63 神秘の秘薬
次の日の朝、俺たちは再び最長老、フミヤさんの家に呼ばれていた。俺たちの他にも数名のエルフが呼ばれている。
「千波矢。一つ頼まれてほしいことがあるんだが、いいか。」
「はい、できることなら。」
フミヤさんには世話になった。同郷?ということもあるので、できれば手助けをしてやりたい。
「神秘の秘薬を作ってもらいたいんだ。」
「神秘の秘薬?」
「ああ、一時的にエルフに大いなる力を与える薬なんだが、この里では600年以上前に作り方が失われてな。神秘の秘薬はエルフにとって外敵から身を守るための切り札なんだ。」
そういうことなら、是非とも作らないと。
「なあ、D。神秘の秘薬の作り方、知ってるか?」
「・・・神秘の秘薬、ランクDの調剤です。作り方は・・・。」
さすがはD、知っていた。材料もこの森の中で手に入るものばかりだった。フミヤさんに材料を伝えると、すぐに用意された。
さて、問題は魔法の調剤道具をエルフに見せていいかである。悩んでいるとフミヤさんに表情を読まれたようだ。「千波矢。その部屋を使え。他のやつは除くな。」と空部屋を使わせてもらえてた。
魔法の調剤道具の力はやはりチートだった。一発で完成することができた。とりあえず、3つほど作る。フミヤさんの部屋に戻り薬を渡すと、周りにいたエルフが驚いていた。あるものは疑惑の目を向けていた。当然だろう。普通に作ったら一日仕事のはずた。
「さすがだな。いいできだ。これなら問題ないな。」
フミヤさんは神秘の秘薬を見ながら満足そうに頷いている。
「本物なのですか。」
疑惑の目を向けていたエルフが耐えきれなくなって聞いてきた。
「ああ、間違いない。」
「しかし、神秘の秘薬はそんなに簡単にできるものなのですか。」
「それは本人に聞いてみろ。」
エルフ達が俺の周りに集まってくる。
「普通にやれば一日掛かると思います。俺は特殊な作り方をしているので・・・。」
上手く誤魔化せただろうか?
エルフの一人が恐る恐る聞いてきた。
「もしかして、特殊なスキルをお持ちなのですか?」
「・・・ああ。そんな感じかな。」
正確には特殊な道具なのだが。それを聞いたエルフ達が全員頭を下げてきた。
「我々は、この里の調剤師です。是非とも、レシピをお教え下さい。」
どうやら高レベルの調剤師と思われたようだ。まあ、いいか。俺はレシピをお教えると皆一様に喜んだ。
「これで俺も旅に出れるな。」
突然、フミヤさんが宣言した。周りのエルフ達もおどろいている。
「え?フミヤさん、どこかに行かれるんですか?」
俺が尋ねると呆れた顔をして俺を見る。
「何を言ってるんだ。千波矢、お前たちな旅に同行するんだよ。」
「聞いていないんですが。」
「こんな面白そうなことに首を突っ込まずにいられるか。これは決定だ。」
いやいやいやいや。どうしてこうなった。向こうではエルフの人たちが喜んでいる。
「千波矢さん。フミヤ様のことよろしくお願いします。ちょっと破天荒な性格ですが、素晴らしいお方です。」
なんか押し付けられている気がする。




