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神の悪戯に翻弄される冒険者  作者: 佐神大地
第6章
303/330

303 どうする?

 その場で神官ブーンは暴行および虚言の罪で逮捕された。そして、クラリス教団もブーンの虚言の罪に加担したとして、それなりのペナルティーを与える。兵士に丁重に別室に連れて行かせた。

 審議の場には、大地母神の教団の関係者と審議を見学に来た周辺の有力者のみが残った。


「さて、大地母神教団の方々、本来ならブーンの訴えが退けられたためこの審議は終了なのだが、どうする?」


「どうする、とはどういうことでしょうか。今回の審議で我々の疑いは晴れたのではございませんか?」


 俺の質問に代表と思われる者が聞き返してくる。その顔は困惑に満ちていた。


「確かにお前たちの疑惑は晴れた。ただし、それはブーンの訴えに対してだ。現段階では教団が邪教でない、と確定はしていない。したがって、第二、第三のブーンが現れ、お前たちを訴える可能性は否定できない」


「そ、そんな」


 俺の言葉に大地母神側はひどく落胆する。まあ、当然だ。この先、同じことを何度もされるとたまったものではない。


「そこでお前たちが望むなら、この場でお前たちの教義について審査仕手もと良い考えている。」


 俺の言葉に大地母神の教団だけでなく、見学していた有力者たちも驚く。


「千波矢殿、さすがにそれは越権行為になるのでは。」


「私はクリス国王に『すべてを任せる』と全権を頂いている。問題ない」


 俺の言葉に反対した者も黙るしかなかった。

 一方、大地母神の教団側も困惑していた。自分達はこの街の布教責任者であって、教団幹部ではなかったからだ。自分たちの一存で事を進めて良いレベルを超えていたからである。


「申し訳ございませんが、日を改めることはできないでしょうか?さすがに事が大きすぎるため、私の一存で決めることができません。教団の幹部と話し合う必要があります」


 先ほどの男性が恐る恐る質問をしてきた。当然の質問だ。


「確かにあなたの言うことはもっともなのだが、私が任されているのは今回の審議のみだ。この審議の終了を宣言すれば、全権を失うことになる。関係各所に再び許可を貰うことになると・・・」


 そう、この場でなら俺だけでなく周辺の有力者や非公式ではあるが国王も関与したことになる。他から文句が来た時に対処の使用があるのだが、さすがに後日自分だけで判断するといろいろと疑われかねない。

 かといって、後日またこれだけの人を集めるとなるとそれはそれで大変である。できれば、この場でどうにかしてあげたかったのだが・・・。

 互いに悩んでいると、通信魔道具担当の文官が真っ青な顔で走って来て耳打ちをする。


「千波矢様、クリス国王がお呼びです」


 俺は席を立ち、通信装置の元に向かう。嫌な予感しかしなかった。俺は国王からの要件を聞くと審議の場に戻り、こう宣言した。


「クリス国王からの勅令である。大地母神の教団の教義に関する審議の場は二ヶ月後、王都で執り行われることとする」



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