75 ソフィア、ギルを見直す
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ギルとソフィアは王城に向かって歩いていた。ソフィアは貴族としての教育は一通り受けている。そのため、それ相応の対応もできるのだが、あまり好きではなかった。兄が後を継ぐことが決まっていたこともあって、貴族の世界と距離をとることができた。だが、今日は流石にそういう訳にもいかない。何しろ自ら王城に赴き、王子と会うのだから。
なぜ、千波矢さんは私とこの男だけにこの役を任せたのだろう?
ソフィアは隣を歩くギルを見ながら疑問に思わざるえなかった。彼は元騎士であったことは聞いている。確かに王城についてはそれなりに知っているだろう。だが、18という年齢から、それほどの地位があったとは思えない。あまり役には立たないだろう。したがって、私が頑張らねばならない。胃に穴があきそうだ。本来ならば、フミヤ様が同行すべきなのだが、王都に入ってすぐに逃げられてしまった。
「ソフィアさん。どうかされたんですか?」
ギルはソフィアに尋ねた。ギルは久しぶりの王城で少し浮かれていたのだろう。それが、プレッシャーを受けているソフィアの気に障ったのだが、もちろんギルは気づかなかった。
「いえ、大丈夫です」
ソフィアはギルの能天気さが羨ましかった。大丈夫ですと言ったが、城門が近づいてくるにつれて心臓の鼓動がバクバクしていく。そして、遂に城門の前に到着した。
「私はレイバッハ家・・・」
ソフィアが衛兵に訪れた目的を説明しようとすると、衛兵の方から話しかけてきた。
「おう、ギル。久しぶりだな。お前が首になって以来か」
「俺は首になったんじゃない。特命を与えられたんだ。」
「そうか?粗相をして土下座をして謝ってた、って聞いたけど。」
衛兵はニヤニヤしている。おそらくある程度事実は知っているのだろう。事実であるには違いないので、ギルは否定できなかった。
「まあ、それは置いといて、クリス王子に会いたいんだが、会えるかな?」
ギルは話を逸らして、用件言う。それを横で聞いていたソフィアが唖然とする。ソフィアからすると不敬罪に問われてもおかしくないことを平気で言っているのだ。
「クリス王子か。確か今日はいらっしゃるはずだ。だが、その前にフィル王子のところに先に伺え。今朝、王子からお前が来たら呼ぶように言われてるんだ。」
「フィル王子から。わかった、先に伺おう」
ソフィアは驚くことしかできなかった。クリス王子にフィル王子。しかもフィル王子には呼ばれている?考えれば考えるほど訳が分からなくなる。
「あの、ギルさん。王子様とはお知り合いなんですか?」
「ああ、千波矢と旅に出る前はフィル王子の護衛だったんだ」
(フィル王子の護衛。うそ、本当に?あのドジなギルさんが?でも剣の腕はすごいわよね。)
更に混乱したソフィアだったが、ちょっとギルを見直そうと思うのだった。




