72 魔術師の仲間
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「ゲオルグ。伝えられているのはこれだけか?」
「後は『代々当主のみに伝えよ。然るべき時にこの石碑の内容が必ず必要になる。』という口伝だけです。」
「つまり、お前は今が然るべき時だと思ったわけだな。」
「はい。以前からこの石碑の内容には秘密があるとは思っておりました。初代が勇者様だったのなら、その秘密は勇者についてか魔王についてかであると考えるのが自然です。リンガル様の名により勇者について調べる使徒が現れたのなら、お伝えするのは当然です。」
「なるほどな。確かにアベルは勇者の名だ。この地方の領主になった時にレイバッハの家名を与えられたのなら、初代が勇者で間違いないだろう。」
「それにしてもこの文章、どこか変じゃないですか?」
アンが石碑を読みながらつぶやく。確かに読んでいて、何か違和感を感じる。最も、俺は国語が苦手だったので、それが何かは分からない。
「確かに初代が勇者であることも伏せられてますしね。」
ギルも何か引っかかるようだ。しばらく、あれこれ意見が出たが結論は出なかった。
「とりあえず、次の目的地は王都だな。この島の場所を調べるなら、王家に聞くのが一番だな。」
俺の言葉に全員が頷く。他に行く場所が思いつかない。
「千波矢様。フミヤ様。孫娘のソフィアをお供にお連れください。まだまだ未熟ですが、魔術師としてそれなりの実力は有しております。決して皆さまの足手まといにはならないでしょう。」
ゲオルグからいきなりの提案してきた。ソフィアさんに相談しなくていいのだろうか。だいたい伯爵家の子女を危険な旅に連れて行ってよいのだろうか?
「私からもお願いします。祖先がなぜこの石碑を残したのかは分かりませんが、何か重要な意味があるはずです。子孫の一人として、私は是非この謎に挑みたいです。」
ソフィアの顔は真剣だった。真っすぐに俺の目を見据えている。彼女の決意のほどが伝わってくる。
「危険な旅ですよ。」
「覚悟はしております。」
「わかった。これからよろしく頼む。」
「ありがとうございます。」
ソフィアが笑顔で微笑んでくる。これで旅の仲間がさらに一人増えて、5人となった。それにしても、魔術師の仲間か。できれば、魔法を教えてもらいたいな。
「今日はもう遅いので、出発は明日にすると良いでしょう。今日は部屋を用意しましたので、ゆっくりお休みください。」
ゲオルグの言葉に俺は心の底から喜んだ。何しろ、エルフの里からリコリスまでの5日間、ずっと野宿だったからだ。今日は久しぶりにゆっくりベットで寝ることができるからだ。