47 黒髪の聖女の銅像?
俺は急いでアンの元に駆け寄った。
「良かった。ご無事で。」
アンはそう言うと倒れ込んできた。アンの顔を見ると頬が紅く息も荒い。額に手を当てると熱い。これは完全に高熱が出ている。一秒でも早く治療をした方が良さそうだ。
俺はアンを担ぐとケロッグの元に走り出す。俺の体力も限界に近かったが、そんなことは言ってられなかった。
「ケロッグさん、状態回復魔法を」
俺はケロッグの元に戻ると叫んだ。状況を察したケロッグは状態回復魔法を唱える。白い光がレントの街を、そしてアンの体を包み込んだ。光が消えるとアンの熱は下がっていた。息も整い、スースーと寝息を立てている。俺はギルにアンを頼むと、その場に座り込んだ。ギルはアンを救護テントに連れて行った。
レントの住民たちは本日二回目の白い光を目にしていた。「先ほど失敗したのにまた挑戦したのだろうか。」と住民は冷ややかに見ていた。しばらくして街を見てみると、霧がなくなっている。
「謎の霧は解決したのだろうか」
住民たちはぽつぽつと街の入り口に集まってきた。そこで彼らが見たのはケロッグ神官とその横で座り込んでいる黒髪の女性だった。
「おい、あの女性ってもしかして王都で噂になっている『黒髪の聖女』じゃないか?」
「そういえば、そう言う噂があったな。」
「王都でも似たような事件を解決したって言ってたよな。」
・・・やばいな。非常に目立っているな。すぐに逃げないと。
俺はケロッグさんに目配せをすると、彼は俺をテントに匿ってくれた。
「すみません。ケロッグさん。」
「いえ、こちらこそ配慮が足りなくて申し訳ありません。
ところで中で何が起こったのですか?」
俺は魔人のことをケロッグに話した。
「わかりました。このことは私の方から教会と王国に報告しておきます。どうやら、魔人の活動が活発になってきているようなので、千波矢様もお気をつけてください。
後、このテントには他のものが近づかない様に見張りを付けています。頃合いを見計らってアンさんたちと合流してください。」
ケロッグはそういうとテントを出て行った。
数時間後、変装を解いた俺はコッソリテントを出て、救護テントに向かった。「黒髪の聖女はすでに旅立った。」という噂を聞いた。おそらく、ケロッグさんが流してくれたんだろう。それにしても、大変なことになっている。街中で魔人の死体が見つかり、聖女の手により倒されたことになっていた。銅像を作る計画まで出てきている。どうしてこうなった?
救護テントに行くとアンは元気になっていた。
「千波矢さん。大丈夫ですか。」
「いや、それはこっちのセリフだろ。アンの方こそ大丈夫か?」
「私は大丈夫です。ギルさんから聞きました。私を抱えて必死で戻ってきてくれたって。ありがとうございます。」
「いや、こっちこそ魔人から助けてくれてありがとう。」
そう、助けられたのは俺のほうだ。アンがあの時来なければ、俺は確実にやられていた。俺はアンに感謝してもしきれなかった。




