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私が守るもの  作者: 四ノ宮楓
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派遣


  地球には地上と宇宙の間にもう1つの世界がある。

『ディエルマルナ』。そこは確かに地上とも宇宙とも異なる世界を形成しており、いくつかの国が存在する。


 ディエルマルナは地殻をそのまま拡大したように地上全体を覆っている。そこでは人間と何ひとつ変わらない姿の天上人(てんじょうびと)が地上での出来事を観察しながら、日々過ごしている。


 天上人は寿命が長く、その多くが魔力量である『マグア』を使って魔力を発動する。人間から考えるとまさしく神様のような人たちだ。地上にいる人間はほとんどがその存在を知らないが天空の城、というか天空の世界は実際にあるのだ。


 そんな天上人には1つの大きな使命がある。それは、『地球を保つ』ことだ。


 ディエルマルナは地球の誕生と共に発生し、以来天上人はその使命を果たし続けている。長い歳月をかけ、緻密で壮大な()()ををすることによって。


 彼らの()()は地球が地球の状態を保つようにすることである。そのために最も大事なことが地上の自然がなるべくそのままの形で残ること。精霊たちと協力しながら天上人は日々活動している。


 現在、天上人の1番の悩みは人間による自然破壊だ。人間の文明が進むにつれて、精霊たちが頻繁にディエルマルナに相談にくるようになった。天上人の()()は驚くほど増えた。


 地球上の生命バランスが崩れかけ、今、地球は悲鳴を上げている。自然を愛し、守っていた精霊たちにとってこれほど苦しいことはなく、天上人も人間をよく思わなくなっていった。



 

☆☆☆



 デュエルマルナの一国であるナナーシュ国は日本から南アメリカ大陸の上空にある国だ。そのナナーシュ国の国際管理局第14部隊の隊長室にセオドリックとアッシュは呼ばれていた。


 「おぅ、今日はお前らに重要任務を言い渡すために呼んだんだ。」


 セオドリックとアッシュは隊長であるダミアンの直属の部下だ。特別な任務を与えられて嬉しい反面、普段は陽気な彼が真面目な口調で話すのを聞き、ピリッとした雰囲気になる。


 「重要任務、ですか。」


 「ああ。

 知っての通り、17年前から我々の管轄である日本全土が強力なマグアに覆われている。デュエルマルナから地上へマグアの影響が出るのは()()のときのみ。またマグア持ちの天上人は決して地上へは降りられないため、地上がマグアに覆われている今の状況は有り得ない。」


 「そんな常識知ってますよー。」


 飽きっぽいアッシュが口を挟む。


 「まあ、よく聞いとけ。お前らの任務に必要だから再確認してんだよ。」


 「え、必要なんスか!…どんな任務だろ。ヤバそう。」


 「何人もの調査員が地上へ降りて調査したが、天上人はいない上に、地上のマグアはデュエルマルナのどの国の天上人のマグアとも一致しなかった。

 この異常状態に対して学者たちが考えた可能性は2つ。1つは新種の天上人が地上にいるという可能性。もう1つはデュエルマルナの天上人が何らかの方法で自分のとは違う種類のマグアを日本に送り続けている可能性。」


 「そこは知っています。ただ、地球誕生から今日(こんにち)まで我々天上人に新たな種が生まれたことはありません。そして我々14部隊の目を掻い潜って地上にマグアを送り続けることは不可能です。よってそれらの可能性はどちらも消えることになるでしょう。」


 「その通りだ、セオドリック。だが、新種の可能性は潰しきる証拠がない。そして我々がデュエルマルナから地上に接触しているのを確認できるのは接触時間が3秒を超えてからだ。もし3秒以内で何度も地上にマグアを送っていたら、と考えると2つ目の可能性も消しきれない。まあ、そうだとしても理由はさっぱりわからんがな。」


 「それでー?オレらは何をすればいいんです?」


 ここまではナナーシュ国の者なら誰でも知っている話だ。学校の討論の話題となることさえあるのだから。国の極秘案件を扱うこともあるアッシュやセオドリックにとってはつまらない話だった。


 「もうちょい待てんか、アッシュ。こっからが本題なんだ。

 1週間前、この17年間で初めて日本のマグアが消えただろ?そして3日後にはまた戻った。今回のこの現象でなんと1つ目の可能性がほぼ事実であることが確定したんだ。」


 「「なんですって!?」」


 「オレもさっき知って驚いた。国のではなくオレの手下からの情報だから漏らすなよ。王の耳に入るのも時間の問題だが、あの方が知るのは少しでも遅い方がいい。」


 「もちろんです!しかし、どうしてそれがわかったんです?」


 セオドリックが急かす。


 「いろいろ調べた結果、マグアが消えた時間と海外渡航の関係に行きついたんだ。マグアが消えたちょうどその時間ぴったりに飛行機に乗って日本を離れ、マグアが再び日本を覆ったときに帰国したのはある家族1組だけ。そして、その家族には17歳の少女がいたんだ。その少女は今回が海外初渡航だそうだ。お前らならこれでわかるだろ?」


 「…そんな、ことがあるのか。つまり、隊長はその少女が新種だと?」


 「ああ。彼女に接触した諜報員によると微かにマグアのようなものを感じたと言っていたからな。新種とまではいかなくてもかなり特殊なやつでマグア持ちだろう。少なくとも地上で我々から隠れて17年過ごせる天上人はいないからな。」


 だんだんダミアン隊長の言いたいことが見えてきた。14部隊の任務は地上とナナーシュ国との治安維持だ。マグア持ちの少女が地上にいる可能性があるのならすぐにでも天上人の世界に連れて来なければならない。それも、私利私欲のために乱権する王の支配下におかれる前に。


 「オレ、すごいキョーミあるわ、その子に。不思議すぎない?自分が何者か知ってるのかな?マグアどーしてんだろ?覚醒はしたのかな?だとしたらいろいろな法に触れちゃうなぁー。」


 一気にアッシュがやる気になった。彼は研究者でもある。こういった特別な事象には興味が引かれるのだろう。もちろん、セオドリックも謎多き少女に心引かれていた。


 「よし、2人とも興味あるようだ。んじゃ明日から日本行ってもらうから。」


 ダミアン隊長の命令はいつも急だ。今回は急ぎの案件であるから仕方がない部分もあるが、地上へ降りる申請、少女の情報、荷物準備などやるべきことはたくさんある。


 「やっぱりすぐなんですねー。まあいっか、いつものことだし。それで、その女の子をこちらに連れてこればいいですかね?」


 だてに長くダミアン隊長の部下をしていない。アッシュはテキパキといるものを書き出しながら少女をどうすべきか確認する。


 「最終的にはそうするつもりだ。しかし、なんせわからないことだらけだからな。暫くはその少女の調査、観察をお前らにしてきてほしい。」


 「「了解。」」


 こうしてセオドリックとアッシュは日本に降りることになった。


ありがとうございました!

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