76 ギルとフィル王子
「なあ、ギル。ところで隣のお嬢さんは誰だ?彼女か?」
「ああ、こちらはソフィア・レイバッハ様。リコリスの領主の妹君様だ。」
ギルの返答を聞いて、衛兵の顔色が変わる。
「失礼しました。お許しを」
衛兵は直立不動の姿勢をとる。額から冷や汗が流れ落ちている。
「構わないわ。今回は知らなかったことだし、不問にします。ギルさん、行きましょうか。」
ソフィアはそういうと歩き出した。その顔は少し赤くなっていた。
「ギル、久しぶりだね。元気みたいだね。」
フィル王子は自室でギルが来るのを待っていた。
「王子も元気そうでなによりです。」
「ところで、そちらの女性は?」
フィルはソフィアを向いて尋ねる。
「王子、初めまして。リコリスの領主の妹、ソフィア・レイバッハと申します。」
ソフィアが自分で自己紹介する。
「リコリス?・・・ああ、北部の都市ですね。僕は第二王子のフィル・スプレンドールです。よろしく。」
王子の方もあらためて挨拶を返す。
「王子、何か御用が御有りなのですか?」
「いや、ギルの顔を久しぶりに見たかっただけだよ。君が帰ってきそうだったから、衛兵に伝言をしていただけだよ。ギル達の方こそ、何か用があるんじゃないの?」
「そのことですが・・・。」
ギルはフィル王子にレイバッハ家の石碑の内容について知らせる。
「さすがに1000年前のことだからね。僕はしらないな。資料室になにか資料が残っているかもしれないな。調べさせるよ。ちょっと待っててね。」
王子はそういうと従者に指示を出す。従者は急いで部屋を出ていく。俺たちは従者待ちになってしまった。
「ギル、千波矢さんとアンさんはどうしたの?」
「二人は教会に行ってます。」
「教会?」
「千波矢が気分が優れなかったので」
「病気なの?すぐにお見舞いに行こう」
フィル王子がとても慌てている。千波矢を心配しているんだろう。そういえば、一緒にクレープを食べて仲良くなっていたな。あの時、千波矢は女装していたが。
「いえ、馬車酔いです。」
俺の説明に王子は一瞬思考が止まっていたが、すぐに安堵の吐息をもらす。
「それにしても、馬車良いか。
王子はそういうと笑い出した。・・・ツボにはまったみたいだ。
王子にせがまれて、王都を出てからのことを王子に話していると、先ほど出て行った従者が帰ってきた。
「王子、先ほど調べるように言われた東の島の別荘の件ですが、場所がわかりました。それと・・・」
従者はそういうと、扉の方を向く。そこにはクリス王子が立っていた。




