315 龍王との会談2
案内された場所はササライの街の冒険者ギルドの酒場だった。そこには数人の男たちが酒を飲んでいた。「龍王は」?と一瞬疑問にも思ったが、すぐにその中の1人が龍王バハムートであると感じ取った。明らかにヒトではない、異常な重圧を放っていた。おそらく、周りの男たちもヒトではなく龍なのだろう。
「ヒト族よ。俺に用があるとのことだが、何のようだ?」
威圧的な声が響く。すべてを圧倒するかのような重圧を感じる。リオンさんとヨシタカが膝をつく。それを見た他の男たちが嘲り笑う。
「私はフィル・スプレンドール。この国の第一王位継承者である。龍王バハムート。何故、あなたはこのササライを襲った。」
フィル殿下は気丈に振舞っているが、明らかに無理をしているのがわかる。おそらくは立っているのがやっとだろう。それでも無理をして、龍王を問いただしているのだ。
「我々を封印していたのだ。それなりの報いを受けるのは当然だろう?」
「ラインハット殿の話だとあなた方を封印していたのは神々であると聞いていますが?」
「お前たちヒトは神の下僕だ。当然だろう」
「神の下僕?」
「なんだ、貴様らは自分たちの立場も知らなかったのか?神に庇護され、神の言うがままに生きる種族。それを下僕と呼ばずして何と呼ぶ」
俺がラインハットの方を向くとラインハットは小さく頷く。どうやらヒト以外では共通の認識だったようだ。俺達全員がショックを受ける。これは屈辱以外何者でもない。
「・・・確かに、今までのヒト族はそう呼ばれていても仕方がなかったかもしれません。しかし、今は違います。我々ヒトは神から独り立ちする道を歩みはじめています。」
フィル殿下はすぐに立ち直ると、龍王に宣言する。その姿は堂々としていた。その言葉を聞いた龍王の取り巻きたちがまたもや嘲り笑う。
「ヒト族がまた言ってるぞ。この千年で何度目だ。」
「口だけだろう。前回は1年ともたなかったはずだ」
次々にヤジが飛んでくる。どうやら、以前にも、同じようなことがあったようだ。どうやらヒト族には伝えられていない歴史がいくつもあるようだ。そういえば、ラインハットが以前そのようなことを言っていた気がする。
普通なら、この時点で心が折れていてもおかしくないのだが、それでもフィル王子は毅然と龍王の前に立ち続けた。
「ヒト族よ。それでお前たちは俺に一体何の用があって来たのだ?まさか、今の質問をするためだけに来たのではあるまい?」
龍王が小馬鹿にした様な表情で聞いてくる。完全にヒトを下に見ている。
「龍王バハムート。我々としては、このササライの街を返してもらいたい。過去のことがどうあれ、この街は我らが造り、住んできた。ここは神の領域ではなく、ヒト族の領域だ。」
フィル殿下は臆することなく要求した。
「ヒトの分際で、我らに盾突こうというのか」
取り巻きの一人が憤る。そして、人化を解いて龍の姿になると俺たちの前に立ちふさがった。




