




 第14部隊の隊員はみな、変わり者だが国で最高級レベルの実力を持っている者たちばかりだ。第14部隊だけにそんなに優秀な人材が集まっていていいのか、と思うが、ひとえに今の王政が腐っているだけだ。優秀な部下は優秀な上司に仕えたがる。ダミアン隊長は信頼されている隊長なのだ。だから今回のような国の最高機密になる情報はいつも第14部隊が1番に得る。


 つまり、今回の神崎凛々子のような特殊ケースでも国は発見が遅れる。


 第14部隊は独立しており、はっきり言って国や王族と折り合いが悪い。よって他の部隊が第14部隊の動きから事態を把握し、国に報告する。そこで国として初めて情報を得る。どうせ自分の保身と私腹を肥やすことにしか脳がない奴らだ。特殊な天上人である彼女のことに気づいたら真っ先に実験に使うに決まっている。





 曲者揃いの第14部隊の中でも断トツでおかしな奴はアッシュだ。王宮内につてがたくさんある。そんなアッシュのおかげで王宮内の高官数名に第14部隊の協力隊員になってもらっている。

 

 信用出来る協力隊員が俺たちに王族絡みの情報を共有してくれる。その情報を元に俺たちは悪商人や治安の問題を解決する。馬鹿馬鹿しいが、こうして今のナナーシュ国はギリギリ成り立っているのだ。





 「はぁ…」


 これからさらに厄介な出来事の渦中に立つのかと重苦しく思いながら、俺は凛々子の見張りについた。


ありがとございました!

次回から凛々子視点です!

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