42 茸採取
次の日、俺たちは近くの山に来ていた。この山の中腹に霊長茸の群生地がある、とDが教えてくれたからだ。
昨夜、話し合いを行い、レントの街を助けようと言うことになった。状態回復魔法で万能薬の代わりになる、ということなので、俺たちは栄養剤の材料を探していた。
「千波矢さん、群生地まではまだですか?」
アンは結構きつそうだ。当然か。自分の身の丈程の大剣を背負っているのだから。
「あと少しだ。」
「そのセリフ、さっきも言いませんでした?」
アン、言ってないぞ。さっきのセリフは「まだある。頑張れ」だ。
遂にたどり着いた。周辺に大量の茸が生えている。
Dのナビがなかったら、まず来るのは不可能だった。
ここには霊長茸だけでなく、いろいろな茸が生えている。
「二人は休んでいてくれ。俺は茸を採取する。」
アンは体力の限界のようだ。普段は「手伝います」と言うのに今日は大人しい。
「自分は手伝いますよ。」
「ギルも休んでいてくれ。その代わり、薬膳大角鹿がでたら、よろしく頼む。」
「モンスターですね。倒せばいいんですね。」
「いや、違う。希少動物だ。追い払ってくれ。」
俺は茸採取を始める。霊長茸の他には、食用の大茸、香茸。薬用の化石茸もあった。これは、石化解除の薬を作るのに必要だ。そして、毒茸、痺れ茸などもたくさん生えていた。
1時間後、俺達の前にそいつは現れた。薬膳大角鹿だ。Dは1メートルほど、と言っていたがこの鹿はゆうに2メートルはある。おそらく特殊個体だろう。そして、立派な角であつた。
「ギル、殺さずに追い払って下さい。後、出来れば角を切り落としてくれ。」
俺はギルに頼む。薬膳大角鹿の角は調剤の材料として使えるそうだ。出来れば手に入れたい。
「千波矢。この鹿強いぞ。」
ギルは苦戦しているようだ。これは角は無理そうだな。
「アン、手を出すなよ。大剣だと殺してしまいかねない。」
「分かってます」
「駄目でした」
予想通り、ギルは追い払うので精一杯だった。そして、見事な土下座・・・。
なぜ土下座?
「ギル。俺たちは、仲間だろ。土下座は辞めてくれよ。」
「・・・悪い、癖だ。」
・・・どんな癖だ?




