81 人生初の体験
「ふう、疲れた。久しぶりに暴れたな。」
フミヤは満足そうに帰って来た。しっかり遊んできた子供の様だ。少し疲労の色は見られるが、大きな傷は見当たらない。
「フミヤさん、お怪我はないですか。」
アンはフミヤに近づいていくと回復魔法をかけている。小さな傷でもあったのだろう。まあ、当然か。500匹のアンデッドと戦ったんだ。無傷の方がおかしい。
「フミヤ殿、ご苦労様でした。」
クリス王子が近づいてくる。
「おう、王子か。これで弾代くらいは働けたか?」
「ええ、おかげで騎士たちの休憩する時間が稼げそうです」
「そりゃよかった。これで30000ゴールドはチャラでいいな」
「ところで、あなた達はこれからどうするつもりですか?」
クリス王子が俺たちに聞いてきた。そう、この島が勇者の最後の地ならば、勇者の秘密を探らないといけないのだが、はっきり言ってかなり危険なところだ。俺に探検は無理ではないだろうか。しかし、他に手掛かりはないし・・・。
「大丈夫です。私がお守りしますんで行きましょう。千波矢さん」
迷っている俺にアンが自信満々に言ってきた。
「そうだな。気は進まないがこのメンバーならなんとかなるだろ」
ギルが周りを見ながら賛同する。ソフィアさんも頷いている。フミヤは・・・椅子に座って寝ている。いつの間に・・・。
寝ているフミヤを起こして、俺たちは東に進んでいた。そして俺は人生初の体験をする。そう、アンデッドとの戦いだ。実際にゾンビやスケルトンを目の前にすると他のモンスターにはない嫌悪感に襲われる。
まず、見た目だ。どうしても人間に似ている分、気持ち悪さが増す。さらに匂いだ。これが死体の匂いなのだろうか。鼻に突くような嫌なにおいだ。そして、その生命力だ。アンデッドは少々の攻撃では死なない。さっきはゾンビの頭を棍棒で吹き飛ばしたが、その後もしばらくは襲ってきた。一体どうなっているんだ?
・・・もう嫌だ。何度もそう思わずにはいられなかった。結局、一日目は島内を散歩して、ゾンビやスケルトンに襲われただけだった。そして、何の収穫もないまま拠点に戻らざるを得なかった。
探索二日目、俺は憂鬱になっていた。アンの聖なる光とソフィアの魔法でアンデッドのほとんどは問題なく倒すことが出来た。それでも、物陰から襲ってくるゾンビたちを俺も時々相手にしないといけなかった。ホラーゲームの主人公になったかのようだ。今回は昨日より更に奥まで探索している。そのせいか、昨日よりすこし強いアンデッドも出現し始めた。もう諦めようかと思った時、俺たちはついに手掛かりを発見した。




