62 最長老の秘密
次に調べる場所は決まったが、一つ疑問が出てきた。この最長老。何者だろうか?
本来、300年ほどの寿命しかないはずなのに、1000年以上生きている。更に、リンガル様やラインハットを知っている。しかも『サラリーマン』という言葉はおそらくこの世界にはないはずだ。
「どうやら俺の正体が気になるようだな。」
俺の様子に気がついたのだろう。
「悪いが、後ろの二人は席を外してほしい。」
最長老は急に真剣な顔になるとギルとアンを見る。ギルとアンは素直に応じ、部屋の外に出る。
「葵 千波矢だったよな。俺の名前は佐藤 史也だ。気づいていると思うが、俺は転生者だ。親からエクセスって名前も貰ってるんだが、今はフミヤに改名している。」
「フミヤさんですね。それにしても、転生者ですか。転移者じゃなくて。」
「当たり前だろ。転移者のエルフなんかいるもんか。」
そういえばそうか。でも、ラインハットさんはあんまり転生を勧めていなかったな。生まれ変わるだけだからって言ってたしな。それに寿命の説明にはなっていないな。
「寿命の方はスキルのおかげだ。」
俺が疑問に思っているのに気がついたんだろ。それにしても、俺は思っていることが顔にでるのか?
「確かに顔にでやすいな。」
心を読まれている?
「俺のスキルは【超越者】っていうスキルだ。」
「中二病バリバリの名前のスキルですね。」
「ああ。だが、能力もその名の通りだ。おかげで1000年生きても寿命は来ないし、相手の顔見て、ある程度の考えが読めたりもするんだ。リンガル曰く、ランクSSらしい。」
「あれ?転生者はスキルは貰えないんじゃ?」
「それは転生時の話だ。この世界では10歳で全員リンガルからスキルを貰うんだ。その時に【超越者】をもらったんだ。」
なるほど、リアルラックでランクSSを引き当てたんだ。
「ああ。ところで、お前は日本から来たんだよな。いつから来たんだ?」
「いつからって?」
「西暦だよ」
「2019年です。」
「そうか、俺は1999年だ。当時、25でな。結婚して、息子が生まれたばかりだったんだが、事故でな。」
昔を思い出す彼の目はちょっと悲しそうだった。
「あの・・・」
「悪い悪い。場がしらけたな。もう吹っ切れてはいるつもりだったんだがなあ。なにしろ1000年経ってるしな。だが、お前が2019年から来たって知ったら、息子を思い出してな。生きてたら二十歳だな。」
その後、俺はフミヤさんと夜遅くまで語り合った。俺がこちらの世界に来てからのこと。フミヤさんのこと。そして、元の世界、日本について。特に、フミヤさんは見れなくなったアニメの結末を知りたがった。




