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神の悪戯に翻弄される冒険者  作者: 佐神大地
第2章
76/330

76 ギルとフィル王子

「なあ、ギル。ところで隣のお嬢さんは誰だ?彼女か?」


「ああ、こちらはソフィア・レイバッハ様。リコリスの領主の妹君様だ。」


 ギルの返答を聞いて、衛兵の顔色が変わる。


「失礼しました。お許しを」


 衛兵は直立不動の姿勢をとる。額から冷や汗が流れ落ちている。


「構わないわ。今回は知らなかったことだし、不問にします。ギルさん、行きましょうか。」


 ソフィアはそういうと歩き出した。その顔は少し赤くなっていた。





「ギル、久しぶりだね。元気みたいだね。」


 フィル王子は自室でギルが来るのを待っていた。


「王子も元気そうでなによりです。」


「ところで、そちらの女性は?」


 フィルはソフィアを向いて尋ねる。


「王子、初めまして。リコリスの領主の妹、ソフィア・レイバッハと申します。」


 ソフィアが自分で自己紹介する。


「リコリス?・・・ああ、北部の都市ですね。僕は第二王子のフィル・スプレンドールです。よろしく。」


 王子の方もあらためて挨拶を返す。


「王子、何か御用が御有りなのですか?」


「いや、ギルの顔を久しぶりに見たかっただけだよ。君が帰ってきそうだったから、衛兵に伝言をしていただけだよ。ギル達の方こそ、何か用があるんじゃないの?」


「そのことですが・・・。」


 ギルはフィル王子にレイバッハ家の石碑の内容について知らせる。


「さすがに1000年前のことだからね。僕はしらないな。資料室になにか資料が残っているかもしれないな。調べさせるよ。ちょっと待っててね。」


 王子はそういうと従者に指示を出す。従者は急いで部屋を出ていく。俺たちは従者待ちになってしまった。


「ギル、千波矢さんとアンさんはどうしたの?」


「二人は教会に行ってます。」


「教会?」


「千波矢が気分が優れなかったので」


「病気なの?すぐにお見舞いに行こう」


 フィル王子がとても慌てている。千波矢を心配しているんだろう。そういえば、一緒にクレープを食べて仲良くなっていたな。あの時、千波矢は女装していたが。


「いえ、馬車酔いです。」


 俺の説明に王子は一瞬思考が止まっていたが、すぐに安堵の吐息をもらす。


「それにしても、馬車良いか。


 王子はそういうと笑い出した。・・・ツボにはまったみたいだ。




 王子にせがまれて、王都を出てからのことを王子に話していると、先ほど出て行った従者が帰ってきた。


「王子、先ほど調べるように言われた東の島の別荘の件ですが、場所がわかりました。それと・・・」


 従者はそういうと、扉の方を向く。そこにはクリス王子が立っていた。



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