六話 ステータスについて聞いてみた
「助かったよ……アンバーって言ったっけ? 俺はアオイだ」
モヒカン野郎が遠くに行くのを見送った俺は、目の前に割って入ってくれた少女に挨拶をした。少し見下ろすくらいの背の高さ、オレンジがかった瞳の色と同じ色のツインテールの髪を持った可愛らしい少女だ。
「そうよ。アオイでいい?私もアンバーでいいから。でも、少し会話が聞こえたけど、『Lunatic brave online IV』は初めてみたいね。ごめんなさいね。あんなのに初っ端から絡ませちゃって」
右手を頭の後ろに回して、てへへと可愛らしくアンバーは謝った。というか、何故この状況でアンバーが謝るんだ? 助けてくれただけでアンバーは悪いことなど一つもしていないのに……
「ごめんなさいってアンバーは悪くないだろ? 何もしてなかったんだし」
「でも、私の好きなゲームで嫌な思いしたでしょう?」
「まあ、びっくりしたけどあれくらい大丈夫だよ」
俺は笑顔でそう答えた。
理不尽な上司も居たもんな……亀の甲より年の功とでも言うのか? さすがにゲームについて馬鹿にされると頭にくるのは変わってないけど……
「そう、なら良いけど……もし良かったらお詫びにこの『Lunatic brave online IV』の世界を教えてあげるわ」
「そうか。ありがとう。俺の知ってるゲームと違って少し戸惑ってたんだ」
俺は頷きながらそういうと、アンバーも笑顔で頷き返した。
「じゃあ、ちょっとあの雑貨屋の裏に行きましょ。ここじゃさっきの件もあるし注目浴びちゃうから」
と、アンバーは歩き出してしまった。辺りを見渡すと確かに俺たちの方を見ている人も多い。俺は急いでアンバーを追いかけた。
アンバーはすぐ近くの建物の裏に回ると、そこに置いてあった木箱に腰掛けてから、隣をポンポンと叩いた。座れってことか?
そう解釈した俺はアンバーの隣に腰掛けた。
「さて、何から聞きたい?」
「そうだな……とりあえずステータスについて知りたい」
と、俺が口にするとアンバーが驚いた表情で俺に聞き返してきた。
「って初めに説明あったでしょ?」
そういえば最初にステータスについて聞くか尋ねられたな……
「いや、だいたい知ってるからいいかなーって飛ばしました……あはは……ごめんなさい」
俺は頭をぺこりと下げた。アンバーのため息が聞こえる。
「まあいいわ。とりあえず見ながら説明しましょ」
といい、アンバーは指をパチンと鳴らした。
「ああ、私はメニュー画面を開く動作をこれに設定してるのよ。とりあえずアオイは『メニューオープン』っていえばいいわ」
マジか……恥ずいな……俺もあれで開けるように後で設定方法を聞こう。でも、とりあえずメニューを開かないとな。
「メニューオープン!」
お、さっきみたいな半透明な画面が浮かび上がってきた。俺はさっきの要領でステータス画面を開いた。
「開けたみたいね。とりあえずざっとステータスを説明するわね。まず重要なのはSTRね。これは物理攻撃のダメージアップと装備重量に関わってくるわ」
「装備重量?」
俺は聞きなれない言葉に聞き返してしまった。装備重量なんて『Lunatic brave online』じゃなかったしな。
「ええ、そうよ。武器や防具にはそれぞれ重量が設定されているのよ。例外もあるけど、強い武器ほど重いと思っていいわ」
なるほど。カード系のゲームでデッキコストとかあるけど、それみたいなものかな。強いカードはコストが重くて沢山は入れられない。似たようなものかな。
「Lvも上がれば装備重量の上限も増すけど、あとはSTRもそれに関係してる。だから早く強くなるにはSTRをあげるのが主流ね。物理でのDPSを求める猛者はSTR極が当たり前になってるわ。次にINT。これは魔法系のダメージとMPに関係してくるわ」
「それはわかる。でも、装備重量も関係してくるんだろ? INTばかり上げる訳にいかないよなぁ」
「お、ご名答。でも、杖とか魔導具は装備重量が低く設定されている物が多いからSTRに振りすぎなくてもいいのよ。もしくはLvで補うか……」
「つまりINTで強くなるにはバランスよくステータスを上げて、良い武器も装備出来るようにするか、装備重量はLvで補うかか……INT極でも攻略出来るってことか」
「ええ、そうよ。VITも受けるダメージ減るし、HPも増えるから壁役をやりたい人はVIT極だし、AGI極で回避壁なんかをやる人もいる。でも壁役なんかソロ攻略大変だしあまりやりたがる人いないかな。だからこそパーティー組む必要があるくらいのボス戦だと貴重」
俺は何度も頷いた。STR極、INT極、VIT極、AGI極と『Lunatic brave online』の時もそれぞれ楽しんでいる人は居たし、理由は納得出来る物だったから。
あれ……でも……DEXについてはまだだな。
と、俺はアンバーの説明からステータスが一つ抜けていることに気がついた。