97 受付嬢リナ
冒険者ギルドの受付嬢はアンの友達で昨日の歓迎会に出席していた。
「あら、アン。昨日はかなり飲まされていたけど、大丈夫なの?」
「リナ。そう思うなら、周りの人を止めてよ。」
「いや、ごめんごめん。みんなで『アンを酔わせていろいろしゃべらせよう』ってなってたから、止めれなくて。」
「何それ。ひどい。」
「いや、それにしてもアンはお酒強いわね。私達が1杯飲む間にあなたに3杯は飲ませたはずなのに最後まで酔わなかったもの。さすが、マスクデスさんの娘ね。」
「そんなに飲ませてたの。おかげでこっちは二日酔いできつかったのよ。」
「あら、そういう割には元気じゃない。」
「千波矢さんにお薬を貰ったんです。」
アンはそう言って笑顔で俺の顔を見つめる。
「はいはい。お熱いこった。で、二人でどうしたの?」
「初めまして、リナさん。今日からこの町で冒険者として活動しようと思うので、よろしくお願いします。」
俺はそういって冒険者カードを差し出す。アンもカードを取り出し渡す。
「わかったわ。それじゃ確認しますね。」
リナさんはカードを受け取ると手続きを素早く済ませる。
「それじゃあ、カードをお返ししますね。それにしても、ランクEってすごいわね。アン」
「なんか特例措置ってのでこうなったの。」
「特例措置?
・・・
・・・・・・
ねえ。あなた、エストブルクの冒険者ギルドで登録したのよね。」
「そうだけど?」
「もしかして、赤い鬼神ってあなたの事?」
「赤い鬼神ってなんですか?」
「何かね。ランクEの冒険者を拳1発で倒した女の子がいるらしいのよ。」
「へえ、そうなんだ。」
・・・それは完全にアンのことだ。どうやら、アンは忘れているようだが、俺が王都の冒険者ギルドで登録しているときにアンが冒険者の一人に絡まれて、一撃で殴り倒したことがある。次の日、受付嬢にアンが赤い鬼神と呼ばれていることを俺は聞いている。一応、広めない様に言っておいたんだが・・・。アンだとばれないことを祈ろう。
「それにしても、千波矢さんはランクFなんですね。」
「ええ、戦闘は苦手なもので。」
「気を付けてくださいね。アンは普段、優しいけど、怒ったら物凄いですから。」
リナさんの言葉にアンがすぐに反応した。
「ちょっと何てこというんですか。」
「あら、事実じゃない。3年前、あなたをからかったビルを・・・」
「やめてー。」
アンはリナさんの口を物理的に塞いで、喋らせない様にしている。俺はその光景をみて苦笑いをするしかなかった。




