60 エルフの里
ローランによるとエルフの里はレイムスの南東の森の中にあるそうだ。レイムスからは歩いて半日ぐらいの距離である。しかし、エルフの里を訪れる人間はほとんどいない。理由はエルフが森に結界を張っているからだ。結界を抜けるためにはエルフと一緒に結界を通る必要があるそうだ。
「森に着いたけど、これからどうするんですか?」
「ローラン様によると、エルフを探して紹介状を渡せば、中に案内してくれるみたいだ。」
「それじゃ、エルフを探すか。」
エルフはすぐに見つかった。結界の外側に小屋があり、そこにエルフが2人滞在していた。エルフによると関所みたいなものらしい。俺たちはローランの紹介状を渡すとすんなりと森に入ることができた。
エルフの里は小さな隠れ里のようだ。ここに300名ほどのエルフが暮らしているそうだ。普通に一軒家もあれば、樹と一体化したツリーハウスのような家も多数存在する。里の外れには見たこともない果樹が植林されている。幻想的な風景だ。
「旅の方、ようこそいらっしゃいました。今回はどのようなご用件でしょうか。」
里の入り口で一人のエルフが話しかけてきた。村の代表みたいなヒトだろうか?
「俺たちは勇者について調べているんですが、エルフには人とは違う伝承が伝わっていると聞いたんで。」
「勇者?ああ、1000年前の魔王を封印した人ですね。それなら、最長老様にお聞きするといいですよ。」
「最長老様?」
「はい、この里の最高齢のエルフです。確か1000歳をこえると思います。」
「1000歳!エルフの寿命は300歳ぐらいでしたよね。」
「あの方は特別なんだ。」
俺たちは最長老の元に連れていかれた。
「はじめまして、葵 千波矢といいます。」
「おう、お前が転移者か。ラインハットから聞いてるぞ。」
なんとも元気の良い最長老が待っていた。引き締まった肉体に精悍な顔つきだ。思っていた以上に見た目も中身も若い。しかも、ラインハットを知っている!
「俺やラインハットのことを知ってるんですか?」
「ああ、リンガルからいろいろ聞いている。」
「リンガル様も知ってるんですか。」
「ああ、ていうかリンガルは様付けでラインハットは呼び捨てかよ。」
「・・・ラインハットはなんか神様に見えなかったんですよ。」
「違いねえ。あいつは確かに神様っていうよりサラリーマンっぽいもんな。」
俺と最長老の会話にアンとギルは目を点にしている。確かにヒトが話す内容ではないな。それにしても、サラリーマンって。
「あの。あなたはもしかして・・・。」
「俺のことが気になるか。まあ、その話はあとだ。で、あの腰抜けの事を聞きたいって?」
最長老は勇者を腰抜けと呼んだ。




