82 謎の小屋
そこを見つけたのは偶然だった。ギルが足を滑らして1メートルほどの小さな崖を滑り落ちたのだった。それを助けに降りていくと小さな獣道を発見した。この先はまだ調べていなかったため、慎重に歩を進めると、小さな泉を発見できた。そして、その横に小さな小屋があった。
「なあ、何でこんなところに小屋があるんだ?」
始めに発見したギルの疑問の声ももっともだ。通常、家はヒトが住んでいないとダメになる。しかし、この小屋はしっかり手入れをされているのだ。このアンデッドが跋扈する島にヒトが住んでいるのか?俺たちは慎重に小屋に近づいていく。いままで、アンデッドにしか出会わなかった。これは初めての手がかりとなるかもしれない。あと少しで、入り口にたどり着こうかという時、後ろから声が聞こえた。
「私の家に何か用かい?」
振り向くとそこには一人の女性が立っていた。年のころは20代後半といったところだろうか。金髪碧眼で長い髪を後ろで束ねている。鎧は着けていないが、腰には見事な剣をつるしている。剣士なのだろうか。その動きも大変見事なものだ。
「俺たちは勇者について調べるためにこの島に来たんです。」
俺の言葉に女性が急に殺気を放ち出した。凄まじい殺気だ。
「どこで勇者のことを聞いたのか知らないが、覚悟はあるんだろうね。勇者について調べるのは禁忌だよ」
このままでは間違いなく戦いになる。そして、戦いになったら間違いなく俺たちは負ける。
「おい、シルビア。久しぶりだな。」
フミヤの言葉にここに居る全員が驚く。フミヤは女性をシルビアと呼んだのだ。知り合いだろうか。
「あんた、何者だい?・・・その銃、もしかしてエクセスかい。久しぶりだね。」
殺気がなくなると女性はにこやかに笑顔を返してくる。殺気がなくなり緊張の糸が切れたのか、フミヤ以外、全員その場に座り込む。
「なんだい、情けないね。この程度の殺気で参るのかい?よく勇者を調べる気になったね。」
シルビアさんは呆れていた。「勇者を調べることは禁忌」とはどういうことだろうか。
「で、シルビア。なんでお前がここにいるんだ?そして、その体はどうしたんだ?」
フミヤの問いにシルビアの表情が曇る。
「まあ、立ち話もなんだし、入りな。」
そういうと、彼女は小屋に入っていった。




