54 初めての調剤
「いくぞ、お前ら。」
「おおー」
遠くで勇ましい声が聞こえる。冒険者達がオーク討伐に向かったのだろう。ギルド嬢の話によると今日の夕方までには帰還する予定だという。
「何をしようか。」
アンもギルも今日は一日自由行動だ。
・・・することがないな。
俺はあることを思い出した。せっかくリンガル様にもらった魔法の調剤器具を使っていない。以前、試そうとは思ったのだが、結局使っていないのだ。調剤に必要な薬草などは道中に結構採取して溜まっている。
「なあ、D。初心者に作れそうで、現在の手持ちの材料で作れそうな調剤のレシピを教えてくれ。」
「・・・現在調剤可能なレシピは20あります。その中でお勧めは、ランクGの調剤レシピでは回復薬、解毒薬、気つけ薬の3つで、ランクFの調剤レシピは栄養剤、高回復薬、万能薬の3つです。作り方は・・・・・・・・・です。」
リンガル様から与えられた魔法の調剤器具には調剤器具の他に薬保管用のビンが100本も付いていた。しかも、スキル【調剤 優】を超えるスキルを付与された俺専用の道具らしい。チートアイテムだな。
まずは、基本の回復薬を作ってみるか。
「あれ、この魔法の調剤器具、Dの説明とかなり違うな。」
いざ、作ってみようとするとDの説明に出てくる調剤器具と俺の持っている魔法の調剤器具の構成がかなり違っている。
「まずいな。・・・作り方がわからない。」
俺は魔法の調剤器具の取扱説明書を読むことにした。日本にいた時、新しい家電を購入しても取扱説明書など読むことはほとんどなかった。取扱説明書など久しぶりに呼んでいる。
どうやら、思った以上にチートなアイテムだった。「湧き水」という魔法で水を作りビンに入れ、必要な材料と水入りのビンを本体にセットし、魔力を発動しながらスタートボタンを押すと薬ができる、ということだった。Dの説明にあった焙煎、抽出、ろ過などはする必要がないようだ。
「あくあ」
「アクア」
・・・・・・
「湧き水」
7回目で湧き水に成功した。この魔法は水を作る魔法だ。これで「灯り」についで2つ目の魔法の修得だ。できれば、次は攻撃魔法を覚えたいものだ。
後は簡単だった。回復薬、解毒薬、気つけ薬、高回復薬、万能薬、栄養剤をそれぞれ10個ずつ作りことができた。成功率は・・・100%だった。
結局、午前中で調剤は終わってしまった。俺はすることがなくなり、午後は暇な時間を過ごす羽目になった。