57 ぶっ飛んでいた
ギルドの方で歓声が聞こえる。どうやら討伐は成功したようだ。これで明日はレイムスに向かって出発できる。アンもギルも満足そうに帰って来た。俺は・・・微妙だったな。まあ、いいか。
「千波矢さん。今日一日どうでした?」
「まあまあ良かったかな。調剤も上手くいったし・・・。」
「そうなんですね。私も教会で今日一日いっぱい神様にお祈りできてリフレッシュできました。」
教会でお祈りか・・・。信仰心のほぼない俺としては全く楽しくもないんだが・・・。
「ギルさんはどうだったんですか?」
「自分はギルドに訓練に行ったんですが・・・、なぜか、少年4人に剣術の指導をしてました。まあ、自分の訓練はできませんでしたが、基本を見直せてまあまあ充実してました。少年たちには師匠と呼ばれましたし。」
師匠をえらく強調しているな。よっぽど嬉しかったんだな。まあ、二人とも良い一日だったみたいだ。
次の日、俺たちはギルドに挨拶をするとレイムスに向かって出発した。ギルドで受付嬢にまた嫌味を言われるかと思ったが、例の受付嬢はいなかった。代わりにサブギルドマスターがみんなに謝っていた。どうやら、あの受付嬢、他の冒険者とも問題を起こしていたようだ。オーガ討伐から帰って来た冒険者からいろいろクレームがあったのだろう。
4人の少年がギルに挨拶に来ていた。あの子たちが例の弟子だろうか。年はそんなに変わらないはずだが、えらく好かれてるな。
「そういえば、千波矢さん。調剤で何の薬を作ったんですか?」
「あっ、それ自分も気になるな。」
アンとギルは興味深々といったところのようだ。
「えっと、回復薬、解毒薬、気つけ薬、高回復薬、万能薬、栄養剤をそれぞれ10個ずつかな。」
俺の答えに二人が固まる。
・・・俺、何か変なこと言ったかな?
「千波矢、高回復薬と万能薬って本当か?」
「ああ。」
俺はそう言うと、カバンから薬を取り出し、二人に薬を見せる。二人はそれを信じられなさそう見る。
「千波矢。ちなみに成功率はどのくらいだ?」
「今のところ100%だけど。・・・どうしたんだ?顔が引きつってるぞ。」
ギルとアンが明らかに驚愕している。
「あのですね。千波矢さん。千波矢さんのいた世界ではどうだか知りませんが、この世界では調剤のできる人は少ないんです。魔法で薬の代用だできるため調剤師になる人が少ないせいもあるんですが。だから、万能薬や高回復薬を作れる調剤師はレアなんです。しかも100%の成功率の人なんて普通いません。高くても60%ぐらいなんです。しかも、一日に60個も作れる人なんていませんよ。」
どうやら、リンガル様から貰ったこの魔法の調剤器具はチートアイテムだとは思っていたが、想像以上にぶっ飛んでいた。他の人には秘密にしておいた方が良さそうだ。




