58 観光地
俺たちはついにレイムスに着いた。
「ようこそ、勇者の生まれた町レイムスへ」
町の入口の看板にでかでかと書かれている。
「この町は相変わらずだな。自分は知り合いと会いたいのでちょっと会ってくるな。」
ギルはこの町に来たことがあるようだった。ギルとは夕方に宿屋で合流することにした。
俺はアンとこの町を見て回ることにした。勇者饅頭、勇者の剣、・・・。お土産屋にはいろいろな勇者グッズが売られていた。ここは完全に観光地だな。
「千波矢さん。すごいところを見つけました。」
アンに引っ張られて行くと古びた一軒家が建っていた。小さな木造の家でところどころ、壊れている。その周りには柵が張り巡らされ、立ち入り禁止の看板が立て掛けられていた。
「ここが勇者の生まれた家だそうです。」
アンは古びた家を見て感動している。周りの観光客も同様だった。拝んでいる人もいる。
・・・この家は本物だろうか?勇者は、千年前の人物ではなかっただろうか?それなら、この家も千年前のものか?ちょっと無理があるかな。
「この家を調べたら、手掛かりが見つかるんじゃないですか?」
「多分無理だろ。」
「どうしてですか?」
「どう見ても千年前の家には見えないだろう。恐らく途中で改装されているはずた。」
その後、資料館と言うところに行ったが、そこも、観光地と化していた。当時の資料などはなく、最近作られたと思われる資料だけが展示されていた。やはり、千年という時間はとてつもなく長かったようだ。この町で勇者のことを調べるのは無理みたいだ。
そろそろ夕方になるため、俺とアンは宿屋に向かった。ギルはすでに到着していた。
「千波矢、この町はどうだった?」
「完全に観光地だな。勇者の家も資料館も真実にはたどり着けそうにはないな。」
「やっぱりか。この町は町興しで100年程前に様変わりしたらしいんだ。」
それで勇者の家が新しかったんだ。
「ギルは何をしてたんだ?」
「この町には有名な道場があるんだ。」
「ギルさん。また修行ですか。」
アンは呆れている。確かにギルは修行好きだ。
「違う。今日は修行じゃない。この道場は勇者が幼い時にした修行が伝えられているんだ。この道場主が元近衛騎士団団長なんで挨拶にいったんだ。」
勇者がした修行!それは気になる。勇者がスキルを継承しているなら、何か分かるかもしれない。
「ギル。その道場主と会えるか?聞きたいことがあるんだ。」




