74 気分鎮静化《リラックス》
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「ギル、ソフィアさん、すみませんが王宮での情報収集お願いします。」
「おう、任せておけ。」
「わかりました。」
そういうと、ギルとソフィアは王宮に向かう。俺は馬車による疲労が残っているので、アンと一緒に教会に行って、休憩させてもらうことにした。ついでに何か情報がないか聞いてみることにしようと思う。フミヤは「久しぶりの王都だ。ちょっと遊んでくる。夜までには教会に行く」と言ってどこかに消えていった。
俺とアンは教会に行くとリリアさんが出迎えてくれた。
「アン、千波矢さん。久しぶりね。元気・・・じゃないみたいね。どうしたの?」
「馬車の旅が思ったよりもきつかったもので・・・」
「馬車の旅がきつかった?ああ、酔ったのね」
リリアさんはそう言うと何やら魔法を掛けてくれた。すると、吐き気などがなくなった。
「どう?気分は良くなった?気分鎮静化って魔法よ。」
「よくなりました。ありがとうございます。」
俺がお礼を言うと、リリアさんは「どういたしまして」と言い、アンの側に近づく。
「アン。これくらいの魔法使えないと嫌われちゃうわよ。」
リリアさんは意地悪そうにアンに囁く。この人は相変わらずだな。
「えっ。」
瞬間、アンの表情が暗くなる。そして「嫌いにならないで。」とばかりに俺を見つめてくる。いやいや、これぐらいで嫌いになりませんよ。
「アン。心配しないでも教えてあげるわ。」
リリアさんは笑いを堪えながら、すばやくフォローする。
早速、アンはリリアに気分鎮静化を習っている。どうやら簡単な魔法ですぐに覚えれるそうだ。アンは真剣な表情だ。
「で、あなた達は今、何を調べてるの?」
リリアさんが俺に聞いてきた。俺はリコリスでの話を伝える。
「王国の東の島の別荘?」
リリアさんが何か考え込む。
「何か知っているんですか」
「別荘は知らないけど、アンデッドの島なら知っているわよ」
「アンデッドの島?」
「ええ、王国の東にある島よ。いろいろなアンデッド系モンスターが生息しているの。数年前に浄化作戦が決行されたけど、失敗したのよ。」
「怖い場所ですね」
「もしそこが目的地なら聖なる光って魔法が必要よ」
「その魔法も使えないです」
魔法の練習をしていたアンが気まずそうに呟く。この世の終わりみたいな顔をしている。
「当たり前でしょ。聖なる光は見習いが使えるような魔法じゃないわ。上位神官か聖堂騎士団になって、始めて習う魔法よ。あなたはまずは気分鎮静化の練習よ。」
リリアは呆れ顔であった。しばらくして、アンは気分鎮静化を修得した。アンが「これで馬車も大丈夫ですよ」と笑顔で言ってきたが、「馬車は出来れば御免被りたい」と思ったのは秘密だ。