94 二日酔い
お腹が空いた。昨日の歓迎会では代わる代わる人が挨拶に来たため、ほとんど食事をすることができなかった。その代わり、お酒は死ぬほど飲まされた。18歳の俺は日本ではもちろん酒を飲んでいなかった。こちらの世界に来てから少しは酒を飲む機会があったが、こんなに飲んだのは初めてだ。そのため、今は絶賛二日酔い中である。この世界では15歳で成人のため、酒も15歳からOKである。
「なあ、D。二日酔いに効く薬とかあるかな?」
「・・・酔い覚まし薬、高解毒薬、万能薬が効果があります。高解毒薬、万能薬は完全に回復します。酔い覚まし薬は効果が低いです。」
「高解毒薬のレシピは?」
「・・・材料はリース草×2と水が必要です。詳しい調剤の仕方は・・・。」
リース草2本と水か。これなら材料があるな。いくつか作っておくか。俺は魔法の調剤器具と材料を取り出し、高解毒薬を作る。そして薬を服用すると、一瞬で二日酔いから回復する。お腹は空いたままなので俺は食堂に向かう。
食堂では数人の人が食事を取っていた。マーサさんや店員がきつそうに働いている。おそらくお酒が少し残っているのだろう。
「おはようございます。朝食をいただけますか?」
俺がマーサさんに挨拶をするとマーサさんはびっくりしていた。
「あら、大丈夫かい?昨日部屋に戻る時はかなりきつそうだったけど?」
「二日酔いの事ですか?それなら、薬を飲んだら治りました。」
「酔い止め薬かい?よくそれで治ったね。」
「いえ、高解毒薬です。」
「高解毒薬!そんな薬まで作れるのかい。凄腕って手紙に書いてあったけど、本当みたいだね。もし残っていたら、いくつか売ってくれないかい?」
「いくついります?お代はいいですよ。」
「そうかい。助かるよ。それじゃ、3つ貰えるかい?私とアンとそこのチーフ用に。」
マーサさんが指さした方を見るとひと際辛そうな女性が働いている。あの人は確かに必要そうだ。・・・そういえば、マスクデスさんもかなり飲んでいた気がするが。
「旦那さん用はいらないんですか?」
「ああ、あの人は酒好きのドワーフ並みに酒が強いから大丈夫よ。」
「わかりました。」
俺は高解毒薬を3つ渡す。マーサさんはさっそく自分で1つ服用する。そして、チーフを呼んで1つ渡す。彼女もすぐに服用する。二人の顔色がみるみる改善する。
「さすが凄腕の調剤師だね。」
マーサさんは凄く感心している。そして、最後の1つを俺に返してきた。
「えっと。」
「アンに渡してきてくれない?部屋はあなたの部屋の隣よ。その間に二人の食事を用意しておくわ。」




