38 新たなる仲間
「ギル、千波矢さんと一緒に行ってくれるか?」
フィル王子はギルに尋ねる。
「おっ、王子、やはり私では王子の護衛は務まらないのですか。」
ギルは寂しそうに聞き返す。
「ギル、私の護衛を務めることのできる騎士はお前以外にもいる。」
フィル王子の言葉を聞いたギルは涙ぐむ。フィル王子は気にせずに続ける。
「しかし、千波矢さんと共に旅できる人材となると限られてくる。おそらく彼の旅には実力だけでなく、すべてが試されるからだ。その役を私が自信を持って薦めることのできる人物はお前しかいない。やってくれるか?」
「王子、分かりました。王子のご期待に応えれるように身を粉にして頑張ります。」
ギルはフィル王子の言葉に涙を流している。どうやら、ギルはチョロい奴のようだ。
「千波矢さん。お聞きのようにギルの意思も確認できました。どうかギルを連れていって下さい。」
「ああ、分かった。ギルさん、よろしく頼む。」
「千波矢様。こちらこそよろしくお願いします。ギルと呼び捨てにしてください。」
「わかった、ギル。そっちも敬語はやめてくれないか?」
「しかし、千波矢様は警護対象ですので、敬語は必須です。」
「いや、警護じゃなくて仲間としてついてきてほしいんだ。」
「それでは千波矢、アン、よろしく。」
「ギル、よろしく。」
「ギルさん、こちらこそよろしくお願いします。」
しばらく話し合った結果、俺への敬語禁止で落ち着いた。ギルは18歳であったため、年下のアンは譲らなかった。
「やっと話がまとまったようだな。王家としてはお前達を大々的に支援したいのだが、千波矢殿の希望により千波矢殿の存在は秘匿することとなった。よってすまないが王家から支援を行うことはできない。」
クリス王子の言うことは尤もだ。俺がわがままな言ったのだ。
「そこで、ギル。今まで僕に仕えてくれてありがとう。これは退職金だ。受け取れ。」
フィル王子はそういうとギルにお金を渡す。
「王子、いけません。」
ギルは返そうとしたが、王子は受け取らなかった。
「ギル。旅に金はいくらあっても困ることはない。それとも、僕からの好意を受け取らないというのか?」
フィル王子は笑いながら言う。ギルは王子の意図を察したようだ。
「わかりました。有難く頂戴致します。このお金で仲間の装備品でも買うことにします。」
こうして、ギルが新たな仲間となった。




