53 お断りします
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次の日の昼、ギルドは騒然としていた。いつもより、冒険者の数が多い気がする。となりに併設された酒場では昼間から酒盛りが始まっていた。
「ランクD以上は強制参加だ。」
「参加するものは遺書を書いてギルドに提出するように。」
何か物騒な言葉が聞こえる。
「この依頼で一山当てるぜ。」
「上物の首は俺がいただくぜ。」
などの勇ましい声も聞こえる。いつものギルドとは全く雰囲気が違う。ゴロツキのような冒険者が血気盛んになっている。
俺たちはそれらの声を無視して受付に行く。今日は金を取りに来ただけだ。
「千波矢さん。お待ちしておりました。お金は用意できてます。ご確認下さい。」
「確かに受け取りまし。ところで、騒がしいんですが、何かあったんですか?」
一応、聞いてみた。おそらく、オークの件だろう。
「昨日のオークの件です。今朝、他の冒険者に調査依頼を出した結果、オークの群れを確認できたんです。そこで、ランクD以上の冒険者に強制依頼がでたんです。」
予想通りだ。しかも、強制依頼か。確か正当な理由がなくて不参加だとペナルティーが発生する依頼だったよな。オークの群れの討伐か。危険だよな。よかったランクが低くて。
俺は金を受け取ったのでもうギルドに用はない。帰ろうとすると、受付嬢に呼び止められた。
「千波矢さん。もしよかったら、参加しませんか?」
えっ?何を言ってるんだ。俺はランクFだぞ。死ねと言っているのか。
「俺の実力じゃあ無理ですよ。」
「いえいえ、オークマジシャンを倒していたじゃないですか。」
「あれは偶然ですって。俺には無理ですよ。」
なぜ、この人は俺を参加させたがるんだ?
「普通、この展開なら参加するでしょう。」
何か逆ギレしてる気がする。
「すみませんが、俺は名誉より命が大事なんでお断りします。」
受付嬢は必死に参加を求めてきたが、俺は断り続けた。30分後、討伐には参加しないが、町で待機することになった。
受付嬢の話だと、この町のランクBの冒険者3名と王都のランクAの冒険者1名とランクBの冒険者1名も参加するそうだ。
それだけの冒険者が参加するなら、俺たちは必要ないだろう。
王都の冒険者が今夜到着予定のため、オーク討伐は明日行われる予定だ。ということで、俺たちは町を出ることはできないが、明日は一日中フリータイムとなった。




