83 この地に導かれて
「それで、エクセス。あなた達はなんで勇者について調べてるの。」
シルビアは小屋に入ると聞いてきた。まだ少し、警戒はしているようだ。
「そこの千波矢がリンガルから頼まれたからたからだ。それとシルビア。今はフミヤと名乗ってるんだ。エクセスは止めてくれ」
フミヤはぶっきらぼうに答える。
「分かったわ。フミヤね。それにしても千波矢さん。リンガル様に頼まれたって、本当なの?」
「ああ、アンに憑依したリンガル様に『もうすぐ魔王が復活するから、勇者について調べるように』と直接頼まれた。」
「分かったわ。で、なぜここに来たの?」
「それは我が先祖が残した石碑にこの島で勇者が亡くなったと記されていたからです。」
今度はソフィアが答える。
「我が先祖?もしかして、アベルの子孫なの?そして、そこの剣士。あなたは」
そういうと、シルビアはギルをじっと見つめる。鋭く、射貫くような眼光だ。少し敵意のようなものも感じる。
「あなた、3年前にも討伐に参加してわよね」
「はい、確かに参加してますが?」
「衝撃って魔法を使うアンデッドと戦ったでしょう。」
その言葉にアンが反応した。
「ちょっと待ってください。そんなアンデッドがいるはずないです。衝撃は神官の魔法ですよ」
そう、衝撃は高位の神官のみが使える攻撃魔法だった。それを使えるアンデッドがいるとすれば、高位の神官がアンデッドになったということだ。
「衝撃・・・。
衝撃・・・。
・・・
ああ、最後に戦ったアンデッドが使ってた。えらく強かったやつだ。」
ギルは記憶の糸を手繰り寄せ、思い出したようだ。その言葉を聞いてアンは愕然としている。
「そんな。嘘です。」
「アンさん。そのことについては後で説明してあげる。ギルさん、あなたは彼に勝ちましたよね。」
「はい、止めまでは刺せませんでしたが、かなりのダメージを与えて撃退した記憶はあります。」
シルビアは目を閉じると大きく深呼吸をする。気持ちを落ち着かせているようだ。
「どうやら、あなた達はこの地に導かれてきたようね。そうならば、私も覚悟を決めないといけないようね。・・・皆さんにも覚悟があるなら、すべてを語りましょう。申し訳ないですが、覚悟の無い人はすぐにここを出てください。」
シルビアは目を開くと俺たちを見渡して、そう言った。




