7 D
気がつくと俺は暗闇の中に居た。地面や壁は岩で細長い通路のようなかんじだ。
「どこだ。ここは?」
俺は大神殿に転移される予定だったはずだ。ここはどう見ても大神殿には見えない。
原因はたぶんラインハットが呪文の途中にしたクシャミだな。
さて、とりあえず灯りが欲しいところだが、何も持っていない。
どうしよう。
「そうだ。【大いなる辞典】で調べれないか。
・・・
・・・ ・・・
どうやって使うんだ?」
「普通に聞いてくれれば答えます。」
突然、機械的な音声が頭に響いた。
「そ、そうか。それじゃ、現在の場所は?」
「・・・王都エストブルクから東に100キロの洞窟の中です。」
「出口までの経路は?」
「・・・この洞窟はマッピングされていないため、わかりません。」
微妙に使えないな。この辞書。
「現在の状況で俺が灯りを付ける方法は?」
「・・・灯りの魔法を唱える。魔法の唱え方は魔力を右手の掌に集めて、『灯りよ』と唱えるだけです。」
「ライト」
言われたとおりにやってみたが駄目だった。だいたいどうやって掌に魔力をあつめるんだ?
まあ、それらしいことをどんどんやってみるか。
・・・
・・・・・・
「灯りよ」
10回目にしてやっと呪文に成功した。掌に明るい光が灯る。
ラインハットの言っていたようにこの世界では俺でも魔法がつかえるようだ。
周囲を見てみると、やっぱり岩でできた細長い洞窟だった。
あとはここから脱出だ。
「なあ、ここから外に出る方法は?」
「・・・歩いて外に出る方法が確実です。」
どうやら歩いて出るしかないようだ。
「なあ、ところでお前のことはなんて呼べばいい?」
「私は【大いなる辞典】です。」
「いや、そうじゃなくて」
確か辞書はディクショナリーだったはずだ。スペルはDICTIONARYだったはず。
「なあ、お前を呼ぶとき、Dって呼ぶから。」
安直なネーミングだっただろうか。
「・・・わかりました。」
こうして異世界でDが仲間に加わった。