319 ギルの居場所
「ラインハット、確認だ。後は、ノエル様に承認してもらえば、ヒトは神から独り立ちするんだな。」
俺はラインハットに問い詰める。局面は採取段階に入っている。これ以上、知らない条件が出てきたらたまったものではない。しっかり確認しておく必要がある。
「うん。間違いないよ。僕の知っている限りノエル様と母様との間に取り交わされた約定ではそうだったはずだよ。」
「と言うことは、ノエル様かその使徒であるギルを説得すればいい訳だよな。」
「そーだよ。とは言っても、ノエル様が地上に降臨することはまずないから、説得する相手はギルだと思うけどね。」
「そうか、わかった。」
最後の関門はやはりギルだった。ギルがフミヤに言った言葉はこういうことだったのだ。ギルと対決しないといけないと思うと気が重くなる。
「それなら、まず、ギルの居場所を探さないといけないな。」
俺の言葉にラインハットは首を横に振る。
「いいや。おそらくギルの方から接触があるんじゃないかな?」
「俺もそう思う。あいつの言いぶりだと最終審査をするのは自分だということだ。それなら、俺らから逃げ回るのではなく、俺達の前に現れて試練を課すはずだ。それに・・・」
フミヤはそう言うとヤクシジの方を見る。目で何か訴えている。ヤクシジは観念したように頭を掻く。
「鋭いな。ノエル様からの伝言のついでにギルの伝言も受け取っている。『アンデッドの島で待つ』だそうだ。」
アンデッドの島とは、王国の東に位置するブレイブルクの東の沖にある島だ。先代の勇者が討伐され場所で、シルビアさんと出会い、ギルが修行をした島である。
後ろの方でリオンさんが「アンデッドの島」と小さな声で連呼しているのが聞こえる。ギルの居場所が必死で探していたので居ても立っても居られないのだろうか。
「ヤクシジ殿、伝言ありがとうございます。」
フィル殿下はヤクシジに礼を言うと龍王の方に向き直る。
「それでは龍王殿、我々はこれでお暇させていただきます。次にお会いする時は対等の立場で友好を結べると嬉しいです」
龍王は「ふん」と鼻を鳴らした。だが、その顔は満更でもないかんじだった。
その後、王都に戻った俺たちはクリス国王に報告をする。ササライを解放できなかったため、失敗だろう、と糾弾する貴族が一部にはいたが、国王を含め、大多数の貴族はこの結果に大変満足していた。
本日から新作「僕、チート能力がないんですが」の投稿を始めました。
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