69 勇者の情報は途絶えて・・・
「えっと。なぜ、勇者様についてのことを当家にお聞きになるんですか?」
ソフィアに勇者について聞いたところ、帰って来た返事がそれだった。
「なぜって、お前達は勇者の子孫だろ。」
「えっ?」
どうやら知らなかったようだ。フミヤが1000年前のことを伝えていくが全く知らない感じだ。
「確かに当家は1000年前から続く家ですが、勇者の家系という話は聞いたことがありません。」
「それでは、勇者が隠居した別荘のある島の心当たりとかはないですかね?」
「そもそも、当家の領地には島はないですね。」
手がかりはなかった。1000年も経っているのだ。情報が途絶えていてもしかたない。
「そろそろ、夕食の準備ができます。食事にしましょうか。」
ささやかな夕食会が開かれた。夕食会には6人分の席が用意されていた。おれたち4人とソフィアさんとあと一人は・・・あの馬鹿領主?。
しばらくして現れたのは、馬鹿領主ではなく、白髪の老人だった。
「おう、もしかして、ゲオルグの坊主か。久しぶりだな。」
「お久しぶりです。フミヤ殿。60年ぶりでしょうか。それと流石に坊主は止めてください。」
「もうそんなに経つか?・・・確かに、前あった時はこんなに小さかったよな。」
フミヤはそういうと、膝ぐらいのところを指差す。
「流石にそこまで小さくはなかったですよ。」
二人の会話を聞いて、ソフィアは不思議がっていた。
「あの、おじいさま。フミヤ様とはお知り合いなんですか。」
「ああ、私のスキル授与式の時にお祝い来てくださったんだ。当時はエルフの里とは交流があったのでね。」
「そうだ、ゲオルグ。お前は勇者について何か伝え聞いていないか?」
その言葉を聞いた、ゲオルグさんの顔色が変わる。
「勇者の何をお調べですか?」
老人とは思えないほどのプレッシャーを感じる。先ほどの丁寧な口調な老人と同一人物とは思えない。どうやら何かを知っているようだが、このままではまずい。少なくともフミヤに任せたら、事態が悪化しそうだ。仕方ない。俺が説明するか。
「あの、ゲオルグさん。私は千波矢といいます。」
俺が突然話しかけるとゲオルグは俺を睨みつける。
「ほう、あなたが例の使徒様ですか。」
明らかに敵意をむき出しにしている。余程何か知られたくない秘密があるのだろうか。
「我々は新たな勇者を探しています。リンガル様のお言葉で魔王の復活が近づいています。」
俺の言葉を聞いたゲオルグが驚きの声を上げる。
「魔王が復活。そんな情報は入ってきてないぞ。」
「おそらく、クリス王子が情報操作をしているんだと思います。」
俺はゲオルグにリンガル様の言葉を伝えた。最初は疑っていた彼も、話を聞くうちにだんだん表情が真っ青になってきた。話を聞き終わった彼はポツリと一言呟いた。
「あれは、そういうことだったのか。」




