327 悪の大魔王
「ノエル様」
俺が更に迫ると、ノエルの態度が急変した。
「ヒトの分際で調子に乗ってるんじゃねーよ。お前らと契約するのは止めだ。お前ら、もう帰っていいぞ。かえれるもんならな」
切れたノエルはそう言い放つと、その存在がどこかに行ってしまったかのように、周囲から気配がなくなる。。まるでチンピラのようだ。・・・もはや神には見えないな。
だが、どうしようか。勝手に帰れと言われても、帰り方がわからない。
「う、うーん。あの野郎、ふざけたことしやがって」
フミヤが意識を取り戻した。俺は慌てて駆け寄ると声を掛ける。
「フミヤ、大丈夫か?」
「・・・千波矢?なぜここにいるんだ?」
俺はフミヤと別れてからのことをすべて話す。話を聞き終えたフミヤはニヤニヤ笑っていた。
「千波矢、お前はアルカディア様を呼び出すことはできるか?」
「アルカディア様を呼び出す?」
「やはり知らなかったか。ある程度使徒としての格が上がると、守護してくれている神を呼び出すことができるんだ。こんな感じでな。」
そういうとフミヤは意識を集中させ、何やら祈る。すると、突然目の前に見知らぬ中年の男が立っていた。いや、見るのは初めてだが、この気配は以前感じたことがある。
「よう、リンガル。ちょっと予定とは違うが、上手くいってるみたいだぞ。」
やはり目の前の男はリンガル様だった。それにしても、フミヤは相変わらずだ。リンガル様に敬称を付けようとしない。
「我が弟、アルカディアの使徒、千波矢よ。楽にするがよい。」
「そうだぜ、こいつは中身は単なるおっさんだ」
フミヤが笑いながら言ってくる。リンガル様は少しばつの悪そうな顔をする。
「おっさん?」
「ああ。以前、一緒に酒を飲んだら、すぐに酔っぱらって上司、同僚、部下へのグチをだらだら聞かされた最悪だったんだぜ。」
「フミヤ、そのことは他の奴には言うなと言っただろう。」
リンガル様が慌てて止めに入るがすでに遅かった。
「まあ、いい。二人ともすまなかったな。我々のごたごたに付き合わせてしまい。これでノエルを引退に追い込める。」
・・・以前、ラインハットをサラリーマンみたいだと思ったが、本当に何かの会社みたいな感じだ。俺達、ヒトより高位の次元のヒトで俺達に干渉するものを神と俺たちが呼んでいるだけなのかもしれない。
「さて、そろそろかな」
リンガル様がそう言うと、周囲にノエルの気配が突然現れた。しかも、先ほどの何百倍もの敵意に満ちた気配がだ。
「貴様ら。いい度胸だな。全員、宇宙のチリにしてくれるわ。」
ノエルはまるで悪の大魔王のセリフを吐くと俺たちの前に現れた。




