35 リリアさんに試される
「アン、それでは今日からあなたは教会との縁が完全に切れます。悪いけど、身分証を回収させてもらいます。」
そういえば、アンの身分証は教会は発行のものだったな。
「はい」
アンは寂しそうに身分証を渡す。
「アン、これから私とあなたは先輩後輩ではなくなります。いいですね。」
「はい」
アンは辛そうだ。それほどリリアのことを慕っていたのだろう。いきなり縁を切られるとは思ってなかったのかもしれない。リリアの事務的な対応が更にアンを苦しめているようだ。
「アン、そんな顔をしないで。」
一転、リリアが優しい口調になる。
「私たちは先輩後輩じゃなくなったけど、親友のままでいてもいいのよ。辛い時や困った時はいつでも相談に乗るから頼ってね。」
アンは泣きながらリリアに抱き着く。リリアは甘えん坊の妹の相手をするようにアンの頭を優しく撫でていた。
「アン、ちょっと千波矢さん借りるわよ。」
アンが落ち着くと、リリアさんは俺を別室に連れて行った。
「千波矢さん。あなたの気持ちをちゃんと聞いておきたいの。あなたはあの娘のこと好きなの?」
直球すぎる質問がいきなり来た。これは流石に予想していなかった。恐らく俺はリリアさんに試されている。
俺は自問した。アンのこと好きかって。当然好きに決まっている。好きでなければ一緒に旅をしようとは思わない。
だが、ここで一つ疑問が生まれた。俺はアンのことをどのくらい好きなんだろうか?アンは自分の夢を捨ててまで俺とくることを選んだ。俺はどうなんだろう。おそらく、リリアさんが聞きたいのはそのことなんだろうか。
・・・
・・・・・・
「俺はアンのことが好きです。どれくらい好きかって聞かれれば、何と答えていいか分かりません。ただ、彼女の覚悟を軽んじるようなことは決してしません。」
俺はリリアさんの顔を正面に見据えて答えた。
「あなたは誠実な人ね。それに結構賢いみたいだわ。それに勇気もある。あの娘が惹かれるはずね。文句なしの合格ね。」
リリアさんはそう言うとため息を吐く。ちょっと不満そうな顔だ。
「あのそろそろ戻りませんか?」
俺がいたたまれなくなっていた。
「そうね。あまり遅くなるとアンがやきもちを焼くかもしれないものね。
そうだ、転移者のあなたにこの世界のことを1つ教えておいてあげる。あなた確か18歳っていってたわよね。」
「はい、そうですが。」
「この世界ではね、15歳で成人になるの。つまり、15歳から結婚できるの。ちなみに、アンは15歳よ。」
この人はなんてことを言うんだ。本当に神官なのだろうか。リリアさんの言ったこと理解した俺は顔が赤くなる。リリアさんは笑いながら俺に近づくとさらに追い打ちをかけた。
「しばらくの間は、ちゃんと避妊してあげてね。」
そういうと、扉を開けて元の部屋に戻っていく。俺は一人部屋に残された。おそらく俺の顔は真っ赤になっているだろう。




