43 レント封鎖
ギルドに戻るとギルド嬢が元気よく迎えてくれる。
「あっ。千波矢さん。お帰り。どうだった。」
「霊長茸を採取していました。」
「霊長茸ですか・・。ありがとうございます。」
ギルド嬢は何か浮かない表情だ。
「何かあったんですか?」
「ああ。王都の神官がレントに治療に行ったんだけど、失敗したんだ。」
「神官の治療が失敗した?」
「ああ、状態回復魔法で一時的には症状が改善するんだが、すぐにまた病気になるんだ。
現状、対処法がないということで、レントは教会により封鎖されたんだ。」
「封鎖?」
「ああ、レントに繋がる街道に関所ができ、通行が禁止されたんだ。」
「あの、住民の方はどうなったのでしょうか?」
アンが恐る恐る聞く。
「どうも街の外に避難しているみたいだね。ある程度離れると大丈夫みたいだよ。」
それを聞いてアンは安心する。だが、どうやら事態は悪化したようだ。
「もしや、千波矢様ではございませんか?」
ギルドを出たところで、一人の神官に呼び止められた。
「あれ、ケロッグ様ですよね。どうしてここに居らっしゃるんですか?」
どうやら、アンは知っているようだ。高名な神官のようだ。
「私、今回のレントの事件のために派遣されました。状態回復魔法で解決できない疫病は初めてのことなので、対策を考えねばならない、ということになりまして。」
「ケロッグ様は病気治療のエキスパートなんです。状態回復魔法だけでなく、高状態回復魔法も広範囲で御使用できるんです。さらに調剤の知識もかなりすごいんです。」
アンの説明を聞く限り、かなりの実力者だ。しかも病気治療のエキスパートなら適切な人材だ。
「あの、千波矢様。もしよろしければ、助力をお願いできないでしょうか?」
「助力ですか?」
「はい、今朝、レントに行った神官によると『何やら霧のようなものが立ち込めていて、その霧に触れると体がだるくなった。おそらく、その霧に触れると病気になるのではないか』と報告してきたのです。」
その状況、先日の毒の瘴気と似てないか?魔人が暗躍しているのだろうか。
「気づかれましたか。先日と状況が似ているのです。千波矢様は【ステータス変化無効】のスキルをお持ちと聞きました。もしよろしければ、レントの調査をお願いしたいのです。そして、病気の霧の発生源があるなら、それを破壊していただきたいのです。」
俺はギルとアンに相談した結果、その依頼を受けることにした。




