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神の悪戯に翻弄される冒険者  作者: 佐神大地
第2章
84/330

84 千年前の真実1

「悪いが俺はだいたいは知っている。ここで話を聞くのも面倒なんで、ちょっと散歩に行ってくる。」


 フミヤはそういうと小屋を出ていく。シルビアはやれやれといった顔をして見送る。そして俺たちの方を向き、覚悟を問う。

 どうやらとてつもない秘密が隠されているようだ。もちろん、誰も立ち去らなかった。当然だ。皆、覚悟を決めて、ここまで来ているのだ。俺たちは互いの顔を見合わせて頷き合う。

 シルビアはそれを確認すると語りだした。


「そう、まずは1000年前のことを話しましょうか。勇者アベルは魔王を倒して世界は一見、平和になりました。しかし、魔王の配下の魔人も多数生き残っており、油断のならない状況でした。しかし、勇者アベルは魔王との戦いで大きな傷を負い、もはや戦える状態ではありませんでした。そこで当時の王は彼の功績を称え、北の大地の領主に任命したのです。願わくはそこで平和に暮らしてほしいと。そして生き残った魔人の討伐は勇者以外のもので行うことになりました。そして討伐に最も貢献したのが4英雄と7聖人でした。」


「すみません。4英雄と7聖人とは?」


 ソフィアが話の腰を折って尋ねる。どうやらこの世界の人でも知らないようだ。不思議なこともあるものだ。


「勇者アベルと共に魔王を倒した仲間が4英雄と呼ばれています。最後の戦いに参加はしませんでしたが、勇者の旅に貢献した7名を7聖人と呼び、人々が褒め称えたのです。そして、フミヤは7聖人の一人です」


 フミヤが7聖人の一人。確かにフミヤならあり得る。あいつはその時代に生きていたし、【超越者】のスキルがどれほどのものか分からないが、活躍していてもおかしくないはずだ。


「そして、私は4英雄の一人です。残りの3人はアベルの親友であった魔法剣士ヤクシジ、回復魔法のスペシャリスト神官ルーシャン、当時最強と謳われた魔術師ゴッホです。」


 そういえば、4英雄はレイバッハ家の石碑で出てきていたな。まてよ。ということは・・・。


「それでは、あなたはここで勇者を討伐したんですか?」


 俺の質問にシルビアは首を横に振った。


「確かに、この地にアベルは隠居し、私たちは彼とここで戦いましたが、その表現は正しくはないです。」


 そう言ったシルビアの表情はとても悲しそうだった。



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