77 アンデッドの異常増殖
「クリス王子、お久しぶりでございます」
「はじめまして、ソフィア・レイバッハです」
クリス王子の突然の訪問にギルとソフィアは驚きつつも挨拶をする。
「ギル、久しぶりだな。そしてソフィアか。クリス・スプレンドールだ。」
クリス王子は実に短い返事を返す。
「兄さん、どうしたんです」
「千波矢殿に用があったんだが、いっしょには来てないみたいだな」
クリス王子の言葉にギルが反応する。
「すみません王子」
ギルの突然の謝罪に王子は呆れ顔になる。今回の状況でギルが謝る必要はどこにもない。責められたと思ったギルが謝っているだけだ。
「・・・ギル。相変わらずだな。お前は剣の腕は一流なのに勿体ない。その精神的弱さがなければ、龍王騎士団に推薦できるのに」
クリス王子の言葉にソフィアは驚く。龍王騎士団とはこの国では最強の騎士団である。構成員数はジャスト百名である。そうこの国の騎士トップ100と言ってもいい存在である。クリス王子はギルをそれに推薦するといっているのだ。ギルはそんなに強いのだろうか。
「まあいい。東の王家の別荘があった島の件だが、おそらくアンデッドの島のことだろう。王国の東にある島で別荘があったとしたら、そこしか考えられん。」
「アンデッドの島。もしや、あの島ですか。」
ギルの表情が真っ青になる。3年前、アンデッド掃討作戦が決行された島だ。ギルの初陣はまさにこの作戦だった。新入りとして食料輸送体として参加した。この作戦は大敗だった。凄まじい数のアンデッドが現れて、部隊が壊滅状態になったのだ。ギルも食料輸送中にアンデッドの大群に襲われた。ゾンビ、スケルトンなどの下級アンデッドだけでなく、デュラハンやワイトなどの上位アンデッドも含まれていた。特に最後に倒したアンデッドは非常に強く、もう2度と戦いたくないと思ったほどだった。
「そうだ。あの島だ。」
クリス王子の言葉に絶望する。勇者のことを調べるために、またあの島に行かないといけないのか。その様子を見たクリス王子が
「実はな。そのアンデッドの島の対岸に位置する街でモンスターの被害が報告されているんだ」
クリス王子はそこで一息つくとギルの顔をじっと見る。
「王子、もしかして・・・。」
ギルは嫌な予感がした。
「ああ、アンデッドによる被害だ。恐らくアンデッドの島のアンデッドの異常増殖だろう。そこで、討伐作戦が決行されることになった。ちょうど、お前たちがその島を調べているそうなので伝えにきたんだ」




