313 使節団のメンバー
使節団のメンバーは以下のように決定した。
まずは神の加護を持つ俺、アン、フミヤ、フィル殿下である。そして、元獣の神のラインハット、現獣の神エリス、その従者のカグツチさん。さらには護衛として騎士であり、勇者ギルの父親でもあるリオンさん、宮廷魔術師のリンドットさん、そして最近S級になった冒険者ヨシタカの3人である。
出発当日、初めて会うものもいたため、フィル殿下から紹介があった。その時、一人だけすごく気になる人物がいた。冒険者のヨシタカだ。まだまだ若く俺より若そうに見える。20前といったところだろうが。その年齢でS級にまで上り詰めているのだ。大した才能だ。
ん?ヨシタカ・・・義隆!
もしかして・・・使徒?それとも、転移者?俺はラインハットの方をみる。
「違うよ。彼は使徒でも転移者でもないよ。」
ラインハットは即座に否定した。それにしては珍しい名前だ。日本人に近い名前だ。
「初めまして、千波矢様。冒険者のヨシタカといいます。一度、お会いしたいと思っておりました。」
俺が不思議に思っていると向こうの方から話しかけてきた。
「よろしく頼む。それで俺に会いたかったというのは?」
「はい、あなたが祖先カネタカの残した手記を翻訳したという話をギルド長から聞いていましたので」
「カネタカ!?」
カネタカとは伝説のS級冒険者と呼ばれていた転移者だったはずだ。なるほど、その子孫か。
「尊敬する祖先、カネタカと同郷ということなので、いろいろ日本のことについて聞いてみたいと思っておりました。」
すごく目をキラキラさせながら俺を見つけている。ものすごい熱視線だ。
「まあ、その話は今回の仕事が終わった後な。まずは、仕事を終わらせようか。」
「はい、わかりました。」
どうやら、素直な少年のようだ。俺の提案に素直に頷くと、他の者に挨拶に行く。
俺もリオンさんい挨拶に向かった。
「リオンさん、お久しぶりです。」
「千波矢殿、ご無沙汰しております。」
「護衛の騎士は何人もいると聞いていたんですが、リオンさんが選ばれたんですね。」
「・・・いや、正確に言うと選ばれたというよりも立候補した、ですな。」
「立候補?」
「ああ、騎士の中ではこの使節団は全滅すると考えている者が多いのです。ですので、私が立候補したのです。」
「それじゃあどうして立候補したんですか?」
「・・・ギルがいそうな気がしたからです。」
リオンさんはやはりギルのことを引きずっているようだ。
「リオンさん、あなたの気持ち、わからなくもないですが、例えギルがいたとしても、今回の目的は親善です。見誤らないでください。」
俺が釘をさすとリオンさんは「承知した」と頭を下げる。おそらく、彼はギルを見つけると冷静ではいられないだろう。そのことはフミヤも感じたようだ。
「千波矢、俺が見張っておいてやる。心配するな。」
と言ってきた。
フミヤは王国の貴族からは嫌われているが、結構頼りになる。一緒に旅をした期間は短いが、最高の仲間だと思っている。同郷であるせいもあるだろう。
しばらくすると、互いの自己紹介も終わってきたようだ。俺はフィル殿下に出発を促す。
「エリス様。それでは移動の方をお願いしてもよろしいでしょうか。」
「ええ。」
エリスが短く答えると、神鳥ロックが膝をつき、俺達が乗りやすい体勢になる。
俺たちは神鳥に乗り込むと龍王バハムートのいるササライを目指した。




